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第430話 【第肆回戦】不正天使 朝霧 鏡花 VS エンタメの仕事人 円能寺 律哉⑩


アーク内部 第肆階層 炎上する円状レッド・サークル

 

 考えてみれば簡単な話だった―――

 

 遊戯領域ゲームテリトリー-もう一つアナザーフォームであそこまでステータスを強化することが出来るのなら、何故試合開始時から使用しなかった?

 

 試合の展開を左右するほどの切り札を何故、敢えて取っておくような真似をしたのか。

 

 もしかして、使わなかったのではなく、使えなかったのだとしたら―――?

 

 燃え盛る業火に落ちていく鏡花は思考を巡らせる。

 

 発動させることで何かデメリットがある、もしくは発動させるための条件がある。

 

 例えば発動までに時間が掛かるとか。

 

 しかし、ヤツにそんな長い時間的猶予はなかったハズ。

 

 少なくとも極大魔法のような長い詠唱はこの試合中無かった。

 

 遊戯領域ゲームテリトリー-もう一つアナザーフォームを発動する直前、彼は眼下に広がる業火に落ちていった。

 

 アレで仕留めたとは思っていなかったが、もしかしたらその業火の中で円能寺は何かを仕掛けた。

 

 そして、再び試合の場である金網へ舞い戻ると遊戯領域ゲームテリトリー-もう一つアナザーフォームを発動する素振りを見せた。

 

 円能寺が下の炎の中へ落ちるような流れを望んでいたとしたら―――

 

 そして、それを悟らせないように不自然さを払しょくする為、私の攻撃によって落とされるように仕向けたとしたら―――

 

 鏡花はその考えに至った。

 

 故に今度は自分も円能寺が行ったように眼下に広がる業火の中へ敢えて落とされるという選択を取った。

 

 自分の立てた仮説が正しいか確かめる為。

 

 ステータスが1/4まで減少している中、ずっと下の業火の中へいるのは鏡花にとっても危険だ。

 

 長居はできない。

 

 鏡花はそれらしいものがないか、神経を集中して探る。

 

 《天眼》のスキルで周囲に不審な物がないか、見渡した。

 

 すると、業火の中、少しだけ周囲の光り方とは違う輝きがあることに気付いた。

 

 炎の光とは違う、どちらかと言えば蛍光灯のような人口的な光がそこにはあった。

 

 

 コレは・・・・ゲーム機?

 

 鏡花が目にしたものは円能寺はこの試合が始まる前ずっと手にして遊んでいた携帯ゲーム機だった。

 

 まさか、コレが遊戯領域ゲームテリトリー-もう一つアナザーフォームの正体・・・?

 

 このゲーム機を媒体にして発動していたってこと?

 

 鏡花はすぐにその結論付けた。

 

 でなければ、ここに置いている意味が分からない。

 

 円能寺が意図せず落としたということもあるかもしれないが、彼は仕事人プロ、今まで彼らの闘いを見てきてそんな幼稚なミスは決してしないことを知っている。

 

 彼らの行動には必ず意図がある。

 

 

 ここでこれをどうにかすれば円能寺の遊戯領域ゲームテリトリー-もう一つアナザーフォームは破れるのだろう。

 

 鏡花はそのゲーム機を破壊する為、手を伸ばした―――

 

 その手には魔力を帯び、殺傷能力を高め―――

 

 触れれば、この程度の玩具簡単に破壊できるだろう。

 

 「・・・・っ!!」

 

 しかし、その手が今にもゲーム機へ触れそうなその時、鏡花の脳裏を嫌な予感が過った―――

 

 

 『彼らの行動には必ず意図がある。』

 

 先ほど、自分が思った言葉が再び、胸騒ぎを呼び起こす。

 

 円能寺がこんな分かりやすい形で能力の正体を晒すだろうか?

 

 私がこうやってゲーム機を破壊することも彼にとって、予想の範疇なのでは?

 

 もしそうだとしたら、このままコレを破壊するのはマズイ―――

 

 

 鏡花はそんな猜疑心から《天眼》のスキルで数秒後の未来を見通す。

 

 そこにはゲーム機を破壊した瞬間、強烈なエネルギー流出に巻き込まれ、死にゆく自分の姿が視えた。

 

 やはり、そうだ―――

 

 コレをこのまま破壊したらマズかった・・・・。

 

 だとしたら、どうする?コレを。

 

 考えている時間はない―――

 

 不正天使 朝霧鏡花はこの土壇場で思考を回転させた。

 

 

 一方、金網の上の円能寺。

 

 彼もまた先ほどのハイテンションとは打って変わって冷静に考察を行っていた。

 

 円能寺の中に潜む、もう一つの人格が彼を冷静にさせていた。

 

 この業火の中に落ちた姿はしっかりと確認した。

 

 聖光気のエネルギー弾を受けて、無事だとも思えない。

 

 しかし、どうにも疑念は消えない―――

 

 コレは俺のプロゲーマーとしての勘だ。

 

 そういった気配、負けそうなプレイヤーの最後の一矢のような気配。

 

 業火の中には俺のゲーム機がある。

 

 アレは俺の遊戯領域ゲームテリトリーを維持する為に必要な物。

 

 まさか、アレに気付いた?

 

 ごく自然な流れで業火に叩き落としたが、それすらも誘導されていた?

 

 しかし、気付いたのなら破壊する可能性が高い。いまだ遊戯領域ゲームテリトリーが維持され続けているということは破壊はしていない。

 

 それに破壊した瞬間、アレにため込んだエネルギーは破壊した者に流れる仕組みになっている。

 

 どっちにしろ、鏡花おまえの負けは確定してんだよ―――

 

 そう頭で考えた円能寺の背後―――

 

 勢いよく鏡花が飛び出してきた―――

 

 「やはり―――」

 「まだ死んではいなかったんっすね―――」

 

 どうやら、ゲーム機アレの存在には気付いていないみたいだな―――

 

 「天使は生まれながらにして聖光気に耐性がある―――」

 「貴方は興味本位で撃ったみたいだけど、私が倒せなくて残念だったわね。」

 

 

 「いやいや―――」

 「俺はゲームは長く楽しみたい派なんでね―――」

 「特に自分のことを強いと思っている弱者を虐るなんてのは最高に楽しいだろ?」

 

 「貴方、本当に趣味が悪いわね―――」

 「私も人のことはあまり言えないけど、貴方はそれ以上だわ。」

 

 

 「それは誉め言葉として受け取っておくよ―――」

 

 「それじゃあ、立ち上がってきたところ悪いけど―――」

 「また苦しんでくれよ―――」

 

 

 炎上リングが二つ装着された状態の鏡花。既にステータスは実数値は1000程度。対して、円能寺は実数値3000以上。

 

 結果など火を見るよりも明らか。

 

 それでも鏡花は円能寺に向かっていった。

 

 この男は私がゲーム機アレに気付いていない。もしくは気付いていたが、手を出せなかったと考えている。

 

 

 だからこそ、そこに勝機がある―――

 

 

 

 「神法術:天地神命霊光波!!」

 

 「貴方、私の神法術まで・・・・!?」

 

 「やっぱ、ゲームの主人公って相手の技を盗んでなんぼでしょ(笑)」

 

 そう言って発動する大技。

 

 鏡花の周囲に光の転輪を何重にも生み出し、莫大なエネルギーが出力された。

 

 かつて、鏡花が現実世界で真と対峙した時に放った技だ。

 

 

 「ッ―――!?」

 

 「さあ―――」

 「その苦しむ顔をよく見せてくれよーーー!!」

 円能寺は口に笑みを浮かべる。

 

 「フフフ・・・」

 「貴方が馬鹿で本当によかった―――」

 

 攻撃を受けた鏡花は手に持ったそれを天にかざす。

 

 

 それは円能寺のゲーム機だった。

 

 この遊戯領域ゲームテリトリーを維持する為に必要な媒体。

 

 

 「気付いていたのか!?」

 円能寺は動揺した。

 

 最後まで疑念は捨ててはいなかったが、まさかそれを盾にしてくることは円能寺にとっても予想外だった。

 

 

 「コレが壊れると貴方―――」

 「相当マズいんでしょ―――」

 「ご丁寧に罠まで仕掛けちゃって―――」

 

 

 この女・・・・

 

 破壊されたときの動作まで気付いていたのか・・・

 

 普通目の前に相手の弱点があったら、真っ先に狙うハズ。

 

 しかし、それに気づいたということは破壊する直前、考察したということ。

 

 

 「クソオォォォーーーッ!!」

 

 

 「さぁ―――」

 「貴方自身の攻撃でこのクソみたいな領域を破壊しなさいッ!!」

 

 

 周囲をまばゆい光が覆う。

 

 

 円能寺の放った技により、円能寺の遊戯領域ゲームテリトリーを維持していたゲーム機は破壊され、ボロボロと領域に張られた結界は崩れ去った。

 

 

 

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