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第417話 【第参回戦】自由人 唯我 新 VS 統率の仕事人 鍜治原 望⑬


アーク内部 第参階層 匣の闘技場アークリング

 

 「なっ―――!?」

 何で、オレっちが除名なんですか!?

 

 と、喉元まで言葉が出かけた。

 

 しかし、鍜治原はよく知っている。

 

 何で?などという疑問を簡単に口にする愚かさを。

 

 鍜治原は自身の頭をフル回転させ、社長がどうして自分を除名しようとしているのか考えた。

 

 ・・・・・・。

 

 そんなに結論を導き出すのに時間は掛からなかった。

 

 「万物使いオールマスターァ・・・。」

 

 現実世界で新の母親 日向を殺させる為に待機させていた部下からの反応はない―――

 

 「そういうことかァ・・・!?」

 

 鍜治原は理解した。

 

 社長は唯我 日向を捨てていない―――

 

 まだ、彼女に対する情は残っている。

 

 その結論付けた。

 

 オレっちは読み違えた。

 

 だが、鍜治原が悪い訳ではない。

 

 十数年間、コンタクトも取らず、母子を放置するような父親がいるとしたらそれは客観的に見て、その母子を捨てたと判断するのも無理はない。

 

 「・・・理解したようだな―――」

 

 「日向を手に掛けようとした貴様を除名する―――」

 「日向を殺そうとした者は六谷君の方で始末してもらった―――」

 「人事部部長のポストは第二事業本部の方から人を出すようにする。」

 

 真の言葉はそれで終わった。

 

 モニターからの画像はプツンと切れ、鍜治原は立ち尽くす。

 

 今、自分の置かれている状況を考える。

 

 社長から解任の命を受けた。

 

 では、今この闘いはどうなる―――?

 

 いや、理想は―――

 

 どうなる?

 

 まさか、今回の計画の内容を知るオレっちは消される・・・?

 

 頭の中で考えた。

 

 自分の命の危機について。

 

 真の言葉が終わってから数秒がして、鍜治原の頭の中はグルグル回っていた。

 

 普段のクリアな思考は消え、額から汗が大量に流れていた。

 

 それは次第にイラつきに変わり、イラつきは怒りに変わった。

 

 「おい―――」

 「王兵巨人キングヘカトンケイル!!」

 「何してやがる!!この闘いはもう終わったんだ!!」

 「さっさと戻ってきやがれ―――!!」

 

 いつまでも新の叩き伏したところから戻ってこない王兵巨人キングヘカトンケイルに対してキレた。

 

 しかし、王兵巨人キングヘカトンケイルは戻ろうとしない。

 

 いや、戻れなかった。

 

 「・・・・ググっ!!」

 

 その言葉を発するだけでその巨体は大きな音を立てて地に倒れた。

 

 「ア~~ラ~~タ~~!!」

 

 鍜治原の毛が逆立った。

 

 自分の母親が無事だと分かったからだろう。

 

 反撃に転じてきやがった。

 

 全身血だらけの新は鍜治原に目を向けると亡者のごとく襲い掛かってきた。

 

 「だが、S細胞の人格が表に出てきていないテメェなんて怖かねェよ!!」

 

 と、鍜治原は息巻いたが―――

 

 新の鋭い拳足が槍のように鍜治原へ向けて放たれる。

 

 「なっ!?」

 

 鍜治原は自分の手足となる魔物を召喚しようとするが、新の攻撃の方が速い。

 

 鍜治原の顔面をクリーンヒット。

 

 「オラオラオラオラアアァーー!!」

 

 

 新を突き動かしたのは怒りだった。

 

 自分の母親を人質に取られ、散々打ちのめされた鍜治原に対する怒り。

 

 それが限界点を超え、彼のS細胞を刺激した。

 

 もはや鍜治原に召喚をさせる余裕を与えることはない。

 

 「グッ!グッ!グゾオ"ォ"ォ"ーーーッ!!」

 

 新の猛攻―――

 

 それを受ける鍜治原。

 

 「ガキが調子に乗るなアアァーーッ!!」

 

 鍜治原は自身の拳を握り、新に殴り返した。

 

 新はまだギリギリ上がる両手でその攻撃をガードし、二歩下がった。

 

 「ハァハァ・・・・」

 「ガキがついにやりやがったなぁ・・・!!」

 

 

 ついに自分の手を汚すことを頑なに嫌った鍜治原に手を出させた―――

 

 この第参回戦―――

 

 甘ったれた考えを持ってやがる赤目や百鬼に勝つことが一番重要だと教える為、出向いた。

 

 そう云った以上、オレっちはやらなきゃいけねェ―――

 

 オレっちが仮にこの勝負の後、社長に消されることがあろうとも、それでも勝利を捧げる。

 

 それがオレっちが今まで信じ続けてきた仕事人プロという存在だからだ。

 

 自分の身が危なくなったからといって仕事を放棄するようなヤツは仕事人プロじゃねェ―――

 

 だから・・・

 

 オレっちはこの勝負絶対に勝利してみせる。

 

 「見てろよ―――」

 「テメェーら・・・・」

 「これが本当の仕事人プロとしての鍜治原 望の生き様だ―――!!」

 

 偶然にもこの時、両者の手元にアークが落ちてくる。

 

 二人は互いに互いの眼へ視線をずらすことなく、匣の指輪アークリングで中身を開く。

 

 そこに入っていたのは、ボクシング用のグローブ。

 

 説明文には、こう書かれていた。

 

 『これを付けた者同士の攻撃は互いに避けることができなくなり、格闘系スキルの使用しかできなくなる』

 

 と。

 

 「ハハッ―――!!」

 「これを付けて闘えってことか・・・」

 「いいだろう―――」

 「アラタ~~!!テメェーも付けな!!」

 

 

 お互いにグローブをはめ、両手を構える。

 

 さながら、ボクシングの試合のようだ。

 

 ただし、ヘッドギアもマウスピースも存在もない。

 

 お互いの身体を壊す為の試合。

 

 これが最終ラウンド。

 

 唯我 新と鍜治原 望のラストバトル。

 

 今にして思えば、この匣の闘技場アークリングも最後はこうやって肉弾戦でやり合うような設計だったんだろう。

 

 鍜治原は冷静になってきた頭でそう考察する。

 

 「「行くぞオォォーーーッ!!」」

 

 二人の熱い拳が交錯する。

 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  その結論付けた。 ↑ そう結論付けた。 の間違いですね。
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