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第41話 模擬戦

 

 西のサンド山の麓までの道のりは、約30km

 

 20人近い冒険者の一行が時速2kmで向かうとして15時間。

 

 稼働時間で考えると約1日半かかる計算である。

 

 全ての冒険者というわけではないが、それぞれが持つ荷物は少なくない。

 

 当然、途中で野営する予定となっている。

 

 ということで―――

 

 「キャンプだー!」

 

 真っ先に走り出したのは、レッドカーネーションのエリアだった。

 

 「おいおい、エリア!」

 「そんなにはしゃぐなって。」

 

 フラムさんは同じパーティのリーダとして注意をする。

 

 「若い娘には全く困ったもんじゃ。」

 

 同じレッドカーネーションに所属する魔術師のセヴランが呆れたように言う。

 

 リーヨンのギルドから出発して半日歩いていた為、そのほとんどがクタクタになっていた。

 

 日も暮れ始めた頃、この一行の代表であるフラムさんからの提案で今日はここで野営をしないかとのことだった。

 

 もちろん疲れている人がほとんどだったので、今日は全てのパーティがここで野営をすることになる。

 

 「ススムさん今日は一日歩いて大変でしたね。」

 

 「ああ、マリーも疲れていないか?」

 「明日はダンジョンに探索するから、今日は早く寝たいところだな。」

 

 進はマリーを気遣う。

 

 マリーとそんな会話をしていると、奥からフラムさんが声をかけてきた。

 

 「ススム君ちょっといいかな?」

 

 「フラムさん、何でしょうか?」

 

 

 「もし良かったでいいんだがこれから僕と模擬戦をしないか?」

 

 

 「??」

 「突然どうしたんですか?」

 

 突然のフラムの申し出に少し戸惑う進。

 

 「明日のダンジョン探索の前に君の実力を知っておきたいんだ。」

 

 フラムさんが真剣な眼差しで頼んできた―――

 

 ここまで真剣な顔をされると断るのも気が引けるとオレは承諾した。

 

 他の人は野営の準備をしている中、二人で開けた平原に向かった。

 

 心配をしているのかマリーもついてきてくれた。

 

 「そんなに時間は取らせないよ。」

 「勝負はどちらかが参ったと言うまで、本当に君の実力を知りたいだけなんだ。」

 

 「ええ、もちろんそのつもりです。」

 「フラムさんの実力はこちらとしても気になりますから。」

 

 「よしじゃあマリー君、合図を頼めるかな?」

 

 「えっと、分かりました。」

 「じゃあスタートと言ったら始めてください。」

 

 進とフラムの間に異様な静けさが漂う。

 

 お互いが目を離すこともなく、開始の合図までが永遠のようなそんな気さえ周りにいたマリーは感じていた。

 

 「スタート!」

 

 マリーは開始の合図をした。

 

 その刹那、フラムは自らの爆剣-クレイモアを抜き、まるで鎧の重さを感じさせないような凄まじいスピードで進との距離を詰める。

 

 進もその太刀筋を読んで、回避しようとするが、回避した先にフラムの左手が向けられていた。

 

 「赤魔法:フルブレイズ!」

 

 フラムの左手から炎の渦が巻き起こった。

 

 進に直撃した。

 

 「くっ!!?」

 

 進の体は大きな火傷を負ってしまった。

 

 「ススムさん!」

 

 マリーが心配をして声をかける。

 

 しかし、戦闘は続行―――

 

 元より、進もこの程度で戦闘を終わる気はない。

 

 「白魔法:ハイヒール!」

 

 進は白魔法で自らを治癒する。

 

 「まさかススム君は白魔法が使えるのかい?」

 「しかも治癒の白魔法なんて聖女様しか使えないハズ。」

 

 ルイーズさんにも同じこと言われたっけ―――

 

 「聖女様って何ですか?」

 

 「聖女様を知らないのか。」

 「なら教えてあげるよ。」

 「聖王国では勇者を呼ぶために聖女様が祈りをささげる。」

 「そしてその呼び出された勇者をサポートするのが聖女様の役目さ。」

 「まぁ勇者様なんてこの数百年間呼び出されていないから、普段は傷を癒すために働いている御方さ」

 

 「へぇ...それは面白いことを聞きました。」

 

 そう余裕の返答をするが、進自身フラムの強さには驚いていた。

 

 今の一撃で分かった、やはりこの人はかなり強敵だ。

 

 流石Aランク冒険者なだけはある。

 

 「フラムさん、こちらも全力で行かせてもらいます。」

 

 今度は進の方からフラムとの距離を詰める。

 

 「フフ・・・君はどんな攻撃をしてくるのか。」

 「楽しみだよ。」

 

 「白魔法:光玉ライトボール×10」

 

 進は得意の並列魔法でフラムを攻める。

 

 「すごいな君は!こんな同時に魔法が展開できるなんて!」

 

 全ての光玉ライトボールがフラムさんを狙うが、全ての攻撃を爆剣-クレイモアは斬り落とす。

 

 「だけど残念だ僕相手には威力が足りないよ。」

 

 「ええ、そちらは囮ですから問題ないです。」

 

 「何っ!?」

 

 「身体強化発動」

 

 身体強化をして一気にフラムとの間合いを詰める。

 

 そして神聖剣を抜き、フラムに斬り込む。

 

 しかし、その攻撃を爆剣-クレイモアで受け止める。

 

 「うおおおおぉぉぉ!!!!」

 

 

 お互いの剣がぶつかり合って、凄まじい突風が周囲に巻き起こる。

 

 その衝撃で周りに他の冒険者も集まってきた。

 

 進は二つの剣の衝撃で宙を舞った。

 

 もうあの技しかないか。

 

 「聖剣激烈波!!」

 

 進の周囲に無数の光の剣が現れ、神聖剣セイクリッドブレードを振り下ろした衝撃波と同時に全ての光の剣がフラムに向かう。

 

 「クッ!」

 「黄魔法:インクローブエクスプロージョン!」

 

 フラムは、進の方に手を向け呼び出した数多の魔法陣が進むまでの全ての物を爆発させた。

 

 お互いの技の衝突で轟音と地鳴りが発生した。

 

 「はぁはぁ・・・!」

 「ススム君、君の実力は大体わかったよ。」

 「僕の負けだ。」

 「これ以上は危険だ。」

 

 「ありがとうございます。」

 「フラムさんがかなり強敵だったので全力を出さざるを得ませんでした。」

 

 そうして、お互いが握手をして模擬戦を終えると、

 

 「なに二人だけで楽しそうなことしてんだよ!」

 

 エリアが混ざってきた。

 

 なんかそんななんでもないやり取りが楽しくなった進はついハハハと笑いが込み上げてしまうのであった。

 

 


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