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第407話 【第参回戦】自由人 唯我 新 VS 統率の仕事人 鍜治原 望③


アーク内部 第参階層 匣の闘技場アークリング

 

 いるんだよなァ~~~

 

 こういう馬鹿が―――

 

 金貰って穏便に済ませりゃいいモノを―――

 

 妙な拘りや正義感で認められないヤツ。

 

 金を貰うこと、金を稼ぐことに嫌悪感を抱く輩。

 

 テメェらが生きていくには何が必要だ?

 

 愛だ?友情だ?夢だ?

 

 違ェーだろ!

 

 "金"だろ―――

 

 現金、現ナマ、マネーだろ。

 

 自分が金に困ってねェからって、綺麗ごと抜かしてんじゃねェーぞ!

 ボケがッ!!

 

 「ガキがよォ―――」

 「後悔すんなよ―――」

 

 

 こうなってしまったからには、新と鍜治原の衝突は避けられない。

 

 「テメェには前に借りがあるからなァーー!!」

 「ボコボコにさせてもらうぜェ―――」

 

 新は中学時代、鍜治原の率いる部隊にチームを壊滅させられたことがある。

 

 その因縁を新は忘れてはいなかった。

 

 「友達ダチが何人もテメェにやられてんだよ―――」

 「あん時の借りを返させてもらうぜッ!!」

 

 新は勢いよく殴り掛かる―――

 

 規律も秩序も彼の前では意味がない。

 

 束縛されないこと、自由を愛すること―――

 

 それで十分。

 

 「んな何年も前のこと―――」

 「今更、蒸し返すってのかァァ~~~?」

 

 新の拳が鍜治原の顔面を捉える。

 

 ◆◆◆

 

 「実際の所、鍜治原という男はどうなのだ―――?」

 リオンが進に尋ねた。

 

 リオンはここに来て初めて鍜治原を視た。

 

 第一印象は態度がデカく、横柄で口は悪いし、目つきも悪い、周りにいる者すべてを敵だと思ってそうなそんなカンジの男性。

 

 「鍜治原か―――」

 「実はオレも鍜治原の戦闘力に関しては知らないんだ―――」

 「人を見る目がずば抜けているということと、指示出しが上手く、自分の手を汚そうとしないってことくらいかな。」

 「分かっているのは―――」

 進が答える。

 

 元々、鍜治原の所属は人事部。

 

 その名の通り、天童グループに入社する社員の教育や採用、人事異動に関する仕事を担う。

 

 戦闘用の部署などではない。

 

 まぁ、オレの知らない所でそう云った仕事をやっていたのかもしれないが。

 

 

 「あの人―――」

 「強いですよ―――」

 「特殊訓練中、鍜治原さんと闘ったことは何回かありましたが、"群"を用いたあの人には決して勝てませんでした―――」

 

 百鬼が横から答えた。未だ体調の悪そうな赤目を膝枕しながら。

 

 「そーっすね。」

 「あの人が集団で闘ったら、俺ら誰も勝てないっすね―――」

 

 長椅子に寝そべりながらゲームをする円能寺。

 

 円能寺はまだしも、あの第弐回戦で圧倒的な力を見せた百鬼にまでこう言わせるとは、鍜治原はそれほどまでに強いのか―――

 

 

 

 ◆◆◆

 

 「ぶっ飛べやアァッーー!!!」

 

 新の初撃。

 

 第参回戦、シンプルなステージ、ルール。

 

 故に肉弾戦を好む新に分がある。

 

 「馬鹿は考えることが単純で助かるぜェ―――」

 

 「《戦士生成Lv.40》!!」

 

 新は知らない。

 

 この鍜治原がどれほどの脅威を持っているのかを。

 

 鍜治原の目の前に全身を鎧で覆われた戦士が構築される。

 

 「ッ―――!?」

 

 新の拳はその分厚い鎧で覆われた身体を貫く。

 

 「コイツは思念で動く金属人形だ―――」

 「意思を持っちゃいねぇ―――」

 「そして、コイツはオレっちの意のままに動く―――」

 

 新に胴体を貫かれたことなど意に介すことなく、その鎧の兵士は動く。

 

 手に持ったミスリルの斧を勢いよく振り下ろす。

 

 「チッ―――!!」

 

 新は思わず飛び退く。

 

 地面は全く傷ついていない。

 

 恐らく、このアーク内の材質と同じものなのだろう。

 

 アドミニストレータが思いっきり闘えるようにステージの耐久力を上げている。

 

 「いくら傷ついても動き続ける金属人形―――」

 「オレっちは"群"を意のままに操れる―――」

 「これがどういう意味か馬鹿でも分かるよな~~~??」

 

 

 「《戦士生成Lv.40》!!」

 

 鍜治原は両手を広げ、スキルを発動する。

 

 鍜治原の周りに一体、また一体と同様の鎧兵士が生まれる。

 

 その手にはそれぞれ武器を持ちながら。

 

 「スキルは自由に使える―――」

 「やはり1 VS 複数だからと、反則になったりはしないってことだな―――」

 

 

 鍜治原がこうやってスキルを発動させ、何体も兵士を生み出していても、勝負が続行している状況からこの行為は反則でないと判断する。

 

 まずは一体目で様子を見た。

 

 それから次々と兵士を生み出して、反則ではないことを確認する。

 

 この行動からも鍜治原の慎重さが伺える。まぁ、元より、スキルの使用は自由だと云っていたので、この行為が反則に当たらない目算はあった。

 

 

 「"群"が扱えるのなら、オレっちは負けねェーぜ!!」

 

 新は次々と襲い来る鎧兵士たちを殴り飛ばす。

 

 が、数が多すぎる。

 

 「なぁなぁ―――」

 「今、どんな気分だァ??」

 「宿敵であるオレっちはこうやって高みの見物―――」

 「テメェはちまちまとオレっちの生み出した人形を倒さなければならねぇ―――」

 「なぁ教えてくれよォ―――」

 「今、どんな気分だァ?」

 

 煽るような口調で鍜治原は尋ねる。

 

 「アァ?」

 「そんなのワクワク・・・・してるに決まってるじゃねェーか!」

 「今か今かとテメェーをぶっ飛ばせるのを想像して、こうやって一歩ずつ一歩ずつ進んでんだよ―――」

 「それが楽しくねェーわけねーだろッ!!」

 「自分テメェの道は自分テメェで切り開く―――」

 「その瞬間にワクワクしねぇ男なんていねぇーだろ!!」

 

 

 絶えることのない兵士を前に絶望の表情を見せない新。

 

 やはり、根本的にオレっちとは馬が合わねぇみてェだな。

 

 「いーや!違うねッ!!」

 「自分テメェの道は他人に切り開かせる―――」

 「他人が切り開いてレールを敷いてくれた道の上を苦労せずに進む。」

 「他人が苦労している所を横目に自分は快楽を貪る―――」

 「その瞬間、あぁオレっちはこんな苦労せずに良かったって心の底から思う。」

 「それが一番生きているって実感するに決まっているだろッッ!!!」

 

 

 育った環境、今までの経験、信じようとする"何か"、それぞれが根本的に異なる二人。

 

 この第参回戦―――

 

 まだ闘いは始まったばかりだった。

 

 

 

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