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第404話 NOT FOUND


~王都 聖ミラルド 市街~

 

 

 

 「何やってんだ!お前エエェェーーッッ!!!!」

 部隊を整え、地下から解放された囚人の確保に向かうアルマン。

 

 そんな中、一人の囚人に苦戦するベロニカ達を目撃。

 

 そして、アルマンが恋心を抱いている魔族の女性、ルミナスが地に倒れ、その囚人に頭を踏みつけられていた。

 

 その光景を目にしたアルマンは怒りが爆発していた。

 

 「アル・・・マンさん?」

 

 緊迫した空気。

 

 状況から察するにどうやらベロニカ達は脱獄した囚人との戦闘で苦戦を強いられているようだ。

 

 「んーーん?君もボクの芸術の一部になってくれるの―――?」

 

 コイツは・・・!?

 

 アルマンはこの血だらけの男を知っている。

 

 聖王国地下で幽閉されていた囚人の一人、名前を『ルベライト-ウィ-カラヴァンジ』。

 

 『血濡れの芸術家』の異名を持つ男。

 

 大人しそうな顔をしているが、反吐が出るくらいのサイコモンスターだ。

 

 元々は裕福な貴族の出だったが、一族を皆殺しにしただけでなく、その皆殺しにした家族、使用人の身体をバラバラにして、一つのオブジェを作って悦に浸っていたイカレ野郎だ―――

 

 聖王国の地下牢にぶち込まれた後も、ヤツの創作意欲が薄れることはなかった。

 

 自分の指を壁に強く押し付け、キィーとひっかき、そこから噴き出した自分の血を絵具代わりにして牢獄の中で絵を描き続けていたらしい。

 

 そんな野郎が―――

 

 自分の天使であるルミナスを傷つけている。

 

 「その汚ねェ足をどけやがれッ―――!!」

 

 アルマンは剣を引き抜き、ルベライトに斬り掛かった。

 

 「アルマン様ッ―――!!」

 

 アルマンは部下の騎士の声など気にも留めない。

 

 既にルベライトのことを敵だと認識した。

 

 「いきなり斬り掛かるなんて、ヒドイことするな~!!」

 

 ルベライトはアルマンの一刀が危険だと判断すると後ろに引いた。

 

 「アル・・・マンさん?」

 

 ルミナスは手を地に付け、ヨロヨロと立ち上がる。

 

 「ルミナスさん―――」

 「お怪我はないですか―――?」

 紳士ぶって、ルミナスのことを心配する。

 

 「わ、私は大丈夫です―――」

 「その・・・ゾンビですので・・・・」

 段々と最後になるにつれ声が小さくなる。最後の方は聞き取りづらい。

 

 「えっ―――?」

 「何か言いましたか?」

 

 アルマンは首を傾げる。

 

 アルマンはルミナスがゾンビであることを知らない。

 

 二人の間だけ、ラブコメの波動が感じられる。

 

 「アルマン様―――」

 「普段はあんなこと言わないのに―――」

 部下の一人が小さい声で呟く。

 

 「シィーーッ!!」

 「そういうことを言うんじゃない!!」

 「今まで俺達のような男所帯で頑張ってこられた御方なのだ―――」

 「察してやるのだ―――」

 もう一人の部下がそう諫める。

 

 「あーー二人ともちょっといいかしら―――?」

 

 ベロニカが二人の間に割って入る。

 

 「不機嫌!不許可!!不本意!!」

 ベロニカに続いてナデシコも不機嫌そうに割って入る。

 

 「敵さんはまだピンピンしてるのよ―――」

 よく見るとベロニカの方も多少のダメージを受けている。

 

 ルベライトはおぞましい顔をして、こちらをニタニタと見ている。

 

 「ベロニカ・・・・さん。」

 「あの男の能力についてどこまで知って・・・ますか?」

 

 おぼつかない口調のアルマン。

 

 普段は敬語とかあまり使うような男ではないのだが、本能的にベロニカを敵に回してはいけないと察して、口調が丁寧になる。

 

 「それがまだよく分かっていないの―――」

 「貴方なら何か知ってるんじゃないの?一応、この国の元神殿騎士団長だった人でしょ?」

 

 

 「あの・・・・じゃないです。です―――」

 進とのシュトリカム砦での一件の後、聖王国を離れ、エレナの魔道具屋に通いつめ、ルミナスにアタックを試み過ぎていた為、ベロニカからは無職の人という印象を与えてしまっていた。

 

 「あぁ―――」

 「そうだったの?」

 全く悪気を感じていないようなベロニカ。正直、彼女からしてみたらアルマンの身分などどうだってよい。

 

 今、知るべきは目の前の敵の情報。

 

 「それで、知ってるの?知らないの?」

 

 「ヤツの名前は『ルベライト-ウィ-カラヴァンジ』」

 「ヤツの持つユニークスキル名は『痛みこそ芸術ペインペイント』」

 「ヤツの血に触れてしまうと、一定時間ヤツと痛みを共有してしまう能力です。」

 

 

 「それは厄介そうな能力ね―――」

 「だけど、少し闘ってみたカンジ、それ以外の能力スペックも常人のそれじゃなかった―――」

 

 魔族のベロニカの視点から見ても、ルベライトの戦闘力の高さは異常だった。

 

 S級犯罪者は国家レベルの犯罪者として認定された者達。

 

 この世界の超危険人物をこの聖王国に集めたようなもの。

 

 彼らもまた、常人とは別の領域を持ち生まれてしまった。

 

 いわば、ヌバモンドでのスカウト組のような連中。

 

 彼らはその高い能力を持て余し、国家転覆を図るような者達だ。

 

 「アンタらまとめて、ボクの芸術にしてやるよオォ!!」

 

 愉悦の表情を浮かべたルベライトがアルマン達に襲い掛かる―――

 

 

 ◆◆◆

 

 

 「面白いことになってきたみてェだな―――」

 

 サンドルは燃え行く聖王国を眼下にそう呟いた―――

 

 サンドルのいる場所は、聖王国を見下ろせるような少し離れた丘の上。

 

 進との接触の後、聖王国での動向を伺っていた。

 

 彼にとってもこの動乱は、興味があり、人生の退屈を凌ぐには打ってつけの余興くらいには思っていた。

 

 同族同士で争うこと。そのことについては人間も魔族も関係ない。

 

 互いの利益追求や思想の違いで簡単に争いなど起こる。

 

 サンドルの記憶に蘇るは、自らが滅ぼした鬼人族の最期。

 

 彼の興味は勇者として召喚された天童 真とその息子、クロヴィスの英雄 天童 進の闘いに向いていた。

 

 自分も混ざりたいという欲求もあったが、より純粋な強者である片方がいずれ自分の目の前に立つ。

 

 それを楽しみに待っている方が、より幸福であると彼は考えた。

 

 彼は楽しみは後に取っておくタイプだったからだ―――

 

 まぁ、別にサンドルは未来が視えるわけではないが、直感的にそうなる予感があった。

 

 

 「ふふっ―――」

 「まぁ、いずれどっちかが、俺様と対峙することにはなるだろうな―――」

 

 そう云って、サンドルは聖王国を去ろうとする。

 

 「サンドル―――」

 

 誰かが俺様の名前を呼ぶ。

 

 しかも呼び捨てときた。

 

 そんな愚か者、この世界にほとんど存在しない。

 

 「誰だ!てめえ―――」

 

 眉間にしわを寄せ、声の主の方を向く。

 

 「久しぶりだな―――」

 「約500年ぶりといったところか―――」

 

 ガサガサの声、だけど聞き覚えがある。

 

 「テメェは・・・・!?」

 

 サンドルの顔が歪んだ。

 

 「ようやく再会できた―――」

 「ここで君を見つけられて良かった―――」

 

 

 サンドルは思った。

 

 死ぬほど出会いたくないヤツに遭ってしまったと―――

 

 

 出来ることなら一生自分のことを見つけないで欲しかったと―――

 

 

 

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