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【完結】エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件 ~大切な幼馴染を追いかけて異世界に来た天才少年は聖女しか使えないハズの治癒魔法の才能を開花させる~  作者: ゆに
第6章 エレベーターに乗ったら異世界に来てcarnivalをカーニバルと読まされた件

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第402話 【第弐回戦】銀獅子姫 リオン VS 擬態の仕事人 百鬼 紗霧⑬


【第二ラウンド裏】

アーク内部 第弐階層 戦場~

 

 百鬼は足を震わせて、立ち上がる。

 

 ダメージはデカい。

 

 内臓だけでなく、先の衝撃で頭を強く打ったみたいで、平衡感覚も少しイカれた。

 

 「ここまで私を追い込むなんて―――」

 「リオン姫―――」

 「どうやら貴方を認めるしかないみたいね―――」

 

 それでも勝負を諦めたわけではない。

 

 彼女は仕事人プロだから―――

 

 「王手チェックメイトだッ!!」

 

 西軍が東軍を圧倒し、殲滅していた。

 

 そして東軍の支配者リーダーである百鬼の前にリオンを守ろうとする西軍の兵士達が立ちはだかる。

 

 「・・王手チェックメイトね・・・・。」

 「・・・・これが・・・指導者リーダーとしての差か―――」

 

 百鬼はこんな時でも現状を冷静に分析する。

 

 スカウト組として天童グループに入社し、数々の特殊な経験を積み、今に至る。

 

 今回のようなスキルや魔法を用いた特殊戦も仕事として今までも何度もこなしていた。

 

 そんな彼女にとって、これは劣勢ではあるが、窮地ではない。

 

 「擬態する気体アトモスフィア・・・・!!」

 

 百鬼は自分の殴打を受けた腹に手を当てる。

 

 瞬間、スキルの発動と共に百鬼の手から閃光が放たれる。

 

 ヒューっと足元に一陣の風が吹く。

 

 「・・・・ッ!?」

 

 先ほどまで呼吸を荒くしていた百鬼の呼吸が徐々に整う。

 

 回復している―――?

 

 リオンは驚き、目を見開く。

 

 「内臓がいくつか傷ついていたから、修復をしました―――」

 

 呼吸がまともにできなくなるのは、百鬼としても困る。

 

 故に百鬼は自分の身体に対して、擬態する気体アトモスフィアを発動させた。

 

 彼女は体内に内臓を修復することの出来る微生物を生成し、操った。

 

 実際に微生物と言っても害の在る者だけではない。我々が普段過ごす日常でもビフィズス菌やフェーカリス菌、アシドフィルス菌といった腸内の機能を活性化させる有益な菌は存在する。

 

 百鬼はリオンの眼をまっすぐ見つめる。

 

 その瞬間だった。

 

 二人がお互いを好敵手ライバルと認めたのは―――

 

 「タイムアップで~~~っす!!」

 

 タブレットから女神アークの声が聞こえた。

 

 第二ラウンド裏の終了を告げる声だ。

 

 画面に映ったのは、リオン率いる西軍の勝利を示すものだった。

 

 百鬼側の砦への線が青く点滅した。これでやっと一つ。

 

 あとリオン側も『侵攻』を二回成功させればこの闘いに勝利できる。勿論、先に指導者リーダーである百鬼を倒すことでも勝利はできるが。

 

 「このラウンドは貴方の勝ちだけど―――」

 「私はまだ負けていない―――!!」

 

 「最後に勝つのは私ッ―――!!」

 

 

 闘志をその眼に燃やす百鬼。

 

 「あぁ、私とて勿論そのつもりだ!!」

 「百鬼殿!!」

 

 二人はお互いの砦へと転移した。

 

 お互い、それぞれの砦へ一歩進んでいる。

 

 先に『侵攻』を3回成功させた方が勝利できる。

 

 ここから闘いは加速する。

 

 歌の力で、自軍の兵士を強化させ闘いに臨むリオン。

 

 そして、圧倒的な"個"の力を振るい、その眼にリオンに対する闘志を宿す百鬼。

 

 二人の意地がぶつかり合う。

 

 二人はここからお互いにスキル、兵士、権利を駆使し、一回ずつ『侵攻』を成功させる―――

 

 

 そして、迎えた第四ラウンド表。

 

【第四ラウンド表】

 

 

 ◆戦況◆

 【西軍】残存兵:300名

     残魔石:5.0kg


 【東軍】残存兵:350名

     残魔石:4.0kg

 

 お互い、可能な限り兵士投入し、最終戦に備える。

 

 リオンの歌声がここまで聞こえる。

 

 リオン姫は本当に美しい声で歌う―――

 

 人の心を動かすことの出来る優れた指導者リーダーだと思う。

 

 「歌の力で人が強くなる訳ないか・・・。」

 

 明日香ならそんなことないって否定しそうだ。

 

 百鬼は自身のアイドルだった頃を思い出す。

 

 彼女の隣には、心の底から歌が大好きだった明日香がいた。

 

 だが、それも過去の話。

 

 気持ちを切り替えていかなければいけない。

 

 西軍の砦ももうすぐ。

 

 この『侵攻』に勝利すれば、東軍の勝利。

 

 残り少ない弓矢兵アーチャー魔導士ウィザード同士の遠距離攻撃合戦が開始の合図だ。

 

 双方、一人また一人と兵士の命が尽きていく。

 

 リオンは馬に乗り、皆の前に立ち、先陣を切る。

 

 「『行動抑制の権限』発動する!!」

 

 リオンは東軍の兵士たちに対して、『行動抑制の権限』を発動。

 

 東軍の兵士たちの手数を減らす。

 

 「リ・・・リオン様・・・!?」

 リオンの傍に付いていた兵士たちが一人、二人と突然倒れる。

 

 「百鬼殿・・・・。」

 

 リオンは空を見上げる。

 

 そこにはドラゴンの背中の上に立つ百鬼がいた。

 

 彼女は上空から致死性の高い細菌をバラまいていた。

 

 勝利の為なら手段は選ばない。

 

 その意思が見て取れた。

 

 「第一ラウンド裏も同じようにしたの・・・」

 「こうやって、毒性の高い細菌を空から流して、西軍の兵士を殲滅した―――」

 「第二ラウンドでは支配者リーダーである貴方を倒す方が早いと踏んで、この手は使わなかった―――」

 「でも私が想定していた以上に貴方が粘った。」

 「だから、このお互いがリーチとなった状況で再び、こういった手を使わせてもらったわ―――」

 

 「みんな・・・・」

 リオンは目を開いて死んだ兵士たちの目に手をかざし、まぶたを閉じる。

 

 一人一人を思いながら―――

 

 

 「でも貴方だけは・・・・」

 「私がこの手で倒す―――」

 百鬼はドラゴンを地上へ降ろし、再びリオンの前へと立つ。

 

 

 ここは戦場だ。

 

 毒を用いようが、今更卑怯だとは言うつもりはない。

 

 

 「あら?意外と冷静なのね―――?」

 「悲しみの感情は既にないのかしら?」

 

 これまで感情的な態度を見せることの多かったリオンに対して百鬼は云った。

 

 「勿論、悲しいさ―――」

 「だが、指導者リーダーが皆の為、出来ることを考えた時、それは悲しむことじゃないと分かったのだ―――」

 「彼らはよく闘ってくれた―――」

 「そんな彼らの想いを背負って、私は闘いに臨まなければならない―――」

 「それが彼らにできる最大限の弔いなのだッ―――!!」

 

 「ッ―――!?」

 

 この『管理戦争』が始まる時よりも遥かに成長したリオン。

 

 誇りを胸に自信を浮かべたその表情に、百鬼にも動揺が走る。

 

 「百鬼殿―――!!」

 「其方に一対一を申し込むッ!!」

 「これが最後の勝負だッ!!」

 

 リオンは百鬼に刃を向け、一対一を申し込んだ。

 

 百鬼の唇が震える。

 

 全身に鳥肌が立つ。

 

 まるで明日香みたいにどこまでも前向きなその姿にどこか自分でも言葉にできない感情が芽生える。

 

 「えぇ―――」

 「いいでしょう―――!!」

 「リオン姫、これが私たちの最後の闘いですッ!!」

 

 

 

 

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