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第400話 【番外編】真島 未央のとある一日


 これは真島 未央が魔王として異世界にやってくる前のお話。


 一人の女子高生としての日常を描く。

 

 「ふあぁぁ~~~!!」

 

 朝7時、未央は自然と目が開き、ベットの上で上体を起こす。

 

 大きな欠伸をしながら、両腕を精一杯、肩から上に伸ばす。

 

 「おはよう―――」

 「ケロちゃん!」

 

 未央の愛犬ケロべロスが起きたばかりの未央のひざ元に構って欲しそうに飛び乗ってきた。

 

 勿論、ケロべロスと言っても本物ではない。犬種は茶色い毛並みのチワワで、クリクリの目が可愛らしい、いたって普通の愛玩犬だ。

 

 それを未央はオカルト好きが過ぎている為、ケロべロスと名付けてしまった。

 

 「もうそんなに抱き着いたら、私が起きれないでしょ~~~!!」

 

 膝の上で気持ちよさそうにくつろいでいたケロべロスを持ち上げ、そっと床の上へと移動させた。

 

 今日はいつも通り、平日で学校へ登校しなければいけない。

 

 学生の朝は忙しい。朝ご飯を食べたり、着替えたり、身だしなみを整えたり、教科書を鞄に入れたり、準備に時間が掛かる。

 

 休日だったら思いっきり構ってやりたいところだが―――

 

 

 

 と、未央は階段を下りて、ダイニングに向かう。

 

 

 「お母さん―――」

 「おはよ~~~」

 

 母親への挨拶を済まし、母親の用意してくれた朝飯を食べる。

 

 「未央―――」

 モグモグと口いっぱいに食べる娘の顔を見ながら、母親が未央の名前を呼ぶ。

 

 「んーー??」

 

 未央はパンを頬張りながら、母親の声に反応する。

 

 「そういえば、進ちゃん―――」

 「もう来てたわよ。」

 

 ニヤニヤした顔の母親。

 

 未央の母親は進のことを、愛娘をいつも守ってくれる騎士ナイトか何かだと思っているようだ。

 

 「えっ!?」

 「もう来てたの!」

 「も~~進ちゃん、いつも早いんだから―――」

 

 進と未央の二人はお互いが用事があるとき以外、一緒に学校に行くことが習慣になっている。

 

 別に二人で決めたわけではないが、自然とそうなってしまった。

 

 

 「女の子の準備は時間が掛かるんだよーー」

 

 急いで喉の奥へと食べ物を詰め込んだ。

 

 そして、立ち上がり、洗面台へ。

 

 まずは歯を磨いて、その次に化粧水で洗顔。そして、髪をアイロンで整える。ストレートも良いが、今日は毛先を少し巻いてふわふわ感を出した。

 

 制服を着て、教科書を鞄に詰めて、準備は万端。

 

 「それじゃ―――」

 「いってきまーっす!!」

 

 「うん―――」

 「いってらっしゃい!」

 

 未央は両親に声を掛け、家を飛び出た。

 

 

 「おまたせ~~!」

 「進ちゃん!」

 

 おそらく30分くらいは待たせてしまっただろうが、進はいつもと変わらない顔で、挨拶を交わした。

 

 「―――っでね、置いてあったきゅうりとかが食い散らかされていたんだって」

 「やっぱり河童の仕業だと思うんだけど―――」

 

 「進ちゃんもそう思わない?」

 

 未央は朝から河童について熱弁していた。

 

 他の人から見たら下らないと思ってしまうのだろうが、彼女にとっては重要だった。

 

 超常現象への探求心、不思議への好奇心が、空想上の生き物への愛が旺盛だった。

 

 「今度、オカ研のみんなを連れて、フィールドワークに行こうよ!!」

 

 そして、この行動力である―――

 

 「あぁ―――」

 「そうだな。みんなでピクニックってのもいいな―――」

 進は楽しみな表情でそう答えた。

 

 「ピクニックじゃないよ!!」

 「ち・ょ・う・さ!!」

 「河童を探しに行くんだから―――」

 

 「分かってるって―――」

 「でも、やっぱりお昼はお腹が空くから、ランチも用意しておかないとな―――」

 「未央は何が食べたい?」

 

 進は尋ねた。

 

 「う~~ん!やっぱり進ちゃんの作ってくれたサンドウィッチでしょ―――」

 「それから、ハンバーグ、エビフライ、フルーツの盛り合わせなんかもいいよね・・・・」

 「って、やっぱり進ちゃんピクニックだと思ってるでしょ!?」

 

 未央は勢いよくツッコミを入れる。

 

 

 「ハハハハっーー!」

 「いやいや、そんなことないって―――」

 

 「も~~~う!!」

 「でも、進ちゃんのお弁当めちゃくちゃ美味しんだよね~~」

 

 涎を垂らしながら進が作ったお弁当を想像する未央。

 

 「オーケー、オーケー!」

 「丹精込めて作らさせて頂きます!お嬢様!!」

 

 紳士ぶって、進は未央へお辞儀をする。

 

 

 そんなやり取りをしながら、二人は毎日登校していた。

 

 学校の授業はいつも通り、進んでいった。

 

 進ちゃんとは同じクラスだから、いつも一緒だ。

 

 授業で分からない所があったりしたら、いつも聞いてしまっている。

 

 いや~~助かるわ~~。

 

 って、なんか都合のいい友達みたいに言ってるイヤな人みたいだ。

 

 全然、そんなことないからね!!

 

 少しずつでもいいから、進ちゃんには感謝を何かで返していきたいなって思ってる。

 

 進ちゃんは幼馴染の私が言うのもアレだが、結構モテる。

 

 何度か、告白されている所を目撃してしまった。

 

 でも、何故か毎回断っているみたいだ。

 

 もったいない・・・・。

 

 みんないい子だと思うのに。

 

 

 放課後、オカルト研究部の活動がある。

 

 とはいっても、フィールドワーク以外はほとんど喋ったり、お菓子を食べたりするだけの部活になってしまっているのが現状だ。

 

 

 「未央~~!!」

 「この漫画の続きとって~~!!」

 

 オカ研の一員である鈴谷 花が寝そべりながら、未央に言った。

 

 「いやいや、花ちゃん―――」

 「それは自分で取りなよ!」

 

 未央はだらけている花へ注意する。

 

 「え~~っ!取ってくれないの~」

 「う~~、じゃあ天童取って~~~!!」

 

 未央が駄目だと分かると、次は進へ頼んだ。

 

 まるで我がままを言う子どものようだ。

 

 「仕方ない奴だな―――」

 進は花の為に立ち上がろうとする。

 

 「進ちゃ~~ん?」

 少し圧の強い声で未央は進へ呼びかけた。

 

 まるで、花の言うことを聞くなと言っているようだ。

 

 「うっ!?」

 「悪いな鈴谷―――」

 「未央がお怒りのようだ―――」

 

 進は立ち上がろうとした足を元に戻した。

 

 「ちぇ~~!しょうがないな~~」

 

 渋々自分の足で立ち上がり、漫画の続きを手に取った。

 

 

 なんでもない時間がゆっくりと過ぎていく。

 

 

 

 こんな感じの日常がいつまでも続けばいいのにと未央は思った。

 

 

 

 

 これは未央が異世界へ転移する前の話である―――

 

 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 化粧水で洗顔。 ↑ 化粧水で洗顔?? そんな事してる人聞いたことない。 洗顔して化粧水をつけるってならわかるけど、明らかにこれはおかしい。
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