第299話 天才 天童 進 VS 軍隊武器 君島 悟流②
~亜空間内 とある森の中~
「軍隊武器ッ!!」
オレに照準を合わせた無数の銃口が火を吹く。君島は遠隔で銃器を自由自在に操る能力を持つ。
鳴り響く銃声。その間約10秒。オレはひたすら避け続けた。
オレは今、何百もの兵士からアサルトライフルを撃ち続けられている状況に等しい。
パラパラと弾丸の薬莢が地面に転がる。
「まさか進様が避けるだけなんてことはないですよね?」
「・・・。」
「もしかして待っているとかですか?」
「この無数の銃火器が弾切れを起こすのを!!」
「残念ですが、弾切れはあり得ません。」
「何故なら、この銃器達はこの世界のスキルによって、強化され無限弾仕様になっていますから!!」
やはり、弾切れで隙を見せることはないか・・・。
君島のスキルや戦闘スタイルが分からない以上、初めは見に回って弾切れ隙を見て、反撃に出ようと思ったが、その線は薄いようだ。この世界のスキルによって銃器が強化を受けているなら、弾詰まりや反動なんかもあり得ないとみていいだろう。
今の所、弾丸のスピードには付いていけている。オレ自身のステータスが高いことと魔眼、解析のスキルが働いているおかげで躱すこと自体は苦でない。だが、このまま躱し続けても無駄だってことが分かった。
何とかしてアイツの懐に入らないといけないな。
「素晴らしいでしょう!!」
「どんなに身体を鍛えようと、拳銃なら引き金を引いて頭に弾を当てるだけで人は死ぬ。」
「そこに身体能力の格差は必要ない!!」
君島は宙に浮いている拳銃を一つ手に取り、口を開く。
「フッ・・・元陸自のアンタがそれを言うのか!」
「一般人ならお前に近づく前に首をへし折られるだろう!」
「ましてや遠距離からの正確な狙撃なんてのも無理だ!」
「そこには身体的な能力の格差は確かにある!!」
君島がそんな話を切り出すとは珍しい。オレはこの男に関して医術に携わる時の顔しか知らない。陸自を何故止めて、ウチの会社に入ったかの詳しい経緯までは知らない。
父さんが直々にスカウトしてきたスカウト組は謎の多い者がほとんどだ。
人間でありながら人間を超越した者達―――
今にして思えば、スカウト組達の存在すら大規模な実験の一部なのかもしれない。
「数撃てば当たる―――」
「下手な一般人でも何発も撃っていたら当たることがあるかもしれません。」
「そして当たりさえすれば、相手の身体を壊すことが出来る。」
「サバイバルナイフではそうはいきません。」
「拳銃は私たちの抱えている"不平等さ"を消すことが出来るんですよ!!」
「力の弱い搾取されるばかりの者にそこから抜け出すチャンスを与える素晴らしい道具なんですよッ!!」
「社長は私にこう言いました―――不平等の無い、平等な世界を作るから手を貸せと。」
「私はそれを"天命"と受け取りました!!」
「それがアンタが父さんの手を取り、ウチに入社した理由か?」
「えぇ、幼い頃より感じていた不平等感。自分に出来て、他の人には出来ないことがある!長い間考え続けました。」
「何故、神は命を平等に作らなかったのか?何故、生きるチャンスを平等に与えなかったのか?何故、あの時死んでいたのは彼女じゃなくて私ではなかったのか?」
「ずっと答えを探していましたが、社長に出逢って変わりました!」
「答えを探す日々から答え合わせをする日々にねッ!!」
「父さんは元の世界で何をしようとしているッ!?」
「アンタなら何か知ってるんだろう?」
「おや?まだご存じなかったのですか?」
「そうですね・・・。」
「私に勝つことが出来たなら教えますよッ!!」
「さぁ・・・そろそろ、お喋りも終わりです!!」
「軍隊武器ッッーーー!!」
「武器改造:弾丸回転数UP」
「武器改造:弾丸速度UP」
「武器改造:弾丸貫通力UP」
「武器改造:着弾時爆発付与」
君島の声に反応するように周りの武器たちが青く光って反応している。
おいおい・・・そんなのアリかよ・・・。最後の爆発ってなんだよ。弾丸一発一発をロケランにでもするつもりかよ。そんなことになったらゾンビの親玉だって何体でも屠れんぞ。
「発射ァァッーーーッ!!!」
一斉射撃だ。前方からまた無数の弾丸。先ほどよりも1.5倍ほど速い。回転数も上がって空気抵抗を受けにくくなっているから体感はそれ以上だ。
「チッ・・・!!」
「これで終わりです・・・。」
とてつもない爆発と共に爆風が周囲の木々を吹き飛ばす。
「おーい・・・こりゃいくら天童でもヤベェーんじゃねんか・・・。」
新はちゃっかりと爆発の範囲外に逃げて、様子を伺っていた。いや、新だけではなくキルとリカントもだ。ここは進自身が任せろと言った。だったら、最後まで闘いを見届けるのが戦士としての務め。
「進なら大丈夫だ・・・。」
「まだ進の気は消えていない。」
リカントは呟く。
「空魔法:次元渡り!!」
空間にヒビが割れ、そこから進が現れる。別次元に避難して君島の一斉射撃を避けたのだ。
「なるほど。別次元へと逃げていましたか・・・。」
この時、君島の背筋にゾクッと鳥肌が立つ。
内心で恐れているのか?私が・・・進様を?それともこれから死ぬかもしれないことを?
今度は進が走り出す。一気に君島との距離を詰めようとする。
一斉射撃が止んでいる今がチャンスだと言わんばかりに突っ込む。
「死ぬ気ですか?」
「ならばもう一度です。」
「軍隊武器ッ!!」
「発射です!!」
「身体強化:速度強化」
再びの弾丸の嵐―――それと同時に進、自らの速度を上げる。
初めから避けること自体は難しくなかった―――
だが、君島、お前がまだ何か隠し玉を持っている可能性も捨てきれないのも事実だ。
だから、今度はこっちが仕掛ける。
右へ 左へ
鳴りやまぬ銃声、止まらぬ疾走、だが君島へと段々と近づいているのも事実である。
「これだけ近づけばお前の軍隊武器は使えないだろう?君島ァ!!」
君島と進の距離数メートル。これだけ近いと自らにも被弾してしまう恐れがある。
「力を貸してくれ―――天満雪月花!!」
「ウオォォォーーーッ!!!」
進は収納のスキルから取り出した天満雪月花を鞘から引き抜く。
その刃が君島へと迫る。