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【完結】エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件 ~大切な幼馴染を追いかけて異世界に来た天才少年は聖女しか使えないハズの治癒魔法の才能を開花させる~  作者: ゆに
第5章 エレベーターに乗ったら異世界に来て父親が勇者として召喚されていた件

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第257話 超人 唯我 新 VS 拳聖 ガイウス①


~シュトリカム砦内~

 

  かつてこの世界には『拳聖』と呼ばれる男がいた。

 

 ガイウス-ド-ディビアン―――その拳は天を裂き、地を割ると言われるほどだった。

 

 あらゆる武の頂点に立ち、周囲から羨望の眼差しを浴び、古今東西で英雄として語り継がれるそんな男・・・のハズだった。

 

 

  "森羅万象 あらゆる命に感謝を"

 

 ガイウスは向かい合う新に一礼をする。

 

 彼は常に闘争に対して感謝の心を忘れない。

 

 自分に向かい合い、拳を向けてくれてありがとう・・・と。

 

 どんな敵が相手でもこのルーティンを欠かすことはなかった。例え相手が災害級のドラゴンであっても、人の命を虫けらのように扱う悪魔であっても、震える手でナイフを向ける少年兵であってもだ・・・。

 

 相手は関係ない―――自分に敵対心を持つ。

 

 ただそれだけでいい。

 

 自分が拳を振るう理由はそれだけでいい。

 

 それがガイウスがその静寂な心の中で出した答え。

 

 「アンタが拳聖ってヤツだな!?」

 唯我 新に怖い者はいない。例えそれが拳聖と呼ばれたこの世界の英雄だとしても。

 

 向かい合う相手はただ殴る。自分の力と相手の力どちらが強いかただそれをハッキリさせたい。ただそれだけのこと。自分の好きな時に好きな場所で好きな者と暴れたい...暴れて気分をスッキリさせたい。

 

 自由奔放にのらりくらりと自分の欲望に忠実に生きる。

 

 闘いに感謝などとは程遠い。

 

 何故なら彼は武術家ではない。

 

 唯の不良なのであるから。

 

 「かつて・・・そう呼ばれていたこともあった。」

 ガイウスのその重い口が開く。

 

 「あァそうかい・・・!まぁ俺は肩書なんて興味ねェーがな!!」

 「ただ、つえェー奴と闘いてェー!ただそれだけだッ!!」

 新は右手をボキボキと鳴らす。

 

 「そうか・・・ならば掛かってくるがいい・・・!」

 「君に私は倒せないッ!!」

 

 既に六十を過ぎた初老の男とは思えない程の巨体がその大きな両腕を思いっきり開く。

 

 「オラァーーーッ!!」

 

 それは何に捻りもない右ストレート。

 

 この世界に存在する万を超えるスキルや魔法、武器すら使うことなくただ繰り出される新の渾身の拳。

 

 「見た所・・・ただの正拳突き...スキルや魔法の気配はないッ!!」

 

 ガイウスは左手で新の拳を受け止めようとする。

 

 その刹那―――ガイウスに嫌な予感が過る。

 

 新の拳を受け止める為に開いていた左の掌を猛スピードで振り上げ、新の拳を弾いた。

 

 ガイウスのその弾きを目で追えた者はエリート揃いのテンプルナイトの中でもほとんどいなかった。

 

 ガイウスは自分の振り上げた左手が火傷していることに気付く。

 

 

  まさか・・・この少年の拳が?

 

 唯我新はガイウスがそれを思考するコンマ数秒を見逃す男ではない。すぐに左拳のラッシュによる追撃を放つ。

 

 「オラァーーッ!!オラオラオラララララッーーーーッ!!!!」

 

 ガイウスは新の毎秒数百発以上に及ぶ、拳を鮮やかに捌く。

 

 それは芯で受け止めることはせず、まるで地面に落ち行く卵を優しく手包むかのように威力を殺していた。

 

 それは簡単なようで神がかり的な技術を要する。そんなことをせずとも自らの強靭な肉体で何発か受けて、そこで隙を見せた新に一撃を放てばいいではないかと周りにいたテンプルナイトたちは考えていた。

 

 ガイウスは敢えて新の拳を鮮やかに捌き続ける。

 

 否、そうしなければいけないと直感していたからだ。

 

 この少年の拳をノーガードで受けたら、間違いなく自分の致命傷になる。かつて一人で闘った災害級のドラゴン、リバイアサン、ジャイアントイビルなんかよりも遥かにこの少年の方が大きく見える。

 

 とガイウスは肌で感じていた。

 

 スキルでありながら、スキルという枠組みから大きく逸脱する新の二つのユニークスキル《超人》、《天上天下唯我独尊》

 

 《超人》のスキルは新が生まれながらにして有しており、本来ならば、地球においてスキルという概念が無いにも関わらず、自身の成長と共に覚醒を果たした能力。

 《天上天下唯我独尊》のスキルは、この世界に来る際にこの世界の管理者アドミニストレータが特典として付与したスキル。

 

 そして、その常識外れの二つのスキルをスキルと認識することなく使い続ける唯我 新という男。

 

 これほど厄介な存在はそうはいない・・・。

 

  しかし、ガイウス-ド-ディビアンはこの世界の拳聖。

 

 神の手とまで言われたその男にはまだ程遠い。

 

 「チッ――!!」

 

  んだよ!コレは!いくら殴っても全然感触がねェーッ!!

 

 思うように行かずにイライラする新。

 

 新の繰り出す全ての連打ラッシュをガイウスは卵をキャッチするかのように優しく包み込むように受け止めていた。

 

 「君は中々やるようだ・・・」

 「しかし、相手が悪い。相手がこの私でなかったら、勝てたかもしれないのが残念だッ!!」

 

 肉体、技術、精神―――その全てが最高峰のこの男には通用しない。

 

 次の瞬間―――右から繰り出される拳を円を描くようにいなし、新の手首を瞬時に掴む。そしてそのまま左へ捻り、新の右手の動きを封じる。

 

 「ッ―――!?」

 

 それまで、新の攻撃を防ぐ一方だったガイウスがついに牙を見せる。

 

 手首を捻り、同時に新の顎を目掛けて蹴り上げる。

 

 「ア"ァ―――ッ!?」

 

 大木のような足首がクリーンヒットする。

 

 ただ、ガイウスの攻撃はそれだけでは終わらない。

 

 宙へ浮いた新の身体を掴んだ手首一本で持ち続ける。まるでおもちゃでも持っているのかと言わんばかりに軽々と持ち上げている。

 

 「~~~ッ!?」

 

 混濁する新の意識。

 

 ガイウスは新の学ランの襟元を掴むと新の身体をそのまま背中から地面へと叩きつける。

 

 「カ"ッ―ーァ!?」

 口から大量の血を吐き出す。どうやら今の衝撃で内臓をやられたらしい。

 

 ガイウスは腰のポケットから取り出したグローブを両手へ装着した。革製の茶色のグローブ、魔法繊維でできており、耐斬撃、耐摩擦、耐熱、耐魔法の術式が仕込まれているガイウス専用の防具。現役時代の彼は強敵のとの戦闘において、このグローブを装着して闘いに臨んでいた。新の事を強敵と認めたからこそ、今装着したわけだ。

 

 「少年よ・・・眠れッ!!」

 

 地面に仰向けになり動けない新の顔面に渾身の一撃を放つ。

 

 新の顔面は鼻骨を砕き、大量の血飛沫が舞い上がりガイウスの衣服へと付着する。


 ガイウスの拳の衝撃で、周囲の木々や動物たちは逃げ出し、大地が震える。

 

 

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