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第241話 やっぱ楽しむなら祭りっしょ


~孤児院内 会議室~

 

 人間と魔族たちが並んで座る会議室内―――進の司会進行でこれからのことについて話を始めようとしていた。リカントはモレクが蘇ったということで、今後についての話し合いをする為、エレナを呼び出していた。

 

 「リ・カ・ン・ト~~私を呼び出すなんて一体何の用なのよ~~★」

 「てか、さっき話せばよかったじゃないのよ~~★」

 少し怒り気味のエレナ。自身の作業を邪魔されたことでリカントに対して腹を立てていた。

 

 「ゴメンね!エレナちゃんっ!!」

 「実は、黙ってたんだけど、モレクさん生きていたのよ・・・・・・・!!」

 両手を合わせて謝る未央。その座る椅子の後ろからひょっこりと顔を出す可愛らしい小さな熊のぬいぐるみ。

 

 「エッ★!?」

 「もしかしてアンタがモレクだっての★!?」

 エレナはそのぬいぐるみをジッと見つめて尋ねた。

 

 「如何にも・・・。」

 

 可愛らしいぬいぐるみから出たとは思えない程の低い声が会議室に伝わる。

 

 「プフッッ★!!!」

 「キャハハハハハッーーー★!!!」

 「アンタ何よ!!その可愛い熊の姿はッ★!!」

 腹を抱えて笑い出すエレナ。そりゃ以前のモレクは泣く子も黙るような怪物の姿をしていたわけで、それが今や可愛らしい人気キャラの皮になってしまったのだから、エレナが笑ってしまうのも当然ではある。

 

 「ヌゥ!!」

 「仕方ないであろう!」

 「死にかけの私が憑依するのにちょうどいい依り代がこれしかなかったのだ!!」

 エレナに爆笑されて少し戸惑うモレク。正直な所、自分の容姿などそこまで気にしていない男だが、そこまで笑われるのは想定外だった。

 

 「エレナ様・・・モレク様はこのお姿でも変わらず我々の主でございます!」

 「ですので、これ以上お戯れは止めていただきたいと思っております!!」

 メルクロフは真剣な眼差しでエレナを見つめる。メルクロフや他のジャハンナムにとってはもはやモレクの容姿や戦闘力などさして問題ではないのだ。ただ、生きていてくれたこと、そしてこれから先も変わらず忠誠を誓えることが喜びなのである。だから、いかに同じ六魔将と言えどもエレナにこれ以上侮辱されるのは心が許さないと感じていた。

 

 「あら、ゴメンなさいね★」

 「私も悪気があった訳じゃないの★!!」

 

 こうして、エレナも会議に参加する。

 

 「さて・・・モレクも蘇って?エレナも来たことだしこれからの事について話を始めようと思う。」

 

 進はみんなの前に立ち、会議室に設置してあった黒板にヌバモンドの言葉で文字を書いていく。

 

 「ん~~何々・・・??」

 「①クロヴィスを中心に自分たちの存在の地盤を固めていく。」

 「②各国の王様とコンタクトを取り、王権を集める。」

 「③空中に浮く魔族領に攻め、サンドルから王権を取り返す。」

 

 未央は黒板に書いてある文字を読み上げていく。

 

 「これがオレ達がこれからやる予定のことだ!!」

 「この世界にはどうやら、今オレ達がいる中央大陸の獣人の国 クロヴィスの他に西のリザードマンの国『ドラコミシア王国』さらにその西にある魔導士が主体の国『魔導国』、クロヴィス東の『聖王国』、さらにそのまた東の極東と呼ばれる地にある島国『オリエンシャルペイ』、『百年戦争』で争っている南の大国『ブロワ王国』とそしてその隣の『ランジネット公国』、そしてオレ達が来たリーヨンがある南大陸の人間の国『エアルベア』とエルフの国『ガラドミア』、そして北の魔族領の合計10の国、領土が存在する。」

 「勿論、それぞれに王権の所持者がいて、統治を行っている。」

 

 「それぞれの国から王権を集めなければならない!!」

 

 「なぁ!王権ってなんで集めるんだっけ?」

 新がつまらなそうな顔でそう聞いてきた。

 

 「それは・・・オレ達が元の世界に戻る為だ!!」

 

 「それだけじゃないよ!!」

 オレの回答に対して未央が横から入ってきた。

 

 「未央・・・。」

 

 「この世界を平和にする為でしょ!!」

 そう付け足してきたのだ。

 

 そうだ。


 この世界ではこの王権を巡って、国同士で戦争が起こっている。この王権なんてシステム自体をぶっ壊せば、この戦争はなくなると未央は本気で信じているんだった。まぁオレにしてみれば、王権のシステムを壊したところで、人同士の争いはなくならないと思っているが。

 

 それでも、未央の平和を信じる気持ち―――この世界を平和に変えたいと思う気持ちは尊重したいと思うし、オレも全力で未央に協力するつもりだ。それが、オレの未央との一騎打ちを経た後の気持ちだ。

 

 未央は王権を手に入れる為、その魔王の力を使って侵略行為をしていた。しかし、オレと再会した以上、未央にそんなことはさせない。

 もっと別の手段で王権を手に入れるつもりだ。

 

 結論を言うと、王権を所持者から奪う必要はない。クロヴィスの国王レオ陛下の王権は一時的とは言え未央へと渡った。つまり、王権の持ち主が死なずとも王権の譲渡は可能なのだから、王様たちから借りれば・・・・いいのだ。

 

 その為にオレは、この国の英雄となった。

 

 この世界の英雄として知名度が上がれば、それだけ各国の王とコンタクトが取りやすくなり、王権を借りる機会が巡ってくると考えているからだ。

 

 そして、この世界の王権を集めた暁にアドミニストレータと接触し、そこでヤツを倒し元の世界に戻る。その間に、この世界で起こっている戦争をオレの力で止めて、平和にして見せる。そうすれば未央も納得してくれるだろう。

 

 「そうだったな・・・。」

 オレは未央の言葉に応える。

 

 「その①の提案はどうするのだ?」

 リオンが質問を投げてきた。自分の国のことだから気になっている様子だ。

 

 "クロヴィスを中心に自分たちの存在の地盤を固めていく。"

 

 確かにこれだけだと具体性に欠ける。

 

 「もう既に行ってきたと思うが、オレ達はモレク達に荒らされたクロヴィスを二か月間で元に戻した。」

 「アレで大分クロヴィスの人達から信頼を勝ち取れたと感じている。」

 「つまり、ああやってクロヴィスの国民から尊敬されたり、感謝されたりすることを目指すということだな。」

 そうオレは答えた。

 

 「私たちの戦闘の事だったら謝らんぞ!」

 「アレはお互いがお互いの信念を賭けて闘った真剣勝負なのだから!!」

 テーブルに偉そうに座るぬいぐるみ、もといモレクはそう言葉にした。どうやらクロヴィスを荒らしたのは自分達だが、戦争中の出来事なのだから謝らないと言いたいらしい。

 

 「別に今更、謝ってもらおうとも思っていないさ・・・。」

 「それにアンタらは一応、未央の命令通り国の人達を誰も殺さなかった。だからレオ陛下も未央や、アンタらの事は特に罰することはせず、オレに任せてくれたんだ。」

 

 「ふん!ならば私からは何もないさ!!」

 ぬいぐるみはその小さな口と目を閉じる。

 

 「う~~ん!!要するにこの国の人達から人気を得られればいいんだな?」

 新が何やら思いついたような顔で口を開いた。

 

 「まぁ...そうなるな。」

 

 「だったら『祭り』はどうよッ!!」

 

 「はぁ??」

 オレは新の提案に対して少しイヤそうな感じで返す。

 

 何を提案するかと思ったら祭りって...それはただお前が遊びたいだけだろとツッコんでやりたかったが、皆の前でハッキリ否定するのは会議の意味を無くすためしないことにした。

 

 「祭りってアレだろ?屋台とか縁日とかのあの祭りだろ?」

 オレは祭りの認識が合っているか確認する。

 

 「そうそう!!でっけー屋台とか、色んな出し物で騒いだりして、みんなでワイワイしてよ~!!」

 「ぜってぇー楽しいぜ~~!!」

 ウキウキな顔の新。もう奴の中では開催することが確定しているようだった。

 

 「やっぱ楽しむなら祭りっしょ!!!」

 そう言葉を残すと、新はオレの反応を伺うようにして黙った。

 

 「なぁススム君・・・"祭り"ってなんだい??」

 フラムさんがオレに尋ねた。フラムさんの話を聞くと、どうやらこの世界では縁日などの祭りの文化はないようだった。オレは丁寧に祭りがどういう物か皆に説明した。

 

 だとすれば、この世界で祭りを行えば、クロヴィスだけでなく周辺地域からも人の集客が見込めるのではないかと考えた。そして、クロヴィスで祭りを行うことで発生する興行収入を頭の中で見積もる。

 

 「その祭りってめっちゃ楽しそうだな!!」

 「進!!祭り中に私の歌を披露するって言うのはどうだろうか??」

 

 これまたリオンから突然の提案が出された。

 

 リオンが歌??

 

 聞いたことがないな。

 

 「実は私、歌が得意でな。よくクロヴィスの民や臣下に聴かせていたのだ!!」

 

 「う~~ん。リオンが歌か...。」

 祭りでの歌となるとライブ形式...ライブ会場の設置、衣装の準備、観客の誘導...他にもやらないといけないことが増えてくる。

 

 しかし、この国の姫様がみんなの前に立って歌を披露か。中々、面白そうだなと思っていた。

 

 「マリーと未央も一緒にどうだ!?」

 リオンはガシッとマリーと未央の肩を掴み、ライブ参加へと誘う。

 

 「わ、私ですか...?私、人前に出て歌うのは...ちょっと...」

 少し照れるマリー。人前で歌ったことなど無いのだから、狼狽えるのも当然の反応である。

 

 「みんなの前で歌うってことはライブだよね!?」

 「え~~めっちゃ面白そう!!もち、やるよ~~~!!」

 マリーとは対照的に乗り気な未央。

 

 「ねぇ進ちゃんもマリーちゃんの歌聞きたいよね??」

 そうオレに聞く未央。

 

 「ああ!勿論、可愛らしい女の子がみんなの前で歌を披露する!それだけでもみんなの心に勇気を生み、元気を与えることが出来るハズだ!!」

 「大丈夫!!練習すればマリーだって出来るさ!!」

 シンプルにマリーにはこれから先必要になる経験だと思っての答え。人前で何かを表現するということは誰しも最初は緊張するもの。

 

 しかし、やらなければ成長しない。だから、少し引っ込み思案なマリーにとっては荒療治かもしれないが、やってもいいかもしれないと思った。

 

 「あの...ススムさんがそう言うなら...私頑張ってみます!!」

 

 「よし!!やろう!!」

 「祭り&ライブやろうか!!」

 こうして、オレ達はクロヴィスで...この世界で初の"祭り"を行う為、動き出すこととなった。

 

 

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