表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件 ~大切な幼馴染を追いかけて異世界に来た天才少年は聖女しか使えないハズの治癒魔法の才能を開花させる~  作者: ゆに
第5章 エレベーターに乗ったら異世界に来て父親が勇者として召喚されていた件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/779

第230話 共存共栄


~神殿騎士団本部 屋上~

 

 「今...何て、言ったのかな?」

 真の一言を受けたサリオスの表情はまるで凄惨な事件現場を目の当たりにした目撃者のように引きつっている。汗がポタポタと垂れ、明らかに動揺が走っていた。

 

 「私が二度も言わなくても分かっているんだろう?」

 「私は無駄なことが嫌いなんだ...。」

 真は胸のポケットからタバコを取り出そうとするが、タバコが切れていることに気付いた。

 

 「チッ、切れてるか...仕方ない」

 

 真は吸いつくした縦88mm×横55mmセブンスターのレギュラーボックスを対象に《復元》のスキルを掛け、新品の状態へと戻し、再度タバコを取り出し火を付けた。

 

 

 「・・・・」

 再び、無言となるサリオス。

 

 サリオスは話すべきか迷っていた。あの御方は、この世界の裏側で生きる御人...。もし、この目の前の男が敵対する者であった場合、私が絶対の忠誠を誓っているあの御方の意思に反してしまう。

 

 自分の命よりも優先するべき事項。

 

 「そうか...私のことは話していないのか...。」

 真はサリオスの様子から視えざる者バニッシュマンが協力者である自分のことを話していないのだと悟る。恐らく、私とサリオスが接触する予定・・はヤツの中では存在しなかったのだろう。

 

 だから、サリオスには、協力者である自分のことを伝えていなかった。もしくは、いつサリオスを斬り落としてもいいように余計な情報を渡してはいないとも読み取れる。

 

 「安心するがいい...!」

 「私は、視えざる者バニッシュマンの協力者だ!!」

 

 実際の所、協力していたのは数年前までの話で、それからはヤツとは接触をしていないが、そこまでサリオスに伝える必要もない。

 

 この世界には、視えざる者バニッシュマンの協力者やヤツの強大な力の恩恵を受け、己の全てを捧げて崇拝する者が存在する。私は前者だが、そう言った協力者たちは私やサリオスと同じように世界の上に立つ存在であるパターンが多い。

 

 いずれも視えざる者バニッシュマンが利用価値があると睨んで、こちら側に取り込んでいる。

 

 サリオスも表向きは神殿騎士として教皇に忠誠を誓っているが、その実は全くその逆―――視えざる者バニッシュマンという恐ろしい"怪物"にその身も心も捧げているという訳だ。

 

 全く...滑稽・・な話だ...。

 

 「はっ...ハハハッ...!」

 「そ...そうか...貴公も視えざる者あのおかた下僕・・だったのか...!」

 

 下僕しもべ

 

 全く違う。

 

 真はそう思っていた。

 

 サリオスと真では役割が全く違う。

 

 真は協力者であり、サリオスは信仰者なのだ。

 

 真は協力者であるため、視えざる者バニッシュマンに全てを捧げているわけではない。お互いの理想を実現させる為に、お互いの力を利用しているに過ぎない。全てを視えざる者バニッシュマンの計画の為に捧げるサリオスとは根本的に違うのだ。

 

 しかし、ここでサリオスに対して無理に反発しても真にメリットはない。

 

 真のまずまずの目的は、息子である「天童 進」との再会。この世界で行うべき最初のタスクだと考えていた。

 「私の名前は天童 真...!あっちの世界からやって来た!貴様も知っているとは思うが勇者として召喚された!!」

 

 「天童 真...?」

 

 「どうやら聞き覚えはないようだな!」


 サリオスは本当に知らなかった。視えざる者バニッシュマンは地球での協力者である真の存在を教えていないのだから当然ではあるが...。

 

 サリオスだけではない。

 

 この世界の視えざる者バニッシュマンの協力者は皆、真の存在を知らない。逆に真は全ての協力者の基本情報をインプットしている。視えざる者バニッシュマンから協力者リストを前もって渡されていたからだ。

 

 そこが、決定的にサリオスたちとは違う。視えざる者バニッシュマンと真の関係性―――現時点では視えざる者バニッシュマンと真以外知り得る者はいないが、サリオスたち、信仰者以上の者だと推察される。


 「テンドウって言ったら、クロヴィスを救った英雄と同じ名を...」

 サリオスはすぐにそのことに気付いた。


 「そうだ...」


 「天童 進は私の息子だッ!!」


 「何だってッ!!そんな偶然があるっていうのかい...!?」


 「ホントの所は偶然かどうか怪しいモノだがな...!」

 「まぁそんなことはどうでもいい!」

 

 「サリオスよ...!兵を貸せッ!!」

 「テンプルコマンドクラスを数名所望するッ!!」

 真は一気に進のいる地に攻め込む為、サリオスへ兵を要求した。それもエリートが数多く在籍する神殿騎士の団長クラスだ。

 

 「いきなりな要求だね...!」

 「それはあの御方の御意思なのかい?」

 

 「視えざる者バニッシュマンは関係ない!」

 「私の目的の為に兵力がいる!」

 「だから貸せと要求している!」

 大胆不敵な笑みを浮かべ、サリオスへと交渉を行う。いや、交渉というには余りにも一方的な要求ではある。

 

 しかし、真はサリオスがこの要求を受ける自信があった。

 

 何故なら...

 

 「サリオス...視えざる者バニッシュマンに今の状況、そして今私が言ったことを聞いてみるがいい!!」

 

 「分かりました...少し待ってもらおうか!」

 サリオスはスッと目を閉じ、瞑想をしているかのように静かに精神を統一し、短い呼吸を何度も繰り返す。

 「・・・・」

 

 「ハイ・・・」

 

 「分かりました・・・」

 

 数分間の後、再びサリオスは目を開けた。

 

 「今...あの御方に君のことを聞いてみたよ!!」

 

 「ほう...!」

 真は咥えていたタバコを地面へと捨てる。

 

 「結論から言うと許可は出た!!君に団長クラスを貸せと!」

 

 「フッ...当たり前のことだ...。」

 

 真は視えざる者バニッシュマンの急所となる情報をいくつも持っている。この程度の要求は簡単に通ることは見越しているのだ。しかし、ヤツも抜け目のない男だ。

 

 必ず、この許可をするに当たり、お目付け役を付けてくる可能性が高い。私が裏切らないかの監視役を付けてくるように指示した可能性があるということだ。

 

 視えざる者バニッシュマンにとって、私はほぼ・・裏切ることのない協力者―――しかし、絶対ではない。

 

 用心深い奴の事だ。

 必ず何かしらの保険は打ってくるハズだ。

 

 「全く、いきなりそんな協力をしないといけないなんてね...!」

 「こっちは通常の任務だってあるんだ...そんな勝手な要求はこれだけにしてもらいたいね!」

 やれやれと言った風にサリオスは溜息をついた。

 

 「フフッ...それは悪いことをしたな...!」

 「今回で済むようには善処しよう!」


 「さぁこれから楽しい実験・・・・・の始まりだッ!!」

 真はこれから始まることを考え年甲斐もなくワクワクしていた。それはまるで小学生が捕まえたカブトムシを戦わせ合う時のような。

 そんな興奮をその胸に抱きながら、彼は彼の行く道を進む。それが例え修羅の道であってもだ...。

 

 こうして、真は神殿騎士団と共に進達のいるクロヴィスへと向かうことになるのであった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ