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第202話 天才 と 幼馴染 異世界にて 再会する

 

 私の名前は真島未央―――ちょっとホラーとかオカルト的なモノが好きなどこにでもいる普通の女子高生だ。両親はどちらも普通に働いており、家庭環境も良好、学校生活も友人に恵まれ、それなりに楽しいと思える毎日を送っていた。

 そんな私が他の人と違っている点を述べるとするなら、私には"天才"と呼ばれている自慢の幼馴染がいる。

 彼の名前は天童 進―――私はよく進ちゃんって呼んでいる。

 彼は人類には解決不能とか言われた難問も簡単に解いてしまったり、世界的に有名なプロの格闘家とかと試合しても圧勝するだとか、複雑なシステム?の構築だとか、難病指定された病気の治療法を発見しただとか、15歳ながら他人が羨むようなとんでもない名声を得てきた。

 

 

 私は、父親の仕事の都合で6歳の時に大和町へ引っ越してきた。大和町は東京の郊外に位置しており、ちょっと電車を乗り継ぎすれば、遊ぶところなど山ほどあったりする。町自体もそれなりに便利で、普通に暮らす分には困らない。

 

 町の中心にはシンボルなのかなと思うくらい高いビルが建っている。その高さは周りの建物の比じゃない。 

 そのビルが天童グループ、進ちゃんのお父さんが経営している会社だと知るのはもっと先のことだったけど...。

 

 初めてこの町に引っ越してきた日、私は何気なく近くの公園に寄ってみた。その時に進ちゃんに出会った。一人で寂しそうにブランコに乗っていたから、声を掛けたのを今でも覚えている。

 

 普通は親とか友達とかいるのに、その子は本当に一人でブランコに乗っていたの...。私も引っ越してきたばかりで友達が欲しかったんだと思う。それで一人でいる進ちゃんに声を掛けた...。

 

 「ねぇ...君、一人なの...?」

 

 「うん...」

 

 「えーと...友達とかいないの...?」

 我ながら、遠慮もなしで初対面の子にこんなことを聞いたのは、今では少し恥ずかしい...

 

 「友達って...?」

 進ちゃんは首を傾げて聞いてきた。私は初めて会ったこの少年を無性に可愛いと思ってしまった。だって、同い年くらいなのに、友達ってモノを全く知らないんだよ。引っ越す前の同い年の子ならみんな友達が何か知っていたし、その少年の無知さがちょっと可愛いなって思っちゃったんだよね。まぁちょっと不思議な子だなって気もしたけど...。

 

 「う~ん...友達ってのは、楽しいことを一緒に出来て、困ったな~って時に助け合える人...かな!」

 「あっ、そうだ!!私もこの町に来てすぐで、友達いないし、私と友達になってよ!!」

 「私、この近くに引っ越してきた未央っていうの!!」

 

 「うん...!いいよ...」

 「ボクは進...!ボクもこの近くに住んでる!」

 進ちゃんは少し怖がっているのか、緊張しているのか、声が少し震えていた。いきなり知らない女の子に友達になろうとか言われたら、少し警戒するかもしれないよね。ちょっと申し訳ないことをしたな~って思う。

 

 でも、それから進ちゃんとはよく遊ぶようになり、最初はあまり話してくれなかったこととか、よく話すようになった。

 

 彼の可愛い顔とか、無邪気な笑顔は私の大切な思い出の一部となっていった。

 

 気が付けば、私たちは小学校、中学校、高校といつも一緒にいたなぁって思う。俗にいう幼馴染ってやつだ。

 

 周りからは付き合ってんだろとかよく言われるけど、私には"恋愛"とかよく分からない。

 

 ただこれだけは言える。

 

 

  進ちゃんは私にとって"大切な人"だってこと...

 

 

~クロヴィス城 城内~

 

 「あっれ~進ちゃんじゃん!!それに新君まで!」

 「えっ、なんでここにいんの~??」

 

 私は、本気でビックリしていた。だって、この世界に居るハズの無い幼馴染とその親友がいるんだもん。そりゃ混乱もするでしょ!!

 

 それにめっちゃボロボロの身体で、服だってあんな破れてる。まるで、激しい戦闘をしていたような...。

 

 ん?激しい戦闘...?

 

 そもそもなぜ、魔王である私がここに来たのかというと、私の側近のリカントが口うるさく六魔将のモレクが危ない!って、モレクが何かピンチみたいに必死に言うからここに転移のスキルを使って来たのに...。

 

 そこにいたのが私の幼馴染とその親友だった件について...。

 

 どゆこと?

 

 未央は高速演算のスキルを使い、必死に頭で考える。

 

 まぁこの程度、スキルを使用するまでもないけど...

 

 モレクがピンチ→未央ちゃん来る→そこにいたのは進ちゃんと新君、しかもボロボロの身体=進ちゃん達とモレクが戦闘!!

 

 未央の中で答えが導き出された。そして、大体の状況は把握できたのだ。私が、エレベーターを使って異世界に来る前日に進ちゃんにそのことを話したから、彼は私を追いかけてこの世界に来てしまったのだと、そう認識した。

 

 そして、この世界で私を見つけるため、モレクと闘いを行った。しかも、もうモレクの生体反応は感じ取れない。つまりは、進ちゃん達はモレクを倒してしまったということになる。

 

 

 私は初めて自分の行いが、取り返しのつかないことになってしまったのだと自覚し、そのことを後悔した。

 

 だって、幼馴染に"殺人"を行わせてしまったということになる。そして、何より危険な状況に進ちゃん達を巻き込んでしまったということだ。一歩間違えれば、私の大切な人はこの異世界で死んでいたことになる。

 

 

 「オイッ!未央よ!奴らはお前の知り合いなのか!?」

 隣に浮いていた霊体の前魔王アリス―――アリスは困惑している未央へと問いかけた。

 

 「うん...私の元居た世界の幼馴染の進ちゃんとその親友の新君!!」

 「どっちも私にとっては大切な人なの!!」

 「それなのに、彼らがこんな危険な世界に来ていたなんて私全く知らなかったッ!!」

 ちょっと泣きそうな私を前に、進ちゃん達も困惑を隠しきれていない様だった。

 

 「未央なのか...?」

 「いや、服装とかはこの世界の物だが、聞くまでもないか...!!」

 「お前に会いたかった...!!オレはそのためにこの世界に来たんだからッ!!」

 どうやら本当に進ちゃんも私に再会したくて、私を探すためにこの世界に来たんだ。

 

 嬉しいなぁ...。

 

 私は素直にそう思った。

 

 でも、今の私はこの世界の魔王―――王権を集めてこの世界を統一して、平和にしてみせるって誓った身、それに王権を集めないと元の世界に戻れないらしい。

 

 どうしようか...どうしようか...

 

 未央は悩んだ。

 

 

 私は進ちゃん達を歓迎したい。でも彼らはモレクを倒した張本人、多分他の魔王軍の人たち―――特に側近のリカントは絶対に許可しないだろうな~。

 

 それに、私は進ちゃんに取り返しのつかないことをさせてしまったのかもしれない。

 

 どうしよう...。

 

 未央の中でそのことがグルグルと悩ませていく。

 

 

 「オイオイ!天童...本当に未央ちゃんなのか!?」

 「他人の空似ってことはねぇーのか!」

 

 「オレが見間違えるわけないだろ!!」

 「間違いなく、"未央"本人だ!!」

 「良かった...やっと会えた...!!」

 進ちゃんは泣きながらそう言っていた。本当に喜んでいるんだなって思って、私も泣きそうになった。

 

 「未央...!本当に会いたかった...!」

 「オレが来たんだ!だからもう大丈夫だ!」

 「早く元の世界...オレ達の世界に戻ろう!!」

 

 進はゆっくりと前に歩き出し、私の近くに寄って来ようとしていた。もう既にその身はボロボロのはずなのに...

 

 モレクと激しい戦闘をしたのは想像に難くない。

 

 私もゆっくりと進ちゃんの方へと向かって歩き出した。今すぐにでも抱きつきたい。だって、久しぶりの進ちゃんだよ!進ちゃんを感じられるんだよ!!

 

 だが、運命は残酷で、ゆっくりと私たちの予想だにしない思わぬ方向へと進みだした。

 

 私の魔眼が発動したのだ。発動したというよりも、以前、リカントに使ってから、単に切っていなかったのだ。電球のスイッチをOFFにし忘れていたようなモノだ。

 

 私の魔眼は見た者の"過去"を知ることができる。それも鮮明な描写として頭の中に映像とその人の強い思いが流れてくる。

 

 

   "知りたくなかった"

 

 

 私の知らない進ちゃんの過去なんて...

 

 そこの映し出された進ちゃんの過去は、私の全く知らない彼の過去だった。

 

 犯罪まがいの行為をしていた人たちへの悲惨な行為、そしてここに来るまでの彼の行動、ガリアやゲオルギ、スターリン-キルに対しての行為――――とても残酷で悲惨な光景が私の脳裏に流れた。その光景を見て、私は吐き気すら催してしまった。しかも、彼はそのことに対して全く"悪いこと"をしているなんて思っていないのだ...。

 むしろ、"正義"だと、自分は"善いこと"をしていると本気で思っているのだ。

 

 「えっ...!?」

 

 私はつい、一歩後ろへと後ずさりしてしまった。

 

 

 「どうしよう...本当に私のせい・・・・だ...!!」

 一瞬だったが、その光景を最後まで見て、全てを察した未央はそう呟いた。

 

 

   進ちゃんがこんな風になってしまったのは、本当に私のせいなんだ!!!!

 

 

 「ま、待って!!進ちゃん!!」

 

 私がそう言い放ったその瞬間、私の後ろから、大きな時空の裂け目が生まれた。

 

 そこから、5つの大きな魔力の反応、そしてそれよりも少し小さいが、いくつもの魔力反応が検知され、その姿を現した。

 

 「未央様!!ご無事ですか!!いきなりクロヴィス城まで向かうなんて...!!」

 「なぜ、言ってくださらなかったんですか!!」

 そう言って現れたのは、私の側近、リカントだった。本当に心配そうな顔をしている。そのイケメン顔が台無しになっちゃうぞ。

 

 リカントは六魔将とその配下たちを連れて、この場へと現れたのだった。六魔将の彼らはモレクと同等以上の戦闘力を持っている。モレク一人でもこんなにボロボロになっているのだ。もし彼らが本気になったら...。

 

 このまま私が何もしなければ、進ちゃん達は殺されてしまうだろう。

 

 本当にどうしよう...

 

 未央は迷っていた。

 

 自分がこれからどうするべきか...。

 どうするのが、一番の正解なのか。

 

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