第2話 異世界で生き抜くため
"弱者になるなッ!!"
"天童家の者は常に強者であれッ!!"
幼い頃から父親にそう云われ続けてきた―――
「ふうゥゥーーー!!」
進は深呼吸をする。
嫌なことを思い出した―――
スンっ―――!!
進は拳を突き出し、その場で数度鋭い打拳を繰り出す。
シャドーボクシングを行い、軽やかなフットワークで拳が空を切る。
そして、そのまま足を腰より高く蹴り上げる。
自身の柔軟性を生かし、ちょうど股から120度を維持して、暫く静止する。
「拳速も蹴速も元の世界にいた時と全く同じだ―――」
「ということは―――、重力は元の世界と同じということだな。」
念の為、ちょうどいい重さの石を自分の胸くらいの高さから落として、時間を計測する。
異世界に来たという実感はある。
しかし、自分でも驚く程、冷静だった。
もちろん最初は驚いたが、だんだんとこの風景にも慣れてきた。
周囲には昔から"天才"と呼ばれ、あらゆる分野の学問と格闘術を父親より教わった。
天童 進という男は、大抵のことは一回見たり、教わったりすれば完璧に再現できる。
それ故、方々の研究者達から学術的研究の依頼や世界レベルの格闘家と戦うことも珍しいことではなかった。
そんな"普通"の高校生とは違った生活をしていたのもこんな突然の異世界にあまり動じていない理由であった。
周りの植生も元の世界で云う密林と遜色ない。
唯一違うのが、死骸だ―――
周りにちらほら、動物の死骸や肉片がある。
誰かに貪られたんだろう。
動物だけじゃない、人間のものもある。
ということは、この辺りには人間が暮らしていて、日常的に生命の危険が付きまとっているということだ。
警戒しなければいけない場所ということだな・・・。
狂暴な猛獣がいるかもしれない―――、武器は・・・必要になるな。
進は周囲に注意を払って移動を行う。
エレベーターから降りて10分くらいが経ったくらいか
あのエレベーターの女が言っていたことを思い出した。
「何かプレゼントがどうとか言っていたよな」
「ステータスオープン」
あの女の言っていた通りに言ってみた。
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名前:天童 進
種族:人間
性別:男
Lv.1
クラス:なし
◆パラメータ◆
体力:13
筋力:15
魔力:5
物理抵抗力:5
魔力抵抗力:5
精神力:10
器用さ:20
素早さ:13
◆装備◆
武器:なし
防具:学生服(+0)
◆アクティブスキル◆
《鑑定Lv.1》《収納Lv.1》《格闘術Lv.3》《高速演算Lv.3》《料理Lv.4》《魔力制御Lv.1》
◆パッシブスキル◆
《異世界語翻訳》
◆称号◆
異世界の天才児
異世界で数多の偉業を成し遂げた少年
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ステータスオープンというだけで、自分の能力が数値化されて見える。
「まるでゲームだな―――」
「それに魔法・・・?この世界には魔法なんてあるのか―――」
ついそんなことをつぶやいてしまう進。
この世界では、どうやら自分の能力を数値として見ることができるらしい。
元の世界では、天才児と呼ばれ、様々なジャンルの大会で優勝した経歴を持つこの男。
「元の世界のできたことがこの世界のスキルとして反映されるのか。」
一体レベルいくつまであるのかは知らないが―――
格闘術と高速演算と料理がある程度レベルの高い状態なのは分かる。
元の世界でも鍛えていた分野だから。
だけどこの鑑定や収納、魔力制御に関しては元の世界には存在しなかった。
さらに異世界語翻訳?
とここであのエレベーターの女が言っていたプレゼントの意味が分かった。
「あの女、オレが最低限異世界でも死なないようにスキルを与えたってことか―――いったい何の為に?」
オレが生きていることであの女のメリットになるようなことがあるのか?
とにかくオレは、この世界のことを何も知らない。
情報が欲しい。
自分のスキルの使用方法、説明を見ていく。
《鑑定》
あらゆる物、人物、概念の説明を行うことができる。
ただし、高次元の存在等は相当のレベルが必要。
「なんだよそれ―――」
試しに使ってみた。
頭の中で鑑定を念じてみると、周りの景色に文字が表示されているのが分かった。
さらにこの鑑定の説明も元の世界の基準に合わせているように思える。
地球人用に調整がされているのか?
そんな思考を巡らせたが、結局まだこの世界についての情報が乏しいため答えなど出るはずもない。
「次は収納のスキルを使ってみるか。」
《収納》
物を収納することができる。
容量は使用者のレベルによって変化する。
Lv1の収納の場合、50立方メートルまで収納可能。
生物は収納することができないが、死体なら収納可能。
保存状態は収納した状態を維持し続けることができる。
「お~これはかなり便利なスキルだな―――」
試しに周りに生えていた草木を収納してみたが、すっぽりと手元からなくなった。
今入れたものを出したいと念じたら、取り出すことができた。
「これはあれか、○○えもんの四次元ポケットみたいだ。」
魔力制御については、まだ魔法といったものを見たことがないから全く使い方がわからなかった。
ひとしきり、自分のスキルの性能を確認し終わった。
「さて、こっちの世界に来てから一時間以上が経ったが、食料や寝床の確保をしないと。」
「それに他に生きている人間を探さないとだな―――」
と進が思考していると30メートル程、先の草陰から気配がした。