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第196話 【クロヴィス奪還編 決戦最終局面②】天才 天童 進 & 超人 唯我 新 VS 六魔将 モレク


~クロヴィス城 城内~

 

 ここまで、進たちはルルドの街で悪魔侯爵を倒し、クロヴィスまで空間転移でやってきた。クロヴィスの城下町ではジャハンナムのメルクロフ達を、城内ではスターリン-キルを打ち破ってきた。

 

 そして、ついに進たちはジャハンナムを従えていた六魔将モレクとの闘いと迎え、その闘いも佳境を迎えようとしていた。

 

 

 「紅蓮魔法:バーニングヘルフレア!!!」

 「バーニングヘルフレアは、最大級の地獄の業火!!地獄の業火はいったん燃えたら最後だ!!」

 

 モレクの放った紅蓮魔法によって、新の身体を中心に8本の燃え盛る黒い炎の柱が出現した。どうやらどれも地獄の炎のようだ。一旦燃え移ったら、灰になるまで燃え上がる地獄の業火―――そんな代物が一瞬で新を囲んだ。

 

 「へへっ...面白れェ!!」

 

 その炎のヤバさを直感的に理解した新は余裕の笑みを浮かべていた。新のそんな余裕も速攻で消え去ってしまうこととなる。

 


 8本の炎の柱は瞬く間にそれぞれが結合し、円を作り新を囲むようにゆっくりと迫ってきた。

 

 「おいおい...ウソだろ...?」

 

 ジャンプで飛んでも炎の柱は天高く伸びているため、切り抜けられない。飛んでる間にお陀仏になっちまう。

 

 当然、炎を喰らえば簡単に肉は焼け、灰となってしまう。

 

 地面を掘って、逃げる...?

 

 いや、そんな時間は存在しない...それになにより、あの炎の円柱、地面まで余裕で貫通してやがる...

 

 地面に逃げてもやられるだけだ...

 

 

 「あれ、ちょっと待って...こりゃ詰んでんじゃねーか...?」

 「いっや~ヤベェわ!!俺このまま死ぬんじゃねーかな」

 

 新の考える時間は限られている。元々考えながら闘うタイプでもないため、一つのもっとも簡単な結論に達する。

 

 「うん!よしッ!!」

 「耐えようッ!!」

 「なぁにが地獄の炎だ!!中二病かよ!!ふざけんな!!」

 「おい!モレク!俺がぜってーーテメェの炎耐えきってやるからなッ!!」

 「そこで見ていやがれ!!」

 新は大声でモレクに対して啖呵を切った。

 

 「ほうほう...なんとも勇ましいことか!」

 「しかし、貴公にその炎、耐えきることができるのか...!?」

 「それは古代竜でさえ灰にする程のモノだぞ!!」

 

 「何が古代竜だ!俺はそんなモノ見たこたねぇんだよ!!」

 「ソイツがテメェの妄想じゃねーってこと言い切れねーだろ!!」

 もうすぐそこまで迫る炎を物怖じすることもなく、新は堂々とモレクに言い返している。

 

 「さぁ新...!貴公の力、私に見せてみろォ!!」

 「貴公は英雄となり得るのか、それとも偽物なのか!」

 「私に見せてみろォォォ!!!!」

 

 

 「何が、英雄だ?」

 「ふざけているのか...モレク!!」

 「空魔法:空気操作エア・コントロール!!」

 新を囲む後ろから進の声が聞こえた。

 それまで轟々と燃え盛っていた巨大な黒炎がウソのようにぱったりと消え去ってしまったのだ...進の魔法によって...

 

 

 「新...!お前がそんなモノ耐える必要はない!!」

 「この勝負はもうオレ達の勝ちだッ!!」

 進の立っている周囲には複数の高等魔法陣が展開されていた。

 

 「何をした...!何をした...!」

 「なにをしたァァ!!!進ッ!!!!」

 

 自分の最高の魔法、いや作品とも言える地獄の業火がいとも簡単に消されたことに激しく動揺するモレク。

 「へぇ...貴様もそんな感情的になるんだな...」

 

 「なぁに簡単なことだ...」

 「地獄の炎と言っても炎であることには変わらない...」

 「だったら周囲の空気...酸素をなくしてやればいいだけだ」

 

 「空気をなくすだと...?」

 モレクが今まで闘ってきた英雄を自称する者にこのような方法で自身の地獄の業火を消す者がいただろうか...?いや、存在しなかった。

 

 地獄の業火を受けた者は全身に燃え広がる前にその部位を切断するか、ひたすら避ける等で対抗してきた。

 

 それなのになんだ...?周囲の空気をなくす?

 

 意味が分からない...

 

 ヌバモンドは魔法という技術が存在する代わりに地球よりも遥かに科学技術が遅れている。実生活では魔法さえ使えれば困ることはないからだ。

 

 それ故、なぜ炎が燃えるのかを考える者も存在してこなかったのだろう。

 

 だから、周囲の酸素をなくしたから炎が消えるなどまるで手品でも見ている感覚なのだ。

 

 「新...大丈夫か...?」

 ギリギリのところで新には黒炎が当たっていなかったようだ。

 

 「天童...」

 

 「助けんのがおせーよ!!!」

 「もう少しで俺も焼肉になっちまうとこだったじゃねーか!!」

 

 新は感謝するどころか寧ろ少し怒っているようだった。

 

 「なんだ、全然元気そうじゃないか!?」

 「白魔法:ヒール!!」

 オレは一応治癒の白魔法を掛けてやる。

 

 「おお、何だか身体の痛みが消えてきたぜ!」

 「サンキューな!天童!!」

 怒ったかと思ったら、子供のように喜ぶ。

 この唯我新という男は、コロコロと感情が変わる本当に見ていて飽きない奴だ。

 

 「さぁモレク!!決着を付けようか!!」

 オレは神聖剣セイクリッドブレードをモレクに向ける。

 

 「進よ、この短時間で貴公は何を見て、何を感じた...?」

 「たった数分で貴公の中で恐ろしいまでに"色"が変わっている...」

 「まるで、数十年分の修行をしてきたようなそんな感じだ!」

 

 「面白いぞ...!面白い!」

 「貴公のような者は初めてだ!!」

 「いいだろうッ!貴公らと最後の決着を付けようぞ!!」

 モレクは地獄より深い愛ゲヘナスカントに満ちた斧ラブリュスを振り上げそう言った。

 

 「いくぞ!!」

 「新!!力を貸してくれッ!!」

 オレはモレクに向かって駆けだした。この時のオレの視えている世界は今までとは全く違ったモノだった。左目が疼く、恐らく開眼した魔眼の力だろう...

 周囲の全ての事象がよく"視える"―――頭に全ての情報がスッと入ってくるような、物事がゆっくりと進む、まるで神にでもなったかのようなそんな感覚が進を支配していた。

 

 「どうやら、何か掴んだみてぇだな...!天童!」

 「それでこそ俺が認めた男だ!」

 

 「俺は命令されんのはイヤだが、"頼み"ってんなら引き受けなくもねーぜ!!」

 新はニヤリとした表情をしながら、進の後へと続いた。

 

 オレの神聖剣セイクリッドブレードとモレクの地獄より深い愛ゲヘナスカントに満ちた斧ラブリュスが再び交差する。

 

 「進...貴公の左目...もしかして"魔眼"か!?」

 「魔眼を習得してなお、"魔"に目覚めぬとは貴公は本当に不思議な存在だ!」

 「ふむ、澄んだ碧...いい"色"だ!」

 

 「オレには貴様の動きがゆっくりに見えるぞ!モレクッ!!」

 「天童流剣術:三日月!!」

 恐ろしいスピードの剣圧をモレクへと放つ。狙いはモレクの武器を持つ腕だ。ガランと音を立て、モレクの地獄より深い愛ゲヘナスカントに満ちた斧ラブリュスが地面へと落ちる。続けて、ボトッとした鈍い音が聞こえた。モレクのモレクの地獄より深い愛ゲヘナスカントに満ちた斧ラブリュスを持っていた方の手首が切断されたのだ。

 

 

 「ッ――――!!!」

 

 

 天童流剣術:三日月は天童流最速の剣技、加えてこの"魔眼"がある。モレクの手首を斬り落とす"程度"のことなど今のオレなら容易い。この目はそれほどまで素晴らしい。

  

 そしてまだ、オレの追撃は止まらなかった。


 「天童流剣術:十六夜いざよい!!」

 天童流剣術:十六夜いざよいは、向かい合った敵の全身を全て満遍なく平等に斬りつける技だ。そうして相手の行動を鈍らせ、じわじわと行動不能へと陥れる。

 

 オレは動揺するモレクに対して目にも止まらぬスピードで太刀筋で攻撃する。

 

 「グオオォォォォ!!!!」

 

 まるで猛獣の鳴き声のような声が鳴り響く。

 

 「クッ、腕が...腕が再生しない!!」

 「まさか進、貴公も新と同じ力を得たというのか!?」

 

 「ああ、その通りだ!!」

 

 

 「ハハハハ!そうか、そうか!」

 「貴公らは本当に楽しませてくれる!」

 追い詰められているのになぜか嬉しそうなモレク。

 

 「止めだッ!!」

 「天童流剣術:繊月!!」

 進は神聖剣セイクリッドブレードを両手で持ち、腰を落とした状態で、上体を勢いよくモレクに向けた。そして神聖剣セイクリッドブレードを右手に持ち鋭い突きをモレクへと放つ。その突きは寸分違なうことなく、モレクの心臓を貫いた。

 

 柔らかい感触がオレの手を伝わる。モレクの胸からは青い血液がドロドロと流れ出す。

 

 「フフ...心臓を貫けば勝てると思ったか...?温い...温すぎるぞォ!!」

 「私の"愛"はこの程度では無いッ!!この肉体などとうに超越しとるわッ!!」

 

 「貴様はやはり本当にバケモンだな!!」

 オレは少し笑みを浮かべながら言い放った。オレは剣を引き抜こうとするが、モレクに剣を掴まれ、抜けずにいた。

 

 「逆に貴公の動きは封じさせてもらう!」

 「さぁ全ての地獄の頂点!貴公に耐えられるか!?」

 「地獄道:無限地獄!!!」

 

 モレクの眼前に何重にもなった魔法陣が現れ、その瞬間オレの視界は真っ暗になった。

 

 「どこだ...?ここ?」

 どこだか分からないところにオレは来てしまった。どこだか分からないが、一つだけ分かる。オレは真っ逆さまに落ちているということだ。

 

 身体に力は入らない。

 

 魔法も使えない。

 

 剣もない。

 

 敵はどこだ...?オレは誰を斬ればいい...?

 

 六魔将モレクは、無限地獄と言った。ここが8つあるという地獄の最後の地獄―――無限地獄なのか?

 

 永遠に終わることのなく、落ち続ける"地獄"―――それが無限地獄、オレはいつまで落ち続ければいい...?

 

 一日...?一週間...?一年...?

 

 それとも数十年...?

 

 

 言い伝え通りなら、2千年落ち続けると言われる、最悪の罰それが無限地獄だ。ならオレの身体はどうなる?そんな時間オレには待てない。

 

 オレは...

 

 オレは...

 

 耐えなくてはならないのか...?その悠久の時間を...

 

 そう覚悟したその瞬間、どこからともなく新の声が聞こえた。

 

 

 

 「天童...!オメェがそんなモノ耐える必要はねぇ!!」

 新の声が聞こえたと思ったら、オレの視界は色づいた。なんと無限地獄から戻ってきたのだ。

 

 

 「何だと...?」

 「新...貴公が何故、私の無限地獄を破れる!?」

 

 オレが正気を取り戻すとオレの背中に右手を当てている新がいた。まだ、モレクの心臓にはオレの剣が刺さっている。どうやら、ほんの一瞬の出来事だったらしい。

 

 「あぁテメェの作る地獄なんざ本当の地獄じゃねーからだよ!!」

 「偽物だったら、俺なら"ぶっ壊せる"!!ただそれだけだッ!!」

 唯我新に精神支配系のスキルは効かない。新の持つ《超人》のスキルは、自身に対する絶対的な暗示を施すことによって、他の精神支配系のスキルを無効化することができる。相手の作り出した幻想空間など、新にとってはおもちゃの城を壊すようなものだ。

 

 

 この瞬間、モレクは悟った。この者たちは本物だと、本物の英雄になり得る存在だと...

 

 だったら、自分も本気で立ち向かわなければいけないと...

 

 モレクは圧倒的な力でこの二人を叩き潰すとそう決めた。

 

 

 「...転移!!」

 心臓を貫かれたモレクは転移のスキルで10メートル程、後ろへと移動した。

 

 モレクの全身は既にかつてないほどダメージを受けていた。普通なら超速再生で傷口が再生するのだが、彼らの扱う闘気を纏った攻撃には再生を阻害する効果がある。それにこちらの攻撃をお互いがお互いでカバーし合い、解決してくる。それをされたら、モレクの持ってるスキルなど、ほとんど通用しなくなる。

 

 そして、ああは言ったが、心臓を貫かれて無事なわけはない。もうすぐこの肉体は"死"へと向かう。モレクはそのことに気が付いているのだ。

 

 「フッ..."一人"なら勝てた...一人なら...」

 モレクはそうボソッと呟く。

 

 「六魔将モレク!!貴様はもう終わりだッ!!」

 

 

 モレクとの闘いが最後の刻を迎えようとしていた。

 


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