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第176話 超人 唯我 新 VS ジャハンナム メルクロフ


~クロヴィス城 城下町城壁~

 

 「へへッ...テメェとこうして再戦できるなんてなぁ...!」

 「あの時の痛み、何倍にもして返してやるぜ!」

 新はファイティングポーズを取り、メルクロフと向かい合う。

 

 「フフッなんだ、結局貴様は先の戦いのことを覚えているじゃないか!!」

 

 闘いの前の妙な静けさが辺りを包む、互いの距離は約10メートル...

 

 先に動き出したのは新の方だった。

 

 新の左フックがメルクロフの顔面を狙う。それを奈落の盾アビスシールドでガードする。さらにワンツーのジャブからの右ストレートのパンチが炸裂する。

 

 

   "砕け散りな!!!"

 

 新はそう念じた。新の超人スキルは念じた物理的結果を導き出す。新が砕けろと念じてパンチを放てばそれは砕ける。どんな物理的に硬い材質を使っていようが、魔法で強化していようが砕ける。新の《超人》のスキルはそういった理想を実現することができるスキルなのだ。

 

 しかし、新が砕けろと念じたパンチを受け止めたメルクロフの盾には、傷一つ付くことはなかった。

 

 「へぇ~俺が砕けろと思ったモノが砕けなかったのは初めてだぜ...」

 

 

 奈落の盾アビスシールドに傷が付かなかったことに対して、新は動揺一つ見せていない。

 

 「先の戦いでは動揺したが、貴様のそのスキルは要するに念じたことを力に変えるモノだろ?」

 「ならば、こちらも邪念の宿った盾を用意してやればいいだけのこと...!」

 「この盾は、万の魂を生贄にして、その血を飲ませ続けて作られたと言われている...その魂が怨念となりこの盾に力を与えているんだ...」

 「貴様程度の思いでこの奈落の盾アビスシールドの鉄壁の守りを崩すことは決してできないッ!!」

 

 

 「その邪念とやらが俺の気合に勝ってるとでも言いてぇのか!!」

 新はここへ来て、初めてイラついた表情を見せる。自分にとって、他人から舐められることを何より嫌ってきた彼にとって、今のメルクロフの発言は怒りのスイッチとなっていた。

 

 「そうだッ!所詮貴様は薄汚い只のガキ!そんな者、この私の敵ではないッ!!」

 「誇り高き戦士である私の覚悟を超すことなど決してありはしないッ!!」

 

 「あぁん?さっきから聞いてりゃ好き放題言ってくれるなぁ!!」

 「否定ばっかりしやがって、そんなに俺の覚悟がテメェを超えられねぇ―だ??」

 「だったら見せてやるよ!!男の"覚悟"ってヤツをな!!」

 畳みかけるようなメルクロフの発言に新はブチ切れた。新はその場に羽織っていた学ランを投げ捨てる。

 

 

 新は一気にメルクロフの前まで駆け、そしてジャンプする。

 

 「オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!」

 

 メルクロフの盾を前に新は目のも止まらぬスピードで高速ラッシュを放つ。通常の魔族ならまず間違いなく戦闘不能になるレベルのラッシュだ。

 

 メルクロフはこれを自身の奈落の盾アビスシールドで受ける。

 

 「完璧な障壁パーフェクトガード!!」

 

 盾を構えるメルクロフの全方位に平面のバリアのようなモノが展開される。メルクロフの完璧な障壁パーフェクトガードは、物理攻撃、魔法攻撃、精神攻撃全てに対して、防御する効果がある。それを発動している間は盾が壊れない限り、メルクロフや周囲のモノは一切の攻撃を受けることはない。

 

 つまり、新が奈落の盾アビスシールドを壊さない限り、メルクロフには傷一つ付けることができないのだ。

 

 メルクロフの守りはまるでとどまることを知らない砲撃を受け続ける要塞のように見えた。全く、傷一つ付かないメルクロフの堅牢な守り―――周囲の魔族たちは固唾を飲んで、その光景を見守る。

 

 

 「貴様は学習能力のない男だ!!」

 「ユニークスキル:上限無しの反撃アンリミットカウンター!!」

 

 メルクロフの盾が受け止めた衝撃全てが新の身体を電撃のように伝わる。ドラコミシア王国ではこの衝撃で新を戦闘不能にまで追い込んだ。

 

 「グアアアアアァァ!!!!イテェな...イテェよ!!」

 

 全身から噴き出す血液、震える身体...しかし、新の闘志は消えていなかった。

 

 「何だと...!?」

 

 メルクロフは動揺した。ドラコミシア王国では上限無しの反撃アンリミットカウンターで倒れたはずの新が今回の戦いでも前回と同程度...いやそれを上回るダメージを受けながら、立ち続けているのだ。

 

 「ウオオオラアアアァァ!!!!!」

 

 新の渾身の右ストレートがメルクロフの盾に放たれる。

 

 「チッ、ガキが...」

 

 メルクロフの奈落の盾アビスシールドに傷はないが、今日一の新の一撃にメルクロフは後方にスリップしてしまう。地面にはメルクロフの靴と地面の摩擦で生じた熱で真っ黒に焼けていた。

 

 

 「貴様、そのダメージでよく立っていられるな...」

 

 「あぁ?弁慶の立ち往生って知ってか...?いや、まぁここそーいや別の世界だったから知らねーか!」

 

 「何のことだ...?」

 

 「俺のいた世界で昔、弁慶っつー奴がいたんだが、ご主人様守るために無数の武器をぶっ刺されながらも経ち続けたって伝説があんだよ...!」

 

 新は頭をボリボリと掻き毟りながら説明を続ける。

 

 「まぁ何が言いてーかつーと...」

 「覚悟が肉体を凌駕することもあるっつってんだよ!!」

 

 メルクロフ優勢かと思われた戦いだったが、新の異常な執念によって、まだまだ結末は誰にも予想できない。そんな未だ決着の見えない戦いを二人は続けるのであった。

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