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第172話 スターリン-キルの過去② ~人体魔改造~


~スターリン-キル 過去編~


 私は、魔獣たちを全力で殺した。何度も何度も殺されそうになりながら。不思議と使ったことのない武器も手になじんで上手く使えていたの。だから、明らかに自分よりも強い魔獣にも何とか対抗することができたんだと思うの。

 

 そんなことをしている内、あることに気が付いたの。その様子を上から見ている人たちがいたの。微動だにすることなく、でも顔は透明の板に阻まれて見えなかったの。

 

 いつも戦闘が終わる度に部屋に戻ると、子供たちの数が減っているの。魔獣との戦闘で殺されちゃったんだと思うの。

 

 そんな生活をしていると徐々に最初は200人くらいいた子供たちの数は100人...50人...10人とどんどん減っていったの。そんな折、一人の子供がこんなことを言い始めたの。

 

 「なぁみんな...こんな生活もう嫌だろ!!」

 「こっから、みんなで脱出しないか!!」

 

 「そんな、ことできるのか...?」

 

 「私は賛成よ!!もうこんな生活イヤ!!」

 

 「僕も賛成だ!!もう嫌なんだ...仲間が...死んでいくのは...!」

 

 子供たちは皆逃げたいと意思を固め、ここから脱出することを選択したの。

 

 

  "でも私はそうは思わなかった。"

 

 この頃には、私は誰よりも魔獣を倒すのが上手くなっていたと思うの。むしろ魔獣を倒すことが楽しくなっていたの。それにここの施設の人たちは魔獣を上手く倒すと褒めてくれたの。

 特に良く褒めてくれた黒い洋服を着た、少し中年くらいのオジさんがいたの。その人はいつも上で私たちの戦いぶりを見ていた人で、いつも魔獣を瞬殺したり、上手く急所を見つけ、少ない手数で殺した時には、ご褒美にキーホルダーやお菓子をくれたりしたの。この時の私はそれが嬉しくて嬉しく堪らなかったの。

 この前のレッドドラゴンの心臓を一突きで殺した時には、それは嬉しそうに褒めてくれたの。そして、私が喜ぶように星形の綺麗な音の鳴る髪飾りをくれたの。

 

 オジさんから貰った髪飾り―――みんなには内緒で付けていたりしたの。でも普段は貰ったことはヒミツにしていたから着けていなかったの。

 

 私はこの生活が好きになっていたの。ここの施設の人は、私の活躍を望んでいる。私を褒めてくれる。存在を認めてくれる。生まれてからそんな経験がなかった私には最高の体験だったの。

 

 

  "だから、ここから逃げ出そうとする他の子たちを許すことができなかったの..."

 

 

 私は、表向きは子供たちの脱走に賛成しつつ、その脱走計画をオジさんに漏らしたの。私は他の子たちを裏切ったの...いや、最初に裏切ったのは向こうなの...。だから私は正しい行為をしていると今も確信しているの...。

 

 そしたら、オジさんは何て言ったと思うの...?

 

 

  "そんな悪い子は一人残らず殺しなさい..."

 

 

 もしいう通り殺したら、オジさんはどれだけ喜んでくれるだろう。

 私はオジさんがどれ程褒めてくれるか、喜んでくれるかそのことだけを期待に胸膨らませていたの。

 

 私はそのオジさんのことが好きだったの。

 

 だからオジさんの言う通り、一人ひとり殺すことに決めたの。

 

 オジさんから、殺すための道具は貰ったの。毒薬、ナイフ、麻酔針が渡されたの。これを使って、一人ずつ殺しなさいって...。オジさんが笑顔でそう言ったの。

 

 それを渡された、毒薬をいつもの運ばれてくる食事に盛ったの。それを最初に食べたのは、いつも一番早く食事をとるのは003番と055番、それと145番だった。こいつ等はいつも三人一緒にいるの。いつも私の毛布を取ってくるクソガキなの。

 

 コイツ等が毒で苦しんで絶望に歪むその顔は、最高だったの。

 

 「だ、大丈夫!?三人とも!!ねぇねぇってば!!」

 

 毒を盛られ、死んだ三人の元へといち早く駆け付けたのは、066番だった。コイツはみんなをまとめたがるおせっかいな性格だったの。だから、背後から忍び寄ってナイフで頸動脈を掻っ切ってやったの。生暖かい鮮血が私に降りかかって気持ちがよかったの。

 

 返り血をたっぷりと受けた私は、他の子たちが集まっているところまで行ったの...。

 

 「どうした!?122番!!」

 「何があったんだ...!?」

 いの一番に心配して駆け寄ってきたのは、019番。コイツは私に気があるの。だからこう言ったの。

 

 「085番に殺されそうになったの!!助けてッ!!」

 

 何も知らずに戻ってきた085番と019番は喧嘩になったの。私はそれを内心ほくそ笑みながら見ていたの。喧嘩している019番と085番とその光景を止めに入った033番、172番をどさくさに紛れて、麻酔針を刺して動きを止めたの。

 

 流石に不信感を持った、最後の一人の100番は私を警戒していたの。コイツは勘がいいの。だから、私がコイツ等を殺していることに気が付いたのかもしれないの。

 

 私はナイフを服の中に忍ばせ、ゆっくりと100番に近づいた。

 

 「おい!!122番!!そこで止まれ!!」

 

 「どうしたの!100番!私コワイの!!」

 

 「来るなッ!それ以上こちらへ!!」

 

 100番との距離が2メートル程となった瞬間、私はナイフを服から取り出し、一気に距離を詰めたの。突然のナイフに100番は動揺していたの。だって、いつも魔獣を倒した後には武器は施設の人たちが必ず回収するんですもの。武器なんて誰も持っているハズがない。その先入観が100番の判断を鈍らせたの。

 

 私は100番の心臓を一突きしたの。簡単に絶命したの。

 

 「100番の顔は大して変わっていないの...私と同じで力と引き換えに表情を失っているですの...」

 

 施設の子たちは魔導式の影響で力を得た子ほど、表情が失われているの。私は魔導式の影響で大きく力を得ていたためその分一番表情を失っていたの。

 

 残りの麻酔針で動かなくなった4人もナイフで殺したの。こうして私は他の9人の子供を殺したの。

 

 そうしたら、部屋の扉が突然開いて、オジさんが訪ねてきたの。オジさんはどこからかこの一部始終を見ていたの。

 

 「いや~素晴らしいよ!122番、よく頑張ったね!」

 拍手をしながら、オジさんは近づいてきたの。

 

 「オジさん!私頑張ったの!!だからいっぱい褒めてッ!!」

 

 「うん!ホントに頑張った!いい子だよ122番は...!!」

 オジさんは全身血まみれの私を抱きしめて、そう言ってきたの。

 

 「うん!うん!私すごいでしょ!!わたし、オジさんのためにこいつ等殺したの!!」

 「とってもとっても弱くて弱くて話にならなかったの!!」

 

 「うん、うんそうだねそうだね...122番はやればできる子だ!!」

 

 オジさんは私の頭をいっぱいいっぱい撫でてくれたの...。

 

 でも突然声のトーンが変わったの。

 

 「でも、122番君はどうやら"魔"の力に目覚めてしまったみたいだね...」

 「"魔"に目覚めてしまった君はとんだ"失敗作"だ!!もういらない!!」

 

 「えっ...!?」

 私はオジさんの纏う雰囲気が変わったことに気が付いたの。

 

 私はオジさんから離れようとした、でもその瞬間いつも刺しているようなオジさんたちが"注射器"という道具を私の首元に刺してきたの。

 

 それから、私の意識はどんどん薄れていったの。最後にオジさんの元に駆け寄ってくる男が一人いたの。多分オジさんの部下だと思うの。

 

 「社長!大丈夫ですか!?」

 「おひとりでこいつ等に近づくのは危険です!!」

 

 「危険だと?私に言っているのかね?君は...!?」

 オジさんは、胸元からたばこを取り出し、ライターとか言う道具で火をつけていたの。

 

 「あ、いえ、あの...」

 

 「それより、君、コイツ...122番なんだが、どうやら"魔"に目覚めてしまったようだ」

 「戦闘センスや魔力適正の確立には成功していたんだが、どうやら殺しに快感を得たことで"魔"に目覚めてしまったようだ...」

 「一番成功する可能性があると期待していたのに...」

 「チッ、全く、"魔"に目覚めてしまうとはとんだ失敗作だ...無駄なことをしてしまったか...」

 

 「それで、コイツはもういらないから、魔族領にでも捨ててこいッ!」

 

 「は、ハイ社長!!」

 

 

 (待って、オジさん!私頑張ったよ!言うとおりに頑張ってみんなを殺したよ!!)

 

 (ねぇ!だからもっと褒めてよ!いらないなんて言わないでよ...)

 

 (私は"失敗作"なんかじゃないの!!)

 

 (ねえってば...だから...だから...)

 

 

 

   "私を捨てないで...!!!!!!!!"

 

 

 気が付いたら私は、漆黒の荒野、暗黒の大地、魔族領に投げ捨てられていた。その時、偶然私のことを見つけたモレク様に保護されたの。

 この時、私はすでに魔族に変わっていたの。どうやら最後にオジさんに打たれた薬が決め手だったみたいなの。

 

 私を見つけたモレク様は、私の首につけられた金属に刻まれた記号(K122)と手に握り締めていた星の髪飾りを見て、私のことをスターリン-キルと名付けてくださったの。

 

 それから私の第二の人生がスタートしたの。それは楽しい毎日だったの。モレク様やジャハンナムのみんなは優しかったの。ここが本当の居場所だと心の底から思えたの。

 

 

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