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第171話 スターリン-キルの過去① ~人体魔改造~


~クロヴィス城 城内~

 

 「リオン!ケガはないか...!?」

 英霊たちと闘っていたリオンを気遣い、声を掛ける。

 

 「進か...私は、大丈夫だ!!」

 そうは言っているが、身体のあちらこちらにケガをしているようだったので、白魔法で治療は行っておいた。キルとの闘いも一旦は終了した。

 

 キルはその場に膝をついていた。よほどオレ達に負けたことがショックだったのだろう。

 

 「進、勝負には勝ったんだから、早く王の間まで行こうッ!!」

 リオンはこう言ってきた。しかし、オレは全く別のことを考えていた。

 

  "ケリはまだ着いていない..."

 

 オレは再び、キルの前へと立った。

 

 「何の用ですの...?」

 「私は敗けましたの...!さっさとモレク様の所へ行って殺されるがいいですの!!」

 キルはオレの方へと顔を向ける。

 

 「いや、貴様には聞きたいことが在ってな」

 「その魔導式はどこで組み込まれた!」

 明らかに人道に反するような改造、オレは他人にそんな改造を施す様な奴を許せなかった。だから、キルには詳しいことを聞かなければいけないとそう考えていた。

 

 「そんなに、この腕のことが聞きたいんですの?」

 「まぁモレク様に殺されるんですもの...冥途の土産にはちょうどいいかもしれないの...」

 こうして、キルはポツリポツリと自身の過去について話し始めた。

 

~スターリン-キル 過去編~

 

 

  "元々は私は人間でしたの..."

 

 下等で下劣で劣等な種族である人間。私、スターリン-キルはそんな種族の一人だったの。今にして思うと身震いが止まりませんの。

 

 真っ白な天井、真っ白な壁、真っ白な床のだだっ広い室内――――私が物心ついた時いたのそんな部屋だった。私がいた部屋にあるのは真っ白いベッドのみ。お風呂やトイレは部屋に備え付けられていたけど、それ以外は本当に何もなかった。

 

 朝昼晩、毎日その施設で働いている者であろう誰かが食事や衣類を運んでくるの。その者は見たこともない顔まで隠れた厚手の鎧のような服を着た恰好をしていたの。そして、晩御飯だけは他と違って、食事を運んでくるのと一緒に見たこともない薬を一杯運んできたの...。そして手を出すように言われ、私は言われるがままにいつも手を差し出すの。運んできた人は私の手を取って、何か液体が入った針を私の右手に刺して、液体を注入してくるの。

 

 (何だと...!?それって、注射のことか...?それに顔まで隠れた厚手の鎧みたいな服ってそれ防護服のことじゃ...おいおい、この世界にそんな技術は存在しない...!少なくともオレがガリアの部屋から見つけた薬学、医学書にはそんな記述は一切なかった...とすると...それって)

 

  "まさか、スターリン-キルは元々地球生まれの人間だとでも言うのか...!?"

 

 

 進は、キルの話を聞きながら、そう推察していた。いや、それはもはや確信すらしていた。

 

 (アドミニストレータの力を使わずとも、この世界と元の世界を行き来できる...?)

 

 オレはその可能性について、頭をフルに回転させ考え始めた。

 

 キルは話を続ける。

 私はそんな生活に何の疑問も抱かなかったの。何せ、私は生まれてからそれまで、その白い部屋から出たことが無かったから。

 

 そんな、日が何年も続いたある日私は初めてその白い空間から廊下に出されたの。勿論、そのいつも食事を運んでくる人に連れられてだけど。

 

 私が次に連れられた部屋は逆に真っ暗な空間だったの。そこには真っ黒なローブを纏った魔導士たちが何人もいたの。そこで私はこの両腕の魔導式を刻まれ、両腕の一部として組み込まれたの。

 

 魔導式を組み込まれた時の激痛は今でも忘れないの。生きていることを後悔するほどの激痛だったの。何時間にも及ぶその行為、終わったころには私は気絶していたの。

 

 

  "その日私は、力を得た代償に表情を失ったの。"

 

 

 そこから何か月、もしかしたら、一年くらいはその激痛に耐える日々だったの。早く楽になりたいと思っていたの。でも自殺するという発想はなかったの。そもそもその空間は自殺しようとしてもできるような空間じゃなかったの。

 

 そうして、次第に痛みも引いた頃だったの。私は再び、施設の人に別の部屋...と言うよりも施設に連れてこられたの。そこにいたのは私と同い年くらいの少年少女たちだったの。

 

 200人くらいはいたの。みんな私と同じように両手に魔導式を組み込まれていたの。

 

 それから、私を含めたその少年少女たちは、一緒の空間で生活をさせられたの。

 

 その部屋も私が元居た部屋と同じように真っ白な部屋だけど、もっともっと大きかったの。それに天井も高くて、私達が何人も肩車しても決して届かない位天井が高かったの。

 元の部屋と違うところはそれだけじゃなくて、部屋の天井付近は透明なガラス張りになっていたの。

 

 でもそのガラスは向こう側が見えないようになっていたの。そんなガラスこの世界じゃ見たことないの。

 

 「122番!!」

 

 この部屋にいる子供たちはみんな、番号を与えられていたの。首元には不思議な金属で私たちの番号が刻み込まれていたの。

 私は122番って呼ばれていたの。

 多分子供たちに1~200番を振り分けていたんだと思うの。

 

 定期的に子供たちは一人ひとり、呼ばれるの。そして、呼ばれた子供たちは、一人ひとり施設の人に連れられ、ある場所に連れられるの。

 

 

  "そこは地獄だったの"

 

 闘技場のような場所だったの。そこに入る前に子供たちは武器を選ばされる。そして、手に持った武器を使って、その闘技場のような場所で魔物や魔獣と闘わされたの。その魔獣たちは、私たちを餌としか見てないの。

 勿論、魔獣たちは私たちを全力で喰らいに来るの。それを何とか手にした武器で殺すの。そうするしか私たちが生き残る術がなかったの。私は全力で魔物たちを倒していったの。

 

  "生き残るために..."

 

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