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第168話 光と影


~クロヴィス城 城内~

 

 目の前のスターリン-キルは両手を前に向かい合わせて、魔力を込めていく。

 

 「闇の力を感じる...!いや、影の波動か...!」

 闇黒の瘴気がキルの前に渦巻いていた。

 

 「影魔法:影の観察者シャドーゲイザー!!」

 

 キルの手から漆黒の塊が中央広間の至るところに貼り付けられていく。

 

 「何だ、禍々しくて不気味な気配を感じる...!」

 

 辺りは暗くなり、黒いペンキに塗りつぶされたように室内は黒い物質に覆いつくされた。

 

 「貴方はもう逃げられないの」

 「私の影魔法からは!」

 

 「逃げるだと...?」

 「オレを誰だと思っている...オレは"天才" 天童進だ!」

 「逃げることなど決してしないッ!!」

 オレは全身の感覚神経をフルに研ぎ澄ます。気配察知のスキルにはまだ反応がない...。だが、奴の能力は必ずオレ達に危害を加えるモノだ。


 1ミリも油断するな。オレはそう心に刻んだ。

 

 「あら、大口叩くわりに掛かって来ないの?」

 キルはフフフと不気味に笑い声をあげる。

 

 「そんなに動かないなら、こちらから行くの!」

 キルはそう言い、収納のスキルからこれまた自身の身長の2倍はある巨大なハンマ―を取り出した。そして、キルは手に持ったハンマーをその場に叩きつけた。

 

 「今度は、ハンマーか...」

 オレが呟くと同時に、オレの背中に強い衝撃が巻き起こる。

 

 「グッ!ハアッ!!」

 

 オレは、その強い衝撃に思わず吐血してしまった。一体何が起こった。全く気配察知には引っかからなかった。まさか、奴がハンマーを地面に叩きつけた衝撃がオレに襲ってきたとでも言うのか...。オレは地面を見つめ、今何が起こったのか頭の中で高速で解析を開始した。

 

 「今の衝撃はこの影によるものか...」

 

 「あら、察しがいいの!」

 「この空間は今全て私にリンクしている、つまり全方向から貴方に攻撃することができる。」

 

 「影魔法:影化シャドーコンバーション!!」

 

 キルの持つハンマーは色が変色し、途端に漆黒の色へと変わってしまった。そしてキルは手に持ったハンマーを地面へと手放す。すると、まるで手品のようにハンマーは地面と同化した。それはまるで熱いアスファルトの上にある氷が溶けていくかのようだった。

 

 「何をしている...?」

 オレはキルの行動の真意が掴めずにいた。

 

 「その行動に何の意味があるんだ...」

 

 「今に分かるの!」

 

 そう言い、彼女は両手いっぱいにナイフを持ち、こちらに投げてきた。

 

 「今度は投げナイフか!」

 「そんなものがオレに通用すると思っているのか...!」

 

 オレは、こちらへと飛んでくるナイフを全て払いのけようとした。しかし、その瞬間、またもやオレの身体の腹部を強い衝撃が襲った。

 

 「クッ、グハァ!」

 内臓にダメージを受けたようで、吐血が止まらない。

 

 「ハァ...チッ、」

 

 目の前に無数のナイフが飛んでくる。これは躱しきれない。オレは両手を前に出し、頭をガードするが、太ももと両手にナイフを刺さってしまう。

 

 「クッソ、イテェ...!」

 

 「白魔法:ハイヒール!」

 オレは刺さったナイフをすぐさま引き抜き、ハイヒールによる治療をする。

 

 「まさか...今のは黒い物体の中にあるハンマーがオレを攻撃してきた...?」

 オレはそう推察していた。だとしたらかなり危険だ。奴のあの影魔法で大量の武器を影化されたら、オレは全方向から常に攻撃され続けることなる。

 

 「ビンゴなの!!」

 

 「影化シャドーコンバーションした武器はこの空間を覆いつくしている影の中にあって、私の意のままに操ることができるの!!」

 「さ、ら、に...私はまだこんなにたくさあーん武器を持っているの~!!」

 キルはそう言い、収納のスキルから大量の武器を見せびらかす。刀、サーベル、槍、ナイフ、ジャマダハル、かぎ爪、チャクラム、クナイ、メイス、弓矢、ジャベリン、ロッド...etc

 和洋中、古今東西の武器大百科みたいなラインナップの武器を次々と取り出し、地面へと投げ込んでいく。

 それらの武器は当然、先ほどと同じようにドロドロと溶け、地面と一体化していく。

 

 オレは不味いと思い、収納のスキルから神聖剣セイクリッドブレードを取り出し、キルへと斬りかかった。

 

 「やっぱり、そう来るの...!」

 「でも、もう遅いの!!」

 

 「影魔法:影の饗宴シャドーパーティー!!」

 

 部屋中全方位、オレを狙って黒い武器が襲ってきた。見えない刃、見えない凶器がオレを襲う。オレに攻撃をする一瞬だけ、影から姿を現す凶器たちをタイミングよく、オレは神聖剣セイクリッドブレードで弾いていく。オレは神聖剣セイクリッドブレードで一つ一つの影を切り裂いていくが、如何せん数が多すぎる。しかも、全方位からの攻撃となると流石のオレも十秒と持たない。

 「身体強化:物理強化」

 「身体強化:速度強化」

 「身体強化:体力強化」


 「クッ、クッソ...!!!」

 「数が多すぎる...!」

 身体強化をしても身体が追いつかない程、迫りくる武器の嵐。


 「フフフ...楽しいの!!楽しいの!!」

 「やっぱり貴方は所詮偽物!!」

  キルは笑い声をあげるが、未だその表情は無表情だった。


 (どうする...天童流剣術を使えば、この場を凌ぐこともできるが...アレは血塗られた剣術...!安易に使用することはできない...)

 

 そう考えている間に、影化した槍がオレの肩を貫く。

 

 「ッ――――!!」

 オレは痛みを我慢する。さらに追撃するかの如く、背後から数本のナイフが降り注ぎ、背中に刺さる。

 

 「このままでは...キリがないッ...!!」

 

 全身から止まることのない流血、その状況の中オレの頭の中で走る高速演算がある回答を導き出す。

 

 「所詮は影...だったら、この影を吹き飛ばせば問題ないハズだ...!!」

 オレはガリアの部屋から見つけた魔導書で得た知識を利用し、部屋中に魔法陣を展開した。

 

 「白魔法:煌く閃光――ライトブリンガー!!」

 部屋中は眩い光に照らされた。それは一片の影も存在することが許されない程に...。

 

 「バカな男なの...!!光が強くなればなるほど、一層影も色濃くなるッ!進はそんなことも知らない馬鹿な男なの!?」

 

 背後からキルの声が聞こえる...。奴は既にオレの後ろに忍び寄っていた。その両手には大鎌を携えて...

 

 「暗黒武技:魂刈り取る影の大鎌!!」

 「この技を喰らった者は魂にダメージを受けて再起不能になるのッ!!」

 「そのまま、死ぬがいいですのォォッ!!」

 

 キルはその手に持った大鎌を天まで振り上げる。それは既に元々の鎌の大きさを遥かに凌駕するほどに巨大化していた。部屋中を照らされたことによって、キルの持つ大鎌の影が実体化して巨大化していたのである。その刃にはキルの影魔法の魔力が込められていた。

 

 「光が強くなればなるほど、影も色濃くなるか...」

 「オレが部屋中照らしたのは影を消すためだけじゃない...貴様の攻撃してくる方向を絞りたかったからだ...」

 「今このオレの周囲に在る影はオレの背後のみ...だったら、貴様の攻撃する方向は自然に絞られる、なぁスターリン-キルッ!!」

 

 進はこの時、キルが自身の背後に忍び寄ることを予期していた。そして、攻撃してくることも読み、背後への攻撃態勢を取っていたのだ。

 

 「聖剣技:聖乱衝王斬せんらんしょうおうざん!!」

 

 進の剣から無数の光の渦が巻き起こり、キル目掛けて貫くのであった。

 

 「そんな...程度の力...私の影の力には勝てないですのッ!!」

 

 進の聖剣技とキルの大鎌がぶつかり合う。激しい乱気流を巻き起こしながらバチバチと音を立てて、互いに譲らない。

 

 「通常だったら、貴様にも勝ちの目があっただろうな...しかし、煌く閃光――ライトブリンガーによってオレの神聖剣セイクリッドブレードの光の力はさらに強まっている!!」

 

 進のその言葉に後押しされるように、キルは大鎌を持ったまま、聖乱衝王斬せんらんしょうおうざんの衝撃をモロに受け、部屋中の壁に何度も何度も叩きつけられてゆくのだった。

 

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