第153話 ルルドの街②
~ルルドの街 周辺~
ルーガルの村を後にしたオレ達一行は、もうすぐでルルドの街に着くというところまで来ていた。
「アレが、ルルドの街だ!」
リオンが指差し、マリーに言った。
「とても綺麗な街ですね!」
マリーが窓に手を当て、キラキラした目をしながら言う。
ルルドの街は1メートルほどの外壁に囲まれ、レンガ造りの家々が並んでいるのが見えた。
「とても魔王軍に侵略された街の風景とは思えないな...」
「街の現状はどうなっているのか調べる必要がありそうだ」
オレはそう呟いた。
街の門の前で、オレは乗ってきた車を収納のスキルの納めた。
「天童のその収納だっけ?そのスキル便利だよな...」
新が羨ましそうにそう言った。
「このスキルは、この世界に来る途中にアドミニストレータからもらったものだ...!」
「新だって、天上天下唯我独尊のスキルをもらっただろ?」
「アレだって相当チートみたいなもんだぞ!」
「戦闘中にスキルとか意識してねぇしな~...」
「それよりもぜってーそっちのスキルのが便利じゃん!!」
「だったら、今度アドミニストレータにお願いでもしてみたらどうだ?」
オレは冗談交じりにそう新に言った。
「おお!その手があったか!?」
新は本当に聞くつもりのようだ。あの女からスキルをもらうとか、オレからしたら、ご遠慮したいところなんだが...。
そもそも奴がこの世界に連れてこなければ、オレ達はこの世界にいないわけだからな。
門番の人は、獣人であったためリオンの顔を見せたら喜んですんなりと通してくれた。
~ルルドの街~
こうして、オレ達は、街の中に入ることにした。街の中はとても侵略された国の街とは思えない程穏やかだった。街の人たちの話を聞いていると、どうやら魔族が支配することになったと言っても、圧政に苦しんでいるとかではないらしい。街の人たちからしてみたら、政治を取り仕切る頭が挿げ変わったということだけのようであり、そこまで私生活には影響がないのかもしれない。だとしたら、リオンには悪いが、オレ達が魔族の手から王権を取り戻すことに意味があるのか、まぁいずれにせよその答えを見極める為にクロヴィスの王城に向かう必要はあるのだが。
時々、魔族のような男たちもいたため、オレ達は獣人の種族だとバレないように厚手のローブを着ながら街を散策することにした。
「わぁっ~スゴイ色々とある素敵な街ですね~!!」
「そうだろ、マリー!!この街はクロヴィス一物資が豊富だからな!自慢の街なのだ!」
マリーとリオンはすっかりショッピングを楽しむ女の子だった。
「じゃあ、フラムさんこれお願いしますッ!!」
「トーマもこれを持ってくれッ!」
一緒に来たフラムさんとトーマさんはリオン達の荷物運びを任されていた。
新たちの方はどうだろうと見ると、
「おい!バルバス!一応釘を刺しておくが、俺から逃げれられると思ってねぇよな!!」
「新さん...やりすぎはよくないっすよ!」
「わ、分かっていますよ!!絶対に逃げませんから!」
逃げるなよと言う圧力をかける新、その新を宥めるリザード兵のコノハ。そして、脅され怯えるバルバス。ローブを羽織っているとはいえ、かなり目立ってしまっている。
「この旅って観光じゃないよな...」
オレは呆れてそう呟かずにはいられなかった。
~ルルドの街 町長の館~
ルルドの街の一番奥に住居を構える街長の館。その大きさはこの街一番と言われている。
そこは元々は獣人の街長が治めていたが、魔族に支配されることに伴いこの街を統べる街長を魔族の男に代えられてしまった。
その館を二人の魔族が訪れていた。
「コレはコレは...ジャハンナムのヴィクトル様とベリヤ様ではありませんか!?」
「なぜ、このような場所へ来られたのですか?」
ジャハンナムのヴィクトルとベリヤに媚び諂うゲオルギというこの魔族こそこの街の支配をモレクより命じられていた。
「ボク達が来たのは、この街の視察さ...!ゲオルギがちゃんとこの街の人たちに圧政を強いていないかの確認!」
とそう、ヴィクトルが答える。
「拙者は、ヴィクトル殿とその...一緒にいられればどこへでも...ぐへぇ!」
ベリヤが全てを言い切る前にベリヤの腹部にヴィクトルは肘打ちを入れる。
「は、はぁ...承知いたしました。ではゆっくりとしていってください!」
ゲオルギは両手でゴマを擦りながら、二人に部屋を案内した。
そして、案内された部屋に入り、ゲオルギは自身の書斎へと戻った。
「あ~ボク、アイツ苦手だわ~!!」
そうヴィクトルはベッドに飛び乗りながら言った。
「何故でござるか?」
「えっ~だってさぁ~アイツいっつも偉い奴に媚び入れてるじゃん!そのくせ、自分より立場の弱い奴には強く出るところボク知ってるもん!?」
「そうでござったか~!拙者はそういう他人の感情の機微に疎い故初めてそのようなこと知りました!」
「ベリヤンはベリヤンらしくていいと思うよ!」
ヴィクトルは優しい笑顔でベリヤに微笑みかける。
「ヴィクトル殿...好きでござるッ!」
そのヴィクトルの笑顔に思わず、ベリヤは思いを漏らす。
「うん!知ってるッ!」
「ところでさぁ、ベリヤン、なんで本棚の間に挟まってるわけ?」
「拙者こういう物と物の間に挟まっていないと落ち着かない故...!」
「あっそうなんだ...」
ベリヤの奇妙な行動に少し呆れたヴィクトルであった。