第144話 魔王より強いってマジ?【未央side】
~魔王城 魔王の間~
禍々しい暗雲立ち込める黒の大地―――――獣人の国クロヴィスから北に2000km先にそこはあった。強大な力を持つ魔族が蔓延る悪魔の楽園、人々はそこを闇黒大地と呼ぶ。この闇黒大地全土が魔族領として現在、魔王である未央が治めていた。
闇黒大地の中心に聳え立つ魔王城―――その最上階、魔王の間の玉座に憂鬱な表情を浮かべる少女がいた。エレベータに乗って異世界に行く方法を実践したら、この世界に迷い込み、あれよあれよと魔王の座に収まり、魔族たちを従えることになった女の子「真島未央」である。元々は普通にどこにでもいるオカルト好きの女子高生である彼女だったが、最近はこの世界を征服するために大忙しなのである。この世界の各地を治める王権の持ち主から王権を集めることが、この世界から元の世界に戻る方法と先代の魔王から教えられ、彼女はそのため、世界征服を推し進めていたのである。しかし、普通の女子高生であった彼女は、多方面からの反対派の魔族に対する説得や軍勢の強化、意外と多い慣れない事務処理作業に悪戦苦闘していたのである。
「はぁ~~~ッ!!」
デカい溜息をつく、未央を前に六魔将の一人、リカントは心配そうな顔をしていた。
「未央様!お加減が悪いようですが、いかがなさいましたか?」
リカントは跪きながら、未央に尋ねた。
「いや~~私ここ最近、魔族領の事務作業とか、反対派の魔族の説得とかしてたじゃない?」
「それで、しばらくの間出番がなかったじゃない?みんな私のこと忘れていたんじゃないかと思って...!」
「はぁ...?みんなとは...?」
リカントには未央の真意がいまいち掴めないままでいた。
(未央よ...それを言うのはどうなんだ...!)
未央の横でプカプカと浮かぶ、先代の魔王アリスは若干顔を引きずらせながら、心の中で未央にツッコんだ。
「まぁその話はいいや!それで、次の王権回収なんだけど...」
「どこから攻めようかおススメとかあったりする?」
未央は次に攻め込む国をまるで、ネットで評価の高い飲食店を聞くかの如く、軽い雰囲気でリカントに尋ねた。未央は魔王になった影響で、その心の内にある良心をと呼べるモノが段々と薄くなっていたのである。しかし、そのことに未央はまだ気が付いていなかった。未央自身、人間を傷つけること、殺すことにはまだ躊躇いがあり、魔族の皆には極力そう言ったことはしないようにと命令は下している。そのことが未央が人間であることの最後の防波堤の役割を果たしていたのである。
「モレクからの報告によりますと、クロヴィス西のドラコミシア王国の王権を既に回収したとの報告がありました!」
「ですので、その南!大国ブロワ王国などいかがでしょうか?」
「ここは隣国のランジネット公国と100年近く戦争を行っています!ですので、制圧するのは容易いかと思われます!」
「ついでにランジネット公国も制圧してしまえば一気に領土を広げることもできましょう!!」
リカントは上機嫌に説明を行う。
未央は目の前に浮かべたこの世界の地図を眺め、少し訝し気にリカントに尋ねた。
「先にこの聖王国を攻めた方がいいんじゃないの?だってここに勇者が召喚されるわけでしょ~?」
「だったら、勇者が召喚される前に攻めた方がいいじゃん!!」
「それは難しいかと思われます...未央様!」
リカントが少し残念そうにそう告げる。
「えッ!なんでさ?」
「だって、魔王軍のみんなすんごい強いよ!私だって、ホラこんなことできるし!」
未央は、リカントの目の前で周囲の物を容赦なく飲み込む巨大なブラックホールを作り出していた。
「あの国にはこの世界最強の神殿騎士たちがいます!」
「しかも、奴らはあの憎き"アーク教典"を集めています。なので、かなり危険だと考えるのが妥当でしょう」
「なので、まずは簡単な所から攻めるのが良いと考えています!」
「なるほど!リカントがそこまで言うなら、その線でいこっか!」
未央は浮いているアリスにも目配りをして、今の案でよいか確認をした。特に何も反応が無かったので、今のリカントの考えに沿って、今後は動くことを決めた。
「それでさぁ~話に出たから聞くんだけどさ!」
「この間のアーク教典だっけ?結局どうしたの?」
「エレナちゃんが持ってきたまでは知ってるんだけど、その後リカントちゃんに渡してからどうなったのかな~って気になっちゃったんだけど!?」
「ハッ!それでしたら、私がこの手で消去いたしました。」
「アレはこの世界に災厄を呼ぶ代物ですから...!!」
リカントのその目には何やら黒い物を感じずにはいられなかった。どうやら過去に何かあったようだ。未央はそのことが少し、気に掛かったので、こっそり昔からリカントと共に行動をしていたアリスに聞いてみたが、答えてはくれなかった。
「未央よ...そんなに気になるなら、自身の魔眼で見てみるといいぞ...!」
「えっ!魔眼?」
「そういえば、このスキルはまだ使ったことなかったな...!」
「基本的には相手のステータスを見ることができるスキルだが、使用者によって少し効果が違う。」
「未央の持つ魔眼は余のスキルを引き継いでいる。だから対象者の過去も能力と同時に覗くことができるぞ!」
アリスは少し得意げに未央に説明をする。
「何それスゴイ!!」
未央は目をキラキラさせ、早速こっそりとリカントに魔眼を使用する。
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名前:リカント
種族:人狼
性別:男
Lv.100
クラス:至高の人狼
◆パラメータ◆
体力:999
筋力:999
魔力:999
物理抵抗力:999
魔力抵抗力:999
精神力:999
器用さ:999
素早さ:999
◆装備◆
武器:なし
防具:なし
◆アクティブスキル◆
《魔眼Lv.Max》《拳聖Lv.Max》《剣星Lv.Max》《魔導Lv.Max》《魔導書Lv.Max》《破壊Lv.Max》《狼法術Lv.Max》《蛮勇Lv.Max》《悲哀Lv.Max》《プラウドオフウルフLv.Max》《忠誠心Lv.Max》《銀魔法Lv.Max》《格闘術Lv.Max》《収納Lv.Max》《転移Lv.Max》《飛翔Lv.Max》《召喚Lv.Max》《高速演算Lv.Max》《魔力制御Lv.Max》《王の威圧Lv.Max》《身体超過Lv.Max》《身体強化Lv.Max》《属性付与Lv.Max》《状態異常付加Lv.Max》《防御無視Lv.Max》《神経強化Lv.Max》《一撃必殺Lv.Max》《老獪Lv.Max》《狼化Lv.Max》《再生術Lv.Max》《全体攻撃Lv.Max》《攻撃回数上昇Lv.Max》《速射Lv.Max》《連打Lv.Max》《地震Lv.Max》《津波Lv.Max》《嵐雨Lv.Max》《カタストロフLv.Max》《精霊術・火Lv.Max》《精霊術・水Lv.Max》《精霊術・地Lv.Max》《精霊術・風Lv.Max》《精霊術・闇Lv.Max》《大精霊・召喚Lv.Max》《大精霊・支配Lv.Max》《身体変形Lv.Max》《分身Lv.Max》《隠密Lv.Max》《光速Lv.Max》《波動Lv.Max》《一蹴Lv.Max》《気孔Lv.Max》《禁忌Lv.Max》《同族嫌悪Lv.Max》《直感Lv.Max》《気配察知Lv.Max》《気配隠蔽Lv.Max》《鑑定隠蔽Lv.Max》《修羅Lv.Max》《夜叉Lv.Max》《洗脳Lv.Max》《支配Lv.Max》《白黒発見Lv.Max》《瞑想Lv.Max》《鼓舞Lv.Max》《閃光Lv.Max》《境界線破壊Lv.Max》《魔性Lv.Max》《カリスマLv.Max》
◆パッシブスキル◆
《不老不死》《超速再生Lv.Max》《全属性耐性Lv.Max》《自動体力回復Lv.Max》《自動魔力回復Lv.Max》《完全状態異常耐性》《魔力完全吸収》《物理完全無効》《精神支配無効》《時間干渉無効》《防刃Lv.Max》《防弾Lv.Max》《防打Lv.Max》《超常能力耐性Lv.Max》《神格化Lv.Max》《魔獣王の加護Lv.Max》《大精霊の加護Lv.Max》《竜王の加護Lv.Max》《神聖耐性Lv.Max》
◆ユニークスキル◆
《真羅万象》《万物崩壊世界》《混沌幻魔》
◆称号◆
《伝説の人狼》《神殺し》《六魔将》
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リカントのステータスは見ることができた。その数値に未央は驚いた。なぜなら、魔王である自分よりも高かったからである。スキルの詳細は見えなかった。いや、正確には見る前にリカントの過去の映像が未央の脳裏に流れ始めたのである。それはとても悲しい、苦しい、悍ましいそんな大きい負の感情が未央に流れ込んだのである。しかし、その中でも中心にあったのは、温かく懐かしいそんな記憶だった。
これは、後にこの世界最強と呼ばれたある男の過去の記憶である。