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第141話 天才 天童 進 VS 超人 唯我 新⑤


~ルーガルの村 周辺荒野~

 

 「天童!良い顔になったじゃねーか!!」

 

 新はオレのの頭を手に握り締めながら、オレの身体を持ち上げた。オレは新の右手を力強く握り締めた。

 オレの感情は最高潮に昂り、心臓の動きが激しくなっていることを感じていた。

 

 「今度はこちらからいかせてもらうぞ!」

 進は握り締めた新の右手を軸にして、両足を新の顎目掛けて蹴り上げる。

 

 「ゴッ、フゥッ!」

 蹴り上げられた新の両足は僅かに地面から離れ、上半身は後ろにのけ反る。新はのけ反ったことによって、オレの頭部を離さざるを得なかった。

 身体の自由を取り戻したオレは、両足を少し開き、上体を落とし攻撃のモーションへと入った。

 

 「このォ!クソッ!!」

 新はすぐに体勢を整え、右手をボキボキと鳴らし、強く握り締めた。

 

 「オラアアァッ!!」

 新の渾身の右ストレートが繰り出される。

 

 「そうやって強引に攻撃したところでオレには通用しないのは二年前に叩き込んだハズだぞ!!」

 「もう忘れたのか!!」

 

 オレは空中に円弧を描き、気を集める。そして、新の拳の軌道を横から弾くことによって少しずらした。ズレた軌道の右ストレートはオレの頬を掠り、少し血が噴き出した。

 

 「そうやって、余裕ぶっているテメェをオレは叩き潰したかったんだよッ!!」

 「過去も!今もォ!そして、未来もッ!!」

 

 「オレはお前のことを認めているつもりだ!!」

 「だからとりあえず早く眠れ!!」

 新の拳の威力を身体を左回転をすることで完全に我がものとし、新の肝臓部を両の掌でぶつける。

 

 「グへェッ!!」

 新をそのまま数十メートル吹き飛ばし、岩肌の剥きだしている尖った岩石へと叩きつけた。

 

 「コレが八卦掌というやつだ...」

 オレはそう呟き、地面に突き刺さっていた神聖剣セイクリッドブレードを拾った。

 

 オレはふと、自分の感情の昂りに疑問を抱いた。それは自分が感じてはいけないモノだとそう気づいてしまったのだ。自分にとって闘いとは、互いの正義を掛けた神聖なモノで決して道楽や悦を感じてはいけないと自分の両親にそう教え込まれて育ってきた。

 

 なのに、オレは感じてしまった―――新との決闘を楽しいと...

 

 「マリーにも言ったじゃないか...」

 

 "オレの中の正義が!信念が!責任が!理想が!名誉が!それら全てがオレに生きろそして戦えって!言ってくるんだ"

 

 オレがガリアとの戦いの後にマリーに言った言葉だ。

 

 オレの力は自分の中の正義に基づいて誰かを助ける為だったり、悪人に対して制裁の加える為だったり、試合や模擬戦の時に行使されてきたものだったハズだ。それなのに、今この状況はどうだろうか。まぁ無理をすれば模擬戦と呼べなくもないが、お互いがお互いを殺す気で闘っている今の状況を試合や模擬戦と呼ぶには余りにも難しいと思っていた。


 そんなこの闘いをオレは心の底から楽しんでいた。今まで自分と対等に戦える存在、誰かを助ける為でも、悪人に対する制裁をするわけでもないのだ。元いた地球でもよくスポーツや模擬戦をしてはいたが、どちらかと言うと己を高める自己研鑽のため試合をしていたため、純粋に闘いたいと思って闘うという行為はこれが初めてだった。

 

 「だけど今のオレの身体はどうだ...新との闘いでワクワクしている、血が滾っている、闘いを楽しんでいる...」

 「分かるんだ...オレの身体の細胞が"コイツには勝て!!"ってそう言ってくる感覚、何か別の意思によって突き動かされている感覚、オレがオレじゃないみたいなそんな気持ちの悪さを感じる...!!」

 

 オレは両手で顔を押さえて震えていた。そして、次第に呼吸も激しくなり、顔からは夥しいほどの汗が噴き出していた。

 

 動きの止まった進とは対照的に、ガラガラと音を立てて、岩石に叩きつけられた新は動きを再開していた。

 

 「天童!そういえばお前は中国拳法も極めていたんだっけな!!」

 

 「それじゃあ、"動"の動きが中心の俺とは相性が悪いわけだ...」

 

 「このまま殴り合っていても拉致があかねぇ!!」

 「次の一撃で決めてやるよ!!」

 

 そう言い、新はしゃがみ込み、両足に思いっきり力を込め飛び上がった。その高度は遥か彼方―――進たちが目視で確認するには難しい距離まで達していた。

 

 「ハァッ...ハァ...、アイツ何をする気だ...?」

 進は呼吸を荒げながら、新の行動を観察し、次の行動を予測する。

 

 「ククッ!天童!今の俺が持てる最大の一撃をお見舞いしてやるぜ!!」

 「コイツで終わりにしよーや!!」

 最高の高度まで飛び上がり、滞空していた新は身体の向きを今度は進の方へと向ける。

 

 「アッ、アイツまさか...!?」

 

 「まずい!!みんな遠くへ離れるんだ!!」

 オレは慌てて、他のみんなに遠ざかるように言う。

 

 「ススムさんの言うとおりにしましょう!!」

 流石はこの世界に来て一番付き合いの長いマリーはオレの意をすぐに汲んでくれたようでみんなを引っ張ってできるだけ遠くまで避けてくれた。

 

 「ハァハァ...アイツ...超スピードで落下してくる気かッ...!!」

 

 「ご名答よ!じゃあ行くぜ!!天童!!」

 新はオレの呟きを遥か彼方の上空に居ながらもキャッチしていた。

 グググっと新は再び全力で蹴り出した。そのスピードは、マッハ10相当に匹敵していた。マッハ1で大体時速1200kmに相当するのに、その10倍となるととてつもない速度となる。新の全身は空気の摩擦によって、赤く燃え上がり、さながら流星のように一筋の煌きとなってオレに襲ってきた。

 

 クッ、このままでは押し切られるとオレは感じていた。先ほどの疑問がオレの頭をずっと駆け巡っており、この闘いに対し答えが見えなくなっていた。それによって、身体が思うように動かない自分がいた。

 

 既に、目の前まで新の全身に纏った閃光はやって来ていた。

 

 

  "弾け飛びな!!メテオインパクトォォッ!!"

 

 

 また、負けるのか...この世界に来て初めてサンドルに負けた。そして、今度は新に負ける。それは嫌だ。オレは勝つ!何としても勝つんだ!だから動けオレの身体ッ!!オレはそう叫んだ。とその時だった、オレの中から声が聞こえてきた。

 

  "最強の細胞を持つ者よ!!力を貸してやる!!"

 

 と声の主はそう言ってきた。

 

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