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第136話 狼獣人の村 ルーガル


~ルーガルの村 村の入り口正面~

 

 「よぉ!天童...!会いたかったぜ!!」

 

 「やはり、新か...お前までこの世界に来ていたのか!」

 

 異世界ヌバモンドで再会を果たした進と新であった。

 

 「何だが、とても怖そうな方なんですが...ススムさんの知り合いの方ですか?」

 横に立っていたマリーが訝しげに進に尋ねる。

 

 奴は地球にいた頃の友達だとマリー達には簡単に説明をした。

 

 「天童!!ちょっと助けてくれよ!コイツ等全然村の中に入れてくれねーんだよ!!」

 どうやら、新たちはこの村に入りたいようだが、村の住民―――狼獣人の人たちに遮られているようだった。狼獣人とは、全身黒や灰色の体毛に覆われ、二足歩行の狼の獣人を指すらしく、人間と比べ咬合力や嗅覚が優れていると前に読んだ文献には記載されていたと記憶している。

 

 まぁそんなモノ(咬合力や嗅覚)新の前では何の意味も成さないだろうが...

 

 それでも、新が強行手段に出ないで、言葉だけで対応しようとしているところを見ると、昔よりも成長していると進は感じていた。

 

 「リオン、この村はクロヴィスの領地内だ、何とかならないか?」

 オレはこの国の姫、リオンに交渉をお願いした。

 

 「分かった、やってみよう!」

 リオンは快く頼みを聞いてくれた。リオンは新たちを囲っている村長たちの前まで行き、交渉に入る。

 

 「え~コホン!」

 「ルーガルの村長...貴殿に話がある...!」

 とリオンが村長の前で話を切り出すと、村長の狼の毛に覆われたその瞳からは大量の涙が流れていた。

 

 「えっ!?どうしたのだ村長よ!!」

 と、村長の突然の涙に慌てるリオンであったが、村長の涙の理由は目の前のリオンにあったようだ。

 

 「よくご無事で...リオン姫!!」

 村長はじめ、周りにいた狼獣人たちはリオンの前に跪いた。

 

 「よい!面を上げよ!!」

 「私はただ、我々をこの村に入れてほしいだけなのだ!」

 とそうリオンが村人たちに頼んだ。

 

 「私たちも入れたいのは山々なのですが、そこに魔族がいます」

 「あのような魔族を村に入れ、村人を危険に晒すわけにはいかないのです!」

 村長が新の後ろにいる全身拘束された魔族を指差しそう言った。

 

 リオンが進の方を振り返り、確認をする。オレは大丈夫だと頷くと、リオンはニッコリと笑顔になり村長たちに答えた。

 

 「大丈夫だ!!安心しろ!我々は強い!」

 「魔族が襲ってきても、絶対に其方らを守ると神に誓おう!!」

 「なんせ我々はクロヴィスを魔族の手から奪い返しに来たのだから!!」

 リオンが自信満々に村人たちに言った。

 

 「おっ!おお!!もしかして連れてこられたのですか勇者を!!」

 村長が感嘆の声を漏らすと、村人たちは一斉に喜びの叫びを上げた。

 

 「ま、まぁそんなところだ!」

 リオンが少し恥ずかしそうに、頬を人差し指で掻きながら答える。


 それから、オレたちは無事に村の中へと案内された。新の引き連れていた魔族は拘束されたまま新と行動を共にしていた。あの新に対して怯え切った様子を見るに相当、新に酷い目に遭わされたのだろうな。あれじゃ仲間を呼ぶことはあっても心の底から新に対して反抗しようとは二度と思わないだろう...合掌!!オレはその魔族の方向き、手を合わせて、あの魔族に心からの同情を送った。

 

 

 新を含めたオレ達は改めて、村長の部屋へと案内された。どうやらリオンに会わせたい人がいるらしく、オレたちをその人の元へと案内するらしい。

 

 「ここですじゃ...!」

 

 村長が目の前の扉をガチャリと開けた。そこにいたのは一人の狼獣人の男だった。相当数多の戦場を渡ってきたのであろう体中には古傷のようなものがたくさん刻まれていた。

 

 「ま、まさか...リオン様!!」

 「よくご無事で...!!」

 その男はリオンを前に村長と同じように涙を垂れ流していた。どうやらリオンは相当この国人たちから愛されていたようだ。

 

 「お前は...トーマか!!」

 

 トーマという男はクロヴィス最強のジェネラルとして国に仕えていた戦士だった。しかし、魔王軍が攻めてきた時に王の間を守る任を負っていたが、攻め込んできたモレクとの対決に無残にも敗れたのだった。

 六魔将モレクの放った地獄の蛆虫ゲヘナワームにより、全身の臓器を蛆虫に喰われ、戦士としての生命を絶たれていた。しかし、六魔将エレナによって治療された。気が付いた時には既にクロヴィスの国王レオは魔王に敗れ地下へと幽閉されていた。自分一人では到底救い出せないと考え、トーマはこの村へと反撃のチャンスを伺うため帰郷していたのである。

 

 「お前の方こそ、よく無事だったな!!」

 そのリオンの目頭もウルウルと涙を貯めこんでいた。そして、リオンが突然目の前に現れ、驚きと喜びによって、身体を震わせて上手く動けないトーマを見兼ねて、リオンはすぐ近くで寄り添い、トーマの頭を撫でた。

 

 

 「あ...あああぁぁぁうううう!!!!」


 「もう二度とリオン様に会うことはできないと思っていました!!!」

 「こうして、また貴方の声が聴けた!また貴方に撫でて貰えた!また貴方の為に闘うことができる」

 「私はなんて幸せ者だろうか...!!」


 「わおおおおぉぉぉんんん!!!」

 トーマは喜びで身体をワナワナと震わせ、歓喜の声を叫んでいた。

 

 「私たちはクロヴィスを取り戻すぞ!」

 「お前も協力してくれ!!」

 リオンは立ち上がり、トーマに協力を頼んだ。トーマにはリオンの頼みを断るということは頭にはなかったので、この頼みを快諾した。

 

 

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