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第135話 天才 と 超人 異世界にて 再会する


~獣人の国 クロヴィス国境周辺 西の街道~

 

 「コレすごい快適な乗り物ですね!!」

 

 マリーが窓から身を乗り出しそうな程、張り付いて外の景色を眺める。外はとてもいい天気である。獣人の国クロヴィスは魔王軍に占領されたらしいが、今の所特に荒れた形跡などは遭遇していなかった。ただ、強い魔族が複数存在していることが影響して、ここに来るまでの道のりで遭遇した魔物たちは今までの魔物と違い凶暴化していた。

 

 魔族の放つ魔力は、辺りの魔物たちにも何かしら影響を与えてしまうということなのだろうか。アクアマリノを発って、早くも2日が経過していた。もう少しでリオンが言っていたルーガルの村に到着するはずだ。

 

 「ススム君、この乗り物なんだが、どういった仕組みで動いているんだい?」

 

 フラムさんが興味津々で聞いてきた。やはり男心にはこの乗り物はかなり来るものがあるんだろう。テンション上がる理由も頷けるという物。作った自分でもかなり会心の出来だと思っており、フラムさんのこの喰いつきがさらに誇らしくさせてくれた。

 

 「フフフ...よくぞ聞いてくれました!!」

 「実はですね――――」

 

 オレはかれこれ数時間この車のような物の構造をフラムさんに説明した。フラムさんが目を輝かせながら飽きることなく聞いてくれた。実はこの車のような物、地球の車とは違い、ガソリンを燃料にしているわけではない。燃料としているのは魔物の体内で生成された"魔石"だ。それもかなり上質な魔石―――以前、魔坑道に行った時に採取した物を使っている。

 

 500年以上も伝説の六魔将サンドルが眠っていたところで取れた魔石というだけはある。その魔石は上質で濃密な魔力を有していた。

 

 さらに、この乗り物ほとんど自動操縦で走っているのである。勿論、手動で操作することもできるが、それを行わずハンドルの部分に魔力を込め、あらかじめ経路をインプットすることで目的地まで自動で運んでいるという代物だ。魔力回路を弄って、プログラムしたもので、もし障害物が接近していることを感知した時にはその障害物から離れるように制御してある。だから今フラムさんに説明しているこの時、ハンドルを握ってはいない。

 

 乗り物の外装にも拘っており、材質はアルミニウムを使用し、そこに魔力強化されたペンキを塗装した。アルミニウムは鉄より軽く、同じ強度を持つことができるため、地球でもよく高級車に使われているのだ。それを魔力強化されたペンキで塗装することによりさらに硬度を強化できたというわけだ。

 

 初めて作ったにしてはかなりの自信作となっている。

 

 そんな話を数時間もしているうちにルーガルの村を目前に迫っていた。

 段々近づくにつれ、オレはある気配を感じていた。それは懐かしいような、待ち焦がれていたようなそんな感じだった。普段は直感的な感覚をあまり信用してはいないのだが、この時だけはその直感が確信に変わってすらいた。

 

 「この感じ...オレは知っている!」

 

 

~ルーガルの村 村の入り口正面~


 村の入り口で、大勢の狼の獣人たちが集まり、何やら揉めているようだった。その大勢の狼の獣人たちは3人の男たちを取り囲むようにしていた。

 

 「オイ!俺達は入れてくれねーのかよ!!」

 一人のキレている少年がいる。そうこの男は天童進や真島未央と同じようにエレベータに乗ってこの世界に来た少年唯我新であった。

 そして、その新の後ろにはドラコミシア王国の兵士の一人であるコノハと"ジャハンナム"の一人バルバスがロープでグルグルに巻かれ、手足には枷を嵌められ立っていた。

 

 「いや、だからこの村に魔族を入れるわけにはいかないのじゃよ!!」

 村の村長らしき者が新に対して、そう言っていた。どうやら新たちはクロヴィスに向かう途中のこの村で休憩するため訪れていたようだ。

 

 「あぁん?魔族連れてるから入れねーだと??」

 「これがよく言う差別かよ...」

 

 「いや、別に差別ではないのじゃが...」

 「クロヴィスは今や魔族に支配されておる、それなのにそんな拘束された魔族をここに泊めて、その仲間が奪い返しに来たら、どうするのじゃ!!」

 「この村を危険に晒すわけにはいかんのでな!!」

 村長は村が危険に晒されることを恐れて、必死に新を説得する。

 

 「いや、コイツ拘束されているけど、こういう趣味の人だから...仲間とかいないっすから」

 「大丈夫っすよ!!」

 新は誰にでも分かるようなウソをついて、何とか村に入ろうとする。

 

 「本当かの...」

 村長はチラリとバルバスの方を見ると、バルバスは必死に首を横に振り、否定しているようだった。

 

 「何だが、その魔族否定しているようじゃが...」

 

 と、村長がそう言うと、新は鬼のような形相でバルバスの方を向く。

 「オイ!テメェはこういう拘束されるのが趣味なんだよぁ??」

 胸ぐらを掴みながら、新はバルバスを脅していた。それを見ている者全てがこの男はヤバいと感じていた。

 「ヒィ!?ヒィィ!!ハッ、ハイ!そうです!」

 「お、私はこういう拘束されるのが趣味なのです!!」

 バルバスはプライドも何も全て捨て大きな声でそう宣言した。

 

 そんなやり取りをずっとしていた新だったが、新はあることを感じていた。

 そう、新の異常に発達した嗅覚がこの懐かしい匂いを捉えていた。

 

 「フン!近いな...アイツがここに来る...!」

 新の表情はニヤリとした不敵な笑みを浮かべていた。

 すると、そこにこの世界では見ることのできない車のような乗り物が物凄いスピードでやってきた。

 

 「な、なんじゃ全く次から次へと...」

 村長は疲れ果てたようにぼやいた。

 

 その乗り物からは一人の少年と、一人の青年、そして、二人の少女が降りてきた。

 

 「よぉ!天童...!会いたかったぜ!!」

 

 「やはり、新か...お前までこの世界に来ていたのか!」

 

 この日、天才と呼ばれた少年、天童進と超人と呼ばれた少年、唯我新がこの異世界ヌバモンドで再会を果たしたのであった。

 

 

 

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