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第133話 女子二人でお酒を飲みます


~アクアマリノ ベネットの宿屋~


 進とフラムがアルクガーデンに行っている裏側で、マリーとリオンは二人で飲み明かす約束をしていた。

 

 「さぁ!上がって上がって!」

 リオンがニコニコした笑顔でマリーを部屋へと上げる。

 

 「おじゃましま~す!」

 

 マリーがリオンの部屋へと入る。部屋の作りは当然自分の部屋と変わらないが、他人が過ごしているスペースと考えると多少の遠慮心も出てくる。

 

 朝二人でベネットに今夜は二人でお酒を飲みますといったところ、快く宿屋の近くの酒蔵から様々なお酒を頂くことができた。この10日間ベネットさんには大変お世話になっており、何かお返しをしたいとマリーが申し出たところ、娘のアンナを助けてくれた恩人だからと申し出を断られていた。

 

 「ねぇねぇ!マリーはさぁどのお酒が好きなの?」

 

 「そうですねぇ...シードル(リンゴ酒)とかはロレーヌの村で宴の際に飲んでましたよ!」

 「あっ、でもエールとかもたまに飲みます!」

 

 「リオンはどんなお酒飲んでたの?」

 逆にマリーがリオンに聞いてみた。

 

 「私は、白ワインとか赤ワイン中心だったね!あ~でも他にも色々飲んだね!」

 

 「もうさ、よく城のパーティとか開かれて、そこで色々飲まされるのよ!」

 「それで色んな男が私に声を掛けて、踊りましょうとか、今度食事でもどうですか~とか言ってくるわけよ!」

 「もうアレは懲り懲りだわ...!!」

 リオンがウンザリしたような表情で愚痴を漏らす。

 

 「ハハハ...流石はお姫様だ...私とは住む世界が違う...」

 

 「マリー、そんな良い物でもないよ...」

 「今でこそ、こんな自由な生活できているけど、城にいたころはほとんど自由なんてなかったし!」

 「それに、父上はやれ婿探しだ!とか言って各国の王子だとか、大金持ちだとか連れてきてお見合いみたいなことばかりさせるのよ...!もう嫌になっちゃうわよ!」

 「それがなくなったっていうのは、魔王軍に攻めてこられて唯一良かったところでもあるんだけど...」

 

 どうやら、リオンもお姫様というだけで誰もが羨むような生活ばかりしていたのかと思ったら、意外にもそうではない様だった。

 

 二人は、エールを木のコップに注ぎ、飲んでいた。暫くして、リオンが酔った勢いでぼやき始めた。

 

 「いっそのこと進が私のことをお嫁にしてくれないかしら...!」

 リオンは大きな溜息を洩らしながら、ポロっと本音を零した。

 

 「あっ!そうそれですよ!」

 「リオンに聞きたかったのは!最近いつもいつも朝になると進さんのベッドにいますけど、アレ絶対ワザとですよね!!」

 マリーは、リオンの発言に大きく喰いついた。

 

 「えへへ...バレてたか...!」

 リオンは舌をペロリと出して、お茶目さをアピールして答える。

 

 「もう...でも一緒のベッドに寝ててもススムさんってホントに手を出してないんですよね?」

 マリーは恐る恐る聞いてみた。

 

 「ああ...私もそこはビックリした...私ほどの美少女が同じベッドに寝ているというのに奴は一切手を出してこないんだ...!」

 「私は、世界五大美女の一人とか言われている人物なのに...!」

 「奴は、女に興味がないのか...?」

 

 「女の子に興味がないってことはないと思いますよ...!」

 「あっ、そういえば前に好きな人がいるって言ってましたよ!」

 マリーが思い出したかのように言う。

 

 「何!?ホントか?そいつは誰だ!」

 リオンは興味津々で喰いつく。

 

 「"未央"さんっていう人で、元の世界からこっちに来て、進さんはその人を追ってこの世界に来たんだとか言ってました。」


 「"未央"って言ったら、今の魔王と同じ名前じゃ...」

 「それにこっちの世界って、進は"迷い人"なのか?」

 

 「ええ、そうみたいですよ...!だから、あんな不思議な能力や考え方をしているんだと思います」

 

 「そうか...やはり奴は私の伴侶にふさわしいな!」

 マリーはキラリと目を輝かせ、手を頬に当てる。

 

 「ダメですよ!ススムさんは渡しませんから!!」

 マリーは必死にそう答えた。

 

 「なんだ、マリーも進のことが好きなのか!?」

 

 「えっ、えっ、は...はぃ...」

 マリーは顔を真っ赤にしながら、小さい声で答える。

 

 「そうか、そうか!だったら、二人で進と結婚するか!!」

 

 この世界では、一夫多妻制が許されているため、一人の男性に対して複数の女性が結婚することがある。王族であるリオンはそういった事例を数多く見てきたため、全く抵抗感がなかった。むしろ当然だとすら思っていた。しかし、マリーの方は別であった。

 

 「えっ、そんなこと...!やっぱり、男性は一人の女性を愛するものだと思いますよ...!」

 「でも、ススムさんがそれを望むなら...私は受け入れるしかないのかな...?」

 段々、お酒の影響もあったのか、マリーの頭の中はグルグルと回ってしまい、パニックに陥っていた。

 

 「お、おい!マリー大丈夫か!?顔が真っ赤だぞ!!」

 酒に酔って、ふらつくマリーをリオンは心配して身体に手を当てる。

 

 「えへっへへえ...だいじょーるですよぉ!!」

 顔を真っ赤にしながら、マリーが応える。

 

 「いや、全然大丈夫には見えないぞ!!」

 「おい!しっかりしろ!せめてベッドまで連れて行くからな...」

 リオンは自分の顔をマリーの顔の近づける。

 

 とその時、アンナが酒のつまみになりそうな物を持って、部屋の扉を開けた。

 

 「お酒飲んでるって聞いたから、私も酒に合いそうな物持ってきましたよ!!」

 

 ちょうど扉を開けた時、アンナの眼前には顔の火照ったマリーとリオンが至近距離で接近している姿が映った。

 

 「えっ、ひょっとして私お邪魔でしたか?」

 

 「いや、待ってくれ!アンナ!」

 「私は酔ったマリーを介抱しようとしただけで、そういった趣味はない!」

 「私が好きなのは、男性であって、女性ではないからな!」

 必死にリオンが弁解をするが、アンナはそそくさと部屋から去っていった。

 

 「待ってくれ!違うんだ―――!!」

 リオンは夜遅くに宿中に聞こえるくらいの声で叫んだ。

 

 

――――一方その頃、進とフラムは――――


 アルクガーデンを出て、進はフラムを背負ってベネットの宿屋へと帰っていた。

 

 「フラムさん...!もう少しで宿屋に着きますよ...!」

 

 「う~んエリア...待ってろ...!」

 「俺が絶対に助けてやるからな...グググ...」

 フラムさんは寝言を言いながら、エリアを助けている夢を見ているようだった。

 

 そんなフラムを見て、進は大人になっても、酒の飲みすぎには気をつけようと思うのだった。

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