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第118話 エレベーターに乗ったら異世界に来て喧嘩に巻き込まれた件⑤【唯我 新side】


~ドラコミシア王国~


 新がドラコミシア王国の用心棒を始めて早くも一週間が経とうとしていた。この一週間特に例の魔族の襲来とやらもなく、のんびりとした日々を新は過ごしていた。宮殿の外を見て回ったり、街の店を回って旨い飯を食べたり、宮殿内の兵士たちと仲良くなり山へ行き、魔物を狩ったりしていた。

 

 

 今日もリザード兵のコノハと一緒に山で狩りに出かけていた。コノハは気配を消すのが上手く、狩りが得意であるため、女王のジルダに食料調達係を任命されていた。

 

 「新さん、今日も大猟ですね!!」

 コノハが笑顔で新に言ってきた。

 

 「ハハハ!!そうだな!」

 新も笑いながら返事をする。

 

 「新さんのおかげですよ!自分隠れるのとか得意ですけど、大物相手となるとやっぱり力が足りなくて...」

 「新さんみたいな力の強い人がいると、ほんッと狩りをするのが楽になってます!!」

 「やっぱり新さんは凄い人だと思いますよ、大勢の兵士相手に豪快に戦う姿を見たときビビッと来ましたよ!!」

 気恥ずかしそうにコノハはそう言ってきた。

 

 「いやおめぇもすげぇよ!俺が知る限り、こんなに気配を上手く隠せる奴はそうはいねぇ!」



 そんな会話を暫く続けて、大量の獲物を背負って山を下る二人だった。

 

―――――数日前――――

 

 それは満月の綺麗な夜だった。新は一人、夜遅く宮殿内を歩いていた。

 

 新は宮殿二階のバルコニーに呼び出されていたのであった。

 

 「こんな夜遅くに呼び出してすまない!!」

 新がバルコニーに着くと、そこに置かれていた椅子に座る者がいた。

 

 「で、こんな夜遅くに俺に何の用ですかね?お嬢さん!!」

 

 そこにいたのは、ドラコミシア王国の女王ジルダであった。

 

 「いや、大したことじゃないのじゃ...ただここから見えるこの満月を其方にも見せようと思ってな!」

 月明かりに照らされたジルダの横顔は、それはキレイで、絶世の美女というのも頷けるほどだった。新はその美しさに目を奪われていた。

 

 二人は特に何も会話をすることなく、ただ頭上の満月を眺めていた。まるでその空間だけ時が止まったそんな感覚が二人を支配していた。

 

 暫くの沈黙の後、ジルダが口を開いた。

 

 「其方、"迷い人"なんじゃろう?」

 

 「迷い人?」

 新はその意味が分からず、聞き返した。

 

 「異世界から来た者のことじゃ!」

 「我が国の兵士の中に鑑定のスキルを持つ者がいてな、其方のことをそれで知ったのじゃ!」

 ジルダは少しだけ、済まなそうな表情で新を見つめた。

 

 「まぁそうなるかな?」

 「でもこの世界に来たおかげで、あんたたちに出会えた!この世界も元の世界も俺にとっちゃ同じよ!」

 「腹減った時にうめぇもん食って、行きてえところに行って、暴れてぇときに暴れて、好きだと思った女に告って...」

 

 

 「そんで、一緒にいてぇ奴らと一緒にいる!」

 

 新はジルダにニカッと笑みを向け、そう言い切った。

 

 「俺は元々、親友を探しにここに来たからな、そいつ見つけたらいずれこの世界ともおさらばするつもりだ」

 

 ジルダはフッと笑みをこぼした。

 「其方は本当に自由だな...羨ましいぞ」

 「妾は生まれてからこの宮殿から出たことがほとんどない...出た時と言えば、諸外国との会談の時だけじゃ」

 「だから、もし妾が生まれ変わったら、其方のように自由に生きたいものだ!」

 

 「バー―――カ!!」

 「生まれ変わったらとか、そんな気のなげぇ話はなしだ!今すぐに行こうぜ!」

 

 「行くとはどこへじゃ?」

 ジルダはとても動揺したようにそう言った。

 

 「んなもん決まってんじゃんか!行きてぇとこに行くんだよ!」

 新はそう言い、ジルダを抱え込み、お姫様抱っこをしてバルコニーから飛び出した。

 

 新は、自らの足で既に宙を駆けていた。

 

 「新!お主はまさか、飛翔のスキルが使えるのか!?」

 ジルダはとても驚いたように新に尋ねた。

 

 「あぁ?飛翔のスキル??なんだそれ?俺はただジルダをこんなせめぇ所から連れ出したいと思っただけだ!!」

 

 ジルダはとても驚いていた。ドラゴンとは違い、翼を持たない人間がこんなに空高く、駆けまわることができていることに...そして、幼い時に今は亡き両親の連れられドラゴンの背中に乗った時のように空高くから見る街の景色を思い出していた。ジルダの両親はジルダが11歳の時に現れた強大な魔物との戦いによって既に亡くなっていた。

 他に後継者候補もいなかったため、ジルダが12歳の時には次の王権所持者となり、この国の女王として君臨していた。ジルダにとって、この夜中の散歩は、日々の女王としての責務から解放され、ただの一人の女の子として生き方を思い出すことができた忘れられない出来事となった。

 

 「すごい!すごい!!夜に見る街の景色がこんなに綺麗なものだったなんて!!」

 ジルダはとても興奮して、下の方を眺めていた。

 

 「新!!あの山を越えた先には何があるのじゃ!!あっちに行ってみたいぞ!!」

 ジルダはこの辺りで一番高い山を指さしそう言った。

 

 「ハハハ!いい感じじゃんか!"自由"っていいもんだろ!」

 「それじゃ、お嬢様!一気に飛ばして行くぜ!!しっかり捕まってな!!」

 そう言って、新は全力で宙を蹴りドラゴンの飛翔速度と遜色がないほどのスピードで空高く舞い上がった。

 

 


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