第112話 簡単なことほど案外気が付かないモノだったりする
~神殿騎士第七師団駐屯地 訓練場庭園~
進はエレナが去った後の大空を仰いだ。ちょうど長い夜が明け、太陽がまぶしく感じる。
空を仰ぐ進の背中を誰かがバシン!と叩いた。
「痛ッ!」
「マリー!!良かった、もう動けるようになったんだな!」
どうやらエリクジャーは無事に作用し、マリーもある程度は回復したようだった。
オレはそれが嬉しくて、瞳には涙を貯めていた。マリーの方も泣きながらオレに背中から抱きついていた。抱きつきながらマリーはオレの肩を何回も叩く。
「何でいつもススムさんは危険なことばかりやっているんですか!?...そんなんじゃいつか本当に私達の前からいなくなるかもしれないんですよ!!」
「ロレーヌ村で地龍と戦った時も!魔坑道の時も!そして今回も!」
「そんなに"未央さん"に会いたいんですか!!」
「いつもいつもいつも!!なんでそんなに死に急ぐような無茶な戦いばかりしているんですか!?」
「周りを安心させるために自分のことを"天才"と言って、それで過酷な戦いを全部自分で背負って!自分よりも強い相手でも逃げることなく戦いを挑んで!それでいつも血だらけになって倒れながら戦って!」
「さっきの戦いでも、私が気を意識が朦朧としてましたけど、ススムさんは負傷しながら、私が傷つけられたことに怒って、無茶な戦いをしていたのが分かりました!」
「もっと私は強くなりたい!私はススムさんに追いつきたい!!貴方に護られてばかりは嫌なんです!」
普段は物静かなマリーが今回は涙ながらに訴えてきている。オレはこの時初めて気が付いた。いつもマリーを大事にして、護ってきたつもりでも、それは逆にマリーに不安にさせていたことに。もしかしたらオレはマリーの成長の機会を奪っていたのではないか。そんな思いがオレの頭を駆け巡った。
「マリーもついこの間出会ったばかりだけど、出会った頃に比べたら大分強くなったはずだ!それはオレが保証する」
「例え、オレが死んだとしても、もう充分一人で生きていけるハズさ」
オレは振り返ることなくマリーに答えた。
「死ぬとか言わないでください!!」
「私にはもう家族がいないんです!」
「お母さんが山賊に殺されて、私が独りになった時に貴方は私に強さを教えてくれた!」
「貴方が私に生きる希望、目的、目標を与えてくれた!!」
「ススムさんが死ぬなんて私は考えたくありません!!」
「だからもう無茶な戦いはやめてください...!」
だんだんとマリーの言葉が小さくなっていくのが分かる。
「すまない...マリー」
「オレはこういう不器用な生き方しかできないんだ...」
「でもこれだけは誓う!オレは絶対に死なないと!!」
「何を根拠に言っているんだと思うかもしれないけど、言わせてもらおう」
「オレの中の正義が!信念が!責任が!理想が!名誉が!それら全てがオレに生きろそして戦って勝て!と言ってくるんだ、どんなにオレが敵に傷つけられようとも!」
「だからオレは死なないし、負けない!!」
「そんなの...そんなのってまるで呪われているみたいじゃないですか!?」
「戦いを続けることを止められない呪いに!!」
「"呪い"か...ハハハ!確かにそうかもしれないな...」
「ならマリーがもっと強くなるようにこれからも修行を付ける!」
「そして、オレに匹敵するくらいになって、オレのこの"呪い"を解いてくれ!」
オレは少し、冗談めいたようにマリーにそう告げた。
何かを決心したようにマリーは、オレにこう言ってきた。
「分かりました!!もうススムさんがどれだけ危険な戦いをしても止めません!」
「でも私も強くなります!ススムさんに負けないくらい!そして、いつの日か貴方に危険が訪れた時私が護ります!そして、いつの日か貴方のその戦いの"呪い"を私の手で解いてあげます!」
「ええっと...コホン!」
「いつまで抱きついて居るつもりじゃ!お前たち!」
リオンがオレとマリーの間に入ってそう言ってきた。
「は、はひぃ!!」
マリーが急に恥ずかしくなったように赤面し、オレの体から離れた。
「マリーずるいぞ!私も進と抱きつきたい!!」
そう言い、リオンもオレに抱きつき、スリスリと頬を摺り寄せてきた。
「えっ、ちょっとリオン!何をやっているんですか!!」
マリーは必死にリオンをオレから引きはがそうとする。
「マリーはいっぱい抱きついただろう?なら私も構わないはずだが?」
(いやいやいや、オレの意思は関係ないのかよ!オレは遊園地のマスコットキャラじゃないんだが...)
進が心の奥でそう思っていた。
「ハハハ!ススム君はモテモテだな!」
フラムさんがその光景を笑いながら見ていた。
「もう!フラムさんからも何とか言ってくださいよ~」
オレはそうフラムさんに言ったが、フラムさんは笑っているだけで特に何も言ってはくれなかった。
そんなオレの奪い合いみたいなことが数分間続いて、このままじゃ埒が明かないと思い、オレはそろそろアクアマリノに戻ることを提案した。
「そうだな!救出した人たちのことも気になるし、アクアマリノへと行こうか!」
リオンが素に戻り、提案に乗ってくれた。
とりあえず、アクアマリノへと戻ることになり、オレは戻る前に瓦礫の山から使えそうな本や資材を収納のスキルで回収して回った。
「ここの貴重な本は持っていこう!」
「おっと、ススム君!泥棒かな~」
「だが、俺も手伝おう!!」
普段は真面目なフラムさんだが、神殿騎士内の物資を持っていくことに関しては、寧ろノリノリに見えた。まぁここに置いてても誰も回収しないで、他の神殿騎士や魔物に持っていかれるくらいならという考えなのだろう。どうやら鑑定のスキルで見たところ、かなり貴重な本があったり、建物の材質はかなり貴重な材質でできていたみたいだった。ここで鉄や鋼、金、銀などの資材が大量に手に入るのはかなり儲けものだった。この資材を使って錬金を行えば上質なものが作れるだろうとオレは確信していた。中には大量の金貨などもあり、これはどう対処していいか判断がつかなかった。その辺りの判断は後でリオンに相談してみようか。
粗方、めぼしい物は回収したところで、オレの脳内に回収のスキルのレベルがマックスになったことを伝える声が流れた。
(そういえば久しく、ステータスを確認していなかったな...どれマリー達のステータスも確認しようか!)
そう思い、自分たちのステータスを確認することにした。
-----------------------------------
名前:天童進
種族:人間
性別:男
Lv.62
クラス:クルセイダー
残SP: 1410SP
◆パラメータ◆
体力:629
筋力:640
魔力:499
物理抵抗力:650
魔力抵抗力:509
精神力:505
器用さ:489
素早さ:539
◆装備◆
武器:神聖剣(+200)
防具:なし
◆アクティブスキル◆
《収納Lv.Max》《格闘術Lv.9》《白魔法Lv.9》《鑑定Lv.9》《高速演算Lv.9》《魔力制御Lv.9》《剣技Lv.9》《気配察知Lv.8》《鷹の目Lv.8》《黄土魔法Lv.8》《身体強化Lv.8》《魔力強化Lv.8》《料理Lv.7》《挑発Lv.7》《調合Lv.7》《赤魔法Lv.5》《錬金術Lv.5》《聖剣技Lv.4》《付与魔法Lv.3》《短剣Lv.3》《聖障壁Lv.3》
◆パッシブスキル◆
《異世界語翻訳》《自動体力回復Lv.6》《全属性耐性Lv.6》《全状態異常耐性Lv.5》
◆ユニークスキル◆
《超ラーニングVer2.0》
◆称号◆
異世界の天才児
信念を貫く者
-----------------------------------
-----------------------------------
名前:マリー
種族:人間
性別:女
Lv.60
クラス:戦乙女
残SP: 2285SP
◆パラメータ◆
体力:521
筋力:502
魔力:430
物理抵抗力:477
魔力抵抗力:410
精神力:401
器用さ:450
素早さ:499
◆装備◆
武器:白銀のレイピア(+60)
防具:戦乙女の鎧(+65)
◆アクティブスキル◆
《青魔法Lv.8》《魔力制御Lv.8》《赤魔法Lv.7》《緑魔法Lv.7》《多重詠唱Lv.6》《高速詠唱Lv.6》《消費魔力節約Lv.5》《加速Lv.4》《剣技Lv.4》《剣舞Lv.4》《剛力Lv.4》
◆パッシブスキル◆
《苦痛耐性Lv.7》《恐怖耐性Lv.7》《自動魔力回復Lv.5》《魔力耐性Lv.4》
◆称号◆
旅立つ覚悟を決めた村娘
-----------------------------------
-----------------------------------
名前:フラム
種族:人間
性別:男
Lv.62
クラス:爆炎剣士
残SP: 1010SP
◆パラメータ◆
体力:603
筋力:512
魔力:397
物理抵抗力:553
魔力抵抗力:441
精神力:358
器用さ:332
素早さ:401
◆装備◆
武器:爆剣-クレイモア(+95)
防具:ブレイズメイル(+75)
◆アクティブスキル◆
《赤魔法Lv.8》《黄魔法Lv.8》《剣技Lv.8》《全体攻撃Lv.8》《根性Lv.8》《魔力制御Lv.8》《視覚強化Lv.6》《気配察知Lv.6》《洞察眼Lv.5》《紅魔法Lv.4》《爆炎剣技Lv.1》
◆パッシブスキル◆
《熱完全無効》《恐怖耐性Lv.8》《苦痛耐性Lv.8》《毒耐性Lv.7》《暗闇耐性Lv.7》《混乱耐性Lv.5》《麻痺耐性Lv.3》
◆称号◆
灼熱剣士
-----------------------------------




