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第110話 もう一人の治癒魔法使い


~神殿騎士第七師団駐屯地 訓練場庭園~


 「さよならだ...ガリア」

 魔神イグと化したガリアとの戦いに勝利した進だった。

 

 「やったな!ススム君!!」

 「進!?終わったのか...やったな!」

 フラムさんとリオンはオレの近くまで来て、勝利を喜んでいた。

 

 「リオン...マリーの容体はどうだ...?」

 リオンはイグの技を喰らい、倒れているマリーにエリクジャーを与えていた。

 

 「ああ、薬は効いているみたいだ!大丈夫!しばらくすれば回復するさ!!」

 リオンはオレの肩をポンと叩き、安心するように言ってきた。

 

 「ああ、それは良かっ...」

 そこでオレは緊張の糸が切れたようにバタリと倒れてしまった。

 

 「おい!ススム君!大丈夫か!?」

 「進!進!」

 フラムとリオンは進の近くで叫んでいた。進はイグとの戦いで進の片腕と片足を失っており、そこから大量の血液を失ったことで倒れたのだった。

 それに気が付いたフラムとリオンは応急処置をしようと試みる。

 

 「くっ、どうすれば...」

 たとえ止血したとしても、既にポーションの類はここにいる誰も持っておらず、治癒魔法の使える進は御覧の通り、気を失っている状態だ。もって後数分で進は死んでしまう。そんな時だった、空より一人の女が現れた。

 

---進がイグを倒す少し前---


 「はぁ~なんでこんなもうすぐ夜が明けそうな時に、こんな面倒なことしなくちゃいけないのよ~★」

 エレナは大きなため息をついた。エレナには代わりに配下に行かせることもできた。しかし、ハイロンの話によるアーク教典に恐ろしさはどうやら六魔将である自分でないと対処できないものらしく、仕方なく神殿騎士の基地の近くまで飛んで来ていた。

 

 エレナの眼前に禍々しい暗黒闘気が広がっていることが確認できた。どうやらあの強大な魔力の持ち主が呼び出された魔神とやららしいのは一目で把握できた。そしてさらに、その魔神と数人の人間が戦っていることも上空から確認できた。

 「お~やっているねえ~★」

 

 魔神相手に人間数人で勝てるわけがないのに人間というものは無駄なことをと考えているエレナだった。万が一あの人間があの魔神を倒せば自分が処理しなくてラッキーとは思うが...。もしくは魔神のエネルギーを消耗させるだけでも自分にとって利益であるので、エレナは戦いには参加せず高みの見物に徹しようと考えた。

 

 「あの魔神の脅威度は~っとえっと...」

 「脅威度1 ★!」

 「なんだ私じゃなくてもハイロンでもよかったじゃん★」

 エレナは上空から魔神のステータスを魔眼によって観察していた。

 

 しばらくして、どうやら決着がついたようだった。

 

 「おっ、終わったかな~★」

 

 そこでエレナが見たものは衝撃だった。

 「えっ、嘘...まさかあの人間が倒したの...★?」

 

 急いで、その少年のステータスを魔眼で確認した。

 エレナはその顔に見覚えがあった。でもあり得ないと同時に感じていた。

 

 「なんで...生きているの...★?」

 「えっ、だってあの時、シン・・は死んだはずじゃ...★?」

 エレナは進を誰かと勘違いしているようだった。

 

 それが、自分の勘違いなのかどうか、ハッキリさせるため、エレナは進の元まで下りることにした。



-------------------------------


 「誰だ!?」

 最初にその魔族の女の反応したのはフラムだった。

 

 「いきなり女性に誰だとは礼儀がなってないじゃないの~★」

 エレナは少し、怒り気味にフラムに答えた。

 

 「まぁそんなことより、その子をちょっと見せて頂戴★」

 

 「な、なぜいきなり現れた貴様にススム君を見せなければいけないんだ!」

 フラムはいきなり現れたその女を警戒し、腰にぶら下げた剣に手を掛ける。

 

 「あ~勘違いしないで欲しんだけど、別に戦いに来た訳じゃないわ~★」

 「む、し、ろ、逆★」

 「その子を助けようと思ったのよ★」

 エレナがチッチッチッ指を振る。

 

 「助けるだって!?」

 「で、できるのか...?」

 

 フラムの問いに答えることなく、エレナは進の近くまでスタスタと歩いた。

 

 「白魔法:エクストラヒール!」

 見る見るうちに進の左手と右足が元に戻り、全身の傷も塞がっていった。

 

 「こ、これは、治癒の白魔法...なぜ魔族の女が使える...?」

 フラムには意味が分からなかった。なぜなら本来、治癒の白魔法は聖女しか使えないものだったからだ。進の場合は異世界から来たというイレギュラーと考えていたが、目の前の魔族は間違いなく、この世界ヌバモンドの生まれであり、イレギュラーではないのである。

 

 「よし、これで治ったわ★」

 「大分血を失っていたみたいだけど、私の白魔法は血液も再生するから問題ないわよ★」

 「あ~あとここで見た魔法のことは他言無用にしてくれると嬉しいかな★」

 目の前の悪魔が手を合わせてお願いしてきている。もうフラムには何が何やら訳が分からなかった。なぜなら、そもそも魔族が何もなく人間のピンチを救うなどあり得ないし、人間に対してお願いするなんてことも自分にとってはあり得ない出来事だと考えて今まで生きていたからである。

 

 暫くの間、異様な沈黙が続いていると、進が起きた。

 「うっ...ここは...?」

 「イグを倒して、その後、ああオレは気絶したのか...」

 「で、そこにいる魔族の女!あんたは誰だ?」

 

 「元気に起きたみたいね★」

 「人に名前を聞くときはまずは自分からって言われなかったのかしら~★」

 

 「フッ、魔族に人のことを言われるのか...」

 「まぁいいや、オレは"天才"天童進だ!」

 

 「そう、シンじゃないのね...」

 エレナは少しがっかりしたように小声で言った。

 「私はエレナ!!」

 「魔王軍の"六魔将"エレナ!!」

 エレナのその自己紹介にそこにいたエレナ以外は驚愕した。

 

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