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陽に濡れる  作者: 九丸(ひさまる)
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もつれ4

 僕は貴樹の腕を振りほどき、黙って先を進む。


「待てよ! 一弥!」


 追い付いてあれこれと言い訳をするけれど、そんな言葉は僕の耳を素通りしていく。


 歩く先にぶつかる大通りを走る車のライトがボヤけて見える。


 貴樹の言い訳が止まり、いきなり腕を強く引かれて灯りもない路地に連れ込まれた。


 壁についた両腕が僕の逃げ場をふさぐ。


「なんか誤解してないか?」


「……」


「なあ、なんか言えよ」


 言えよと言われても、俯いてごまかしてはいるけれど、僕の目を潤ますものを押さえるのに必死でそれどろじゃない。


 すると、そっと右手を添えられて顔を上げられる。塞がれる唇。さっきまで飲んでいたテキーラの香りが口先から鼻に届く。


 目の下を優しく人差し指で拭われ、離れた唇が「悪かったな」と囁く。


 綾さんならこんな嫉妬はしないのかなと、自分の小ささを嘆いてしまう。


「帰ろうぜ」


「うん」


 僕は自然と口にしていた。


 真っ暗な部屋で貴樹の腕に抱かれて微睡む。押し付けている胸は厚く熱く、そして柔らかくもあり。


「なあ、一弥。お前の夏休みに合わせて、二人で札幌に行かないか?」


「え、でも勘当されてるんじゃ……」


「別に実家に顔出すわけじゃねえし、関係ねえよ」


「じゃあ、行ってみたいな。貴樹の生まれた街に」


「よし。連れてってやるよ」


 交わした約束と言葉の温もりが、僕を眠りへと誘う。

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