表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽に濡れる  作者: 九丸(ひさまる)
12/12

それから

「一弥、早く行こうぜ!」


「ちょっと待ってよ。もうすぐだから!」


 僕は急いで玄関で靴をはく。


 先に外で背中を向けている影に、「お待たせ」と声をかけ、振り向いた笑顔に微笑み返す。


 雲一つない青空と、頂点間近でたぎる太陽。マンションの七階から受ける風は、梅雨の終わりを告げるように優しげに渇いている。


 あれから一年近くが経過した。結局貴樹からの連絡はないままだ。僕から連絡することもしなかった。しても貴樹は出なかっただろう。貴樹の性格上そんな気がしたし、追い詰めるようなこともしたくはなかった。


 綾さんとはなぜか今でもそのままの関係だった。同じ男を愛したせいか、精神的に分かり合えたような気さえする。


 そして僕にも出会いがあった。濡れそぼっていた僕に傘を差し出してくれた人。貴樹とは違って惹き付ける眩しさがあるわけでも、強引で男らしく見えるタイプでもないけれど、差し出された傘には嘘偽りがなくて、そして、とても大きくて綺麗だった。あの日見たエメラルドやアメジスト、他にもいろんなものがちりばめられた黒い傘。そんな傘に入りながら、僕はゆっくりと優しく温められていった。


 貴樹を忘れることはないだろう。『おまえはそのままでいい』と僕に初めてをくれた人だから。だからこそ、今のこの温もりがあるのだから。


「行こう」


 僕はそっと手を握って歩み始めた。並んで歩く彼と一緒の傘に入って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ