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陽に濡れる  作者: 九丸(ひさまる)
11/12

陽に濡れる4

「……帰ります」


 もう僕は力尽きていた。


 僕の背中に、「カズちゃん、またいらっしゃい」と綾さんの声が響いて消えた。


 眩しいくらいの快晴の空の下。僕は絶望の陽に濡れる。髪から滴り落ちた光がアスファルトに染み入るようだ。何を探すか前行くカラスに導かれるように歩く。陽を浴びて艶めく黒にはエメラルドがあり、アメジストがあり。その黒で傘を作ったならば、僕も濡れずにいられるだろうか。寒さに凍えることもないだろうか。


 僕は絶望の陽に濡れながら、カラスに導かれるように歩いた。

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