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突入②

 遺跡調査隊が開かれた城門に入りしばらくすると“ゴゴゴゴゴ……”という音とともに開いていた城門は再び閉じる。


(やっぱりか……まぁ当然だよな)


 シオンは動揺する事もなく城門が閉まるのを当然のように見ている。チラリと視線を調査隊のメンバーに向けるがほとんどのメンバーに動揺は見られない。城門が開いたのであれば閉まるのも想定してしかるべき事である。


「さて、閉じ込められたという事じゃな。各員注意するんじゃぞ」


 ナルクはまったく気負うことなく言い放つと周囲の者達も頷いた。


「ナルク殿、そろそろ独自の行動を取らせてもらいたいのだが」


 四聖天(レミュオン)のリグガルドがナルクに言う。リグガルドの言葉にナルクは頷くと言う。


「そうじゃな。帝国側はこれより各自で行動するとしよう。この城で見つけたものは基本的に商会が買い取る事になっておるからな。ただしあまり略奪などを行うとこの城の主から相当な怒りを買うだろうから注意は必要じゃぞ」


 ナルクはそう言うとリグガルドは頷いた。


「心配するな。我らの目的はコソ泥行為ではないからな」

「そうか、気を付けるのじゃぞ」

「誰に言ってるんだ?」


 リグガルドはそう言ってニヤリと笑うと三人の子どもに視線を移すとそのまま煙の様にふっと消えた。


「な……」

「え?」


 シオンとルフィーナの口からあまりの出来事に驚きの声があがる。人智を越えた速力ででシオン達の前から消えたわけでない。突然気配が消えたのだ。


(何らかのスキルによるものか……敵に回すと厄介そうだな)


 シオンとしては四聖天(レミュオン)の実力の高さを再確認した思いである。


(私の気殺……のようなスキルかしら? でもそれだと姿が完全に消えるまでは出来ないはず……)


 ルフィーナも自分の気殺に近いものを感じたが、それだけでは説明のつかないことがある事に少しばかり考え込んでいた。


「俺達も独自に動かさせてもらうぞ」


 そこに紅い風(シュキュール)のアルメックがナルクに言う。


「ああ、別に構わんぞい」

「ふ……いくぞ」


 アルメックは配下の者達に言うと紅い風(シュキュール)はアルメックに付き従い一行から離れる。

 四聖天(レミュオン)とは事なり一瞬で消えるような事はなくシオン達はそのまま見送る事になった。


「坊主と嬢ちゃんはどうする?」


 ナルクは少しの揺らぎも感じられない声で二人に尋ねる。


「俺達はもう少しナルクさん達と行動を共にしますよ」

「私もその方が良いと思います」

「そうか。それならそうしてもらおうかの」

「「はい」」


 シオンとルフィーナの返事にナルク達は頬を緩ませた。


「しかし、帝国側は余裕があるな。こちらは襲われた時の対処のために戦力分散しないように心がけているというのにな」


 ジュークがそう言うとフィグム王国側の傭兵達も同様に頷いた。ジューク達の反応も尤もである。このような得体の知れない場所で分散するというのは命取りになる行為である。


「まぁ元々お主等と違って儂等は烏合の衆じゃからな。拙い連携を求めた結果、足を引っ張り合うような事がないようにせねばいかんのじゃよ」


 ナルクの言葉にジュークは少しばかり目を細めるのをシオンは気づいた。


(今のジュークさんの反応は気になるな。気をつけておくか)


 シオンは気にかかったことをそのままにしておくことは決してしない。違和感を感じると言う事はただ、言語化して説明する事が出来ないだけで無意識的に何かを感じ取っているということなのでそれを大切にしているのだ。


「た……ジュークさん。誰か来ます」


 フィグム王国側の傭兵の一人がジュークにそう告げる。その言葉を聞いた瞬間に全員が即座に戦闘態勢に入る。この辺りの連携はフィグム王国側の方が一枚優れているように感じる。


(確かに、烏合の衆のこちらよりも連携が遥かにとれている。……いや、むしろわざと拙くしているような感じもするな)


 シオンはフィグム王国側の戦闘態勢に入る速度はすばらしいものであるが、それでも僅かばかりの違和感を感じたのである。もっと出来るのに押さえているという印象だったのだ。


「え?」

「は?」


 前方の闇の向こうから数人の声が聞こえてくる。その声にシオン達は聞き覚えがあった。


「な……」

「は……?」


 闇の向こうから現れた人達の姿が見えたときに全員が呆けた表情と声を発した。


 なぜならば、闇の向こうから現れたのは先程自分達と別行動を取るといって別れたばかりの紅い風(シュキュール)がいたのである。紅い風(シュキュール)の面々も面食らったような雰囲気が漂っている。


「お主等、いきなり戻ってきたわけか。しかし、戻ってくるには方向が随分と違うのう?」


 ナルクが紅い風(シュキュール)に尋ねるとアルメックが返答する。


「いや、お前らこそなぜここに……?」


 アルメックは動揺を隠しきれない様子であった。その様子はまったく嘘をついているようには見えない。


「儂等はお主らと別れてから一歩も動いておらんぞ」

「何?」

「お主等は別れてから前方の方からすぐにやって来たというわけじゃよ」

「な……」


 ナルクの返答からアルメック達は動揺の声が発せられた。


「あの、みなさんは随分と驚いているようですが、ひょっとして何も感じる事なく前方に来たと言う事ですか?」


 シオンの問いかけにアルメックは静かに頷く。


「ああ、俺達はそのまま歩いてきただけだ。何も感じなかった」

「そうですか……」


 シオンはアルメックの返答に考え込む。


(一手仕掛けてきたか……)


 シオンはさりげなく紅い風(シュキュール)達を見ると気取られないように目を細めた。


 ボッボッ……ボッ……。


 その時篝火(かがりび)に火が灯り始めた。


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