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告白②

 本日は二話同時公開ですので、昨日の続きは前話になります。

 屋敷を出てしばらく進んだ所でルフィーナがシオンに声をかけてきた。


「ねぇシオン、アルティナがさっき言った事なんだけど」


 ルフィーナは少しばかりモジモジしながら言う。


「ああ、アルティナも考えすぎだよな。ルフィーナが俺を仲間として見てるのは十分分かってるさ」

「へ?」


 シオンの発した言葉にルフィーナはつい芸のない返答をしてしまった。


(え? ひょっとして私ってシオンに恋愛対象外とかの誤解を与えちゃってる?)


 ルフィーナはシオンの言葉に戸惑ったために即座にシオンの言葉を否定することが出来なかった。そこにシオンがさらに言葉を続ける。


「だってこの間の話で異種族に対して恋愛感情が芽生えたら嫌悪感を持つと言っていただろ? 今までのルフィーナの俺への態度には嫌悪感なんか一切感じなかった。という事はルフィーナが俺に恋愛感情を持っていないという証拠じゃないか」


 シオンとすれば心の中に少しばかり痛みを感じる返答であった。しかし、現実は現実で受けてとめなければならないのだ。


「え? ちょっと待って……確かに嫌悪感は感じてないんかないけど……だからといって私が……その……」


 ルフィーナが慌てたようにシオンの言葉に答える。だが、しどろもどろであり声にも自信というものが完全に欠如していた。


(……ひょっとして俺何か間違った?)


 シオンはルフィーナの態度から自分自身が何か誤解しているのではという考えが芽生えてきた。この疑惑をきちんとしない限りはシオンは前に進めないと思いゴクリと唾を飲み込みルフィーナに尋ねる。


「ルフィーナ、ちょっと確認なんだが実家で施された洗脳はほとんど解けてるって言ったよな?」

「う、うん」

「でもアルティナの近くに立つ兄さんを見て、暴走したからまだ洗脳は完全に解けてないという事だよな?」

「う、うん」

「そして、俺がルフィーナに言った『恋愛感情を持っていないだろ』という言葉にそれほどまでに動揺すると言う事は……」

「あ……」


 シオンの言わんとする所を察したルフィーナは顔を赤くする。見ていたシオンも驚く程の変化である。


「まさかルフィーナは俺の事を……?」

「わ~~~~~~~~わ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


 シオンの言葉を遮るようにルフィーナが叫ぶ。しかも手を慌てたように振り回しており誰がどう見ても動揺しきっていた。

 閑静な住宅街のために周囲の人通りは少ないのだが、それでもゼロでない以上すれ違った人達が怪訝な視線を二人に向けた。それに気づいた二人は気まずそうに足早に通り過ぎる。


「あのさ、ルフィーナ」

「にゃ、にゃに!!」

「ひょっとしてルフィーナって俺を恋愛対象として見てくれてる?」

「あ、あ」


 ルフィーナはますます顔を赤くする。この段階で既にシオンの返答に肯定を示していると言って良い。


(これはこちらから……言うべきだろうな。……がんばれ俺!! 勇気を出せ!!)


 シオンはルフィーナに対して自分から伝える事で心理的負担を軽くしようと思ったのだ。


「ルフィーナ、俺はお前の事を当然恋愛対象と見てるぞ!!」

「ふぇ!!」

「いや、正直好きだ!! ……あっ!!」


 シオンはついつい勢い余ってルフィーナへの想いを告げてしまったことに気づく。本来は想いを告げるつもりはなかったのだが、勢い任せであり止める事は出来なかったのだ。シオンのフライング気味の告白にルフィーナは驚きの表情を浮かべ顔を赤くしながら言う。


「あ、シオン……ありがとう。その……私もシオンの事が……好き」

「え、本当か?」

「う、うん」


 シオンとルフィーナの間に沈黙が落ちる。


(ルフィーナは俺の事を好きと言ったよな……マジで?)

(シオンが私の事を好き? え……ちょっと待って私も今、シオンに好きって言っちゃった?)


 シオンとルフィーナは勢いで告白した後に自分が何を言ったかに想いを巡らした事で一気に羞恥心が湧き起こったのだ。しかし、互いの気持ちが繋がっていた事も確認したことで少しずつ嬉しさが湧き上がってきた。

 シオンは意を決してきちんと告げる事を決断した。シオンは一度決断したら思い切りが良い。このままあやふやな態度をとるのは良くないと考えたシオンは迷わず動く。


「ルフィーナ、俺はお前が好きだ。俺の本当の恋人になってくれ!!」

「はい!!」


 シオンの告白にルフィーナは即座に返答する。反射的に応えたかのように見えるがこの世の幸せの全てを独り占めにしているかのような幸せそうな笑顔が浮かんでいた。


「な、なんか、照れるな」

「うん。でも嬉しい」

「俺もだ」


 シオンとルフィーナはそう言うとお互いに笑った。嬉しさと安堵の気持ちが二人の心の中に留めなく溢れ出してくる。


「……とりあえず行こうか」

「うん♪」


 シオンをルフィーナはそう言うと帝国への道を歩き出した。


「えい♪」

「お、おいルフィーナ」


 数歩歩いた所でルフィーナがシオンに腕を絡めてきた。これにシオンは戸惑いの声を発した。


「もう私達恋人同士なんだから良いよね♪」

「あ、ああ。ただし王都を出るまでだぞ」

「わかってる♪」


 シオンの少しばかり照れた声にルフィーナは嬉しさを噛みしめながら答えた。

 突然の告白に驚いたかと思います。実は作者自身が驚いており、「どうしてこうなった?」と頭を捻ってます。

 流れでこうなってしまったのですが、頭の中で彼らが勝手に動いた結果です。作者の手綱を振り切っての告白劇になってしまいましたがこれも仕方ないと諦めてます(笑)

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