ルフィーナ②
シオンとルフィーナは何事もなく冒険者ギルドに到着すると早速受付のところに行ってルフィーナがギルドに登録したい旨をグレイスに伝えるとグレイスは担当の職員を呼んだ。
シオンは一応、念のためにルフィーナの後ろにつき分からないことがあったら助けようとしていたのだ。
ルフィーナはシオンの行動の意味を理解しているようであり、小さく頭を下げた。
(ルフィーナは人の心の機微を読むのに長けているな)
それがルフィーナへのシオンの評価である。
シオンの心配をよそにルフィーナの手続きは滞りなく進んでいるように見える。ルフィーナは決して世間知らずではないようで職員の指示通りに手続きを進めていく。
そして気になる祝福の記入となった。
(ルフィーナは祝福を何と書くかな?)
シオンが実は気になっていたのはこのことであった。ルフィーナの祝福を知られることの恐怖感は確実にあったために本当のことを書くはずはないと思っているが、それでも全く関係のない祝福を書く可能性は少ないと見ていたのだ。
「ルフィーナさんの祝福は【隠密】ね」
「はい、と言ってもスキルは『気殺』という気配を絶つだけのものです」
「へ〜斥候とか索敵なんかで威力を発揮しそうね。需要があると思うわよ」
「本当ですか!! ありがとうございます!!」
職員の言葉にルフィーナは嬉しそうな声を上げる。ルフィーナの嬉しそうな声を聞き、職員は顔を綻ばせる。
人が喜んでいる姿が好きな職員なのだろう。
「あそうだ。シオン君」
そこでいきなりシオンに職員は声をかけてきた。自分にいきなり話が振られるとは思っていなかったのでシオンは不意を突かれてしまった。
「は、はい。何でしょう?」
シオンの声がやや上ずったものになったために職員は苦笑を浮かべた。
「ごめんね驚かせちゃったみたいね。シオン君、あなたフリーだからしばらくルフィーナさんの面倒を見てくれないかしら?」
「俺がですか? 別に構いませんがルフィーナの気持ちが優先ですよ」
シオンは真面目くさった表情でそう返答する。冒険者は命がけの職業であるために新人の時は先輩冒険者が新人について色々と指導するということがあるのだ。
今回の職員からの話もその類であることをシオンはすぐに察したのだ。
ルフィーナと顔見知りであり、シルバーランクのシオンはうってつけであると言って良いだろう。
シオンの言葉を受けてルフィーナは即座にうなづいた。
「よろしくお願いします!!」
ルフィーナの返答にシオンも職員も顔を綻ばせた。
「決まりね。それじゃあシオン君、ギルドから支払われる日給は相場通り一日銀貨一枚ね」
「はいわかりました」
「そうそう、ルフィーナさん。最後だけど顔をちゃんと見せてくれるかしら? どうしてもという理由があるなら構わないけど、顔を見せておいた方がシオン君も安心だと思うの」
「そ、そうですね」
ルフィーナはそう返答するとフードをとって顔を見せた。
そこには美人というにはほど遠いルフィーナの顔があった。
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