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戦い終わって①

「ふむ……シオン殿の実力は想定以上だな」


 アーヴィングがへたり込むシオンを見やりアルムに静かに言う。


「ええ、兄としてこれほどの実力を持っているというのは嬉しくて仕方ありません!!」


 アーヴィングの言葉にアルムは本当に嬉しそうに言う。実際に弟であるシオンが褒められて上機嫌になっているのは事実であった。


「ここまでの実力を有しているのなら、貴族に誘拐されアルム殿の脅迫に使われることはないな」

「認めていただいて良かったです」


 アーヴィングの言葉にシオンは疲れの残った表情を浮かべつつ返答する。


「それにしてもあっさりと認めましたね。俺を監禁すればフィグム王国としても兄さんの行動を制限することが出来るのではないですか?」


 シオンの言葉は慇懃無礼の極致と言うべきものだろう。シオンとすれば少しばかり意趣返ししたいという所なのだが、アーヴィングは余裕で受け流しつつ言う。


「そんな事をすればアルム殿は間違いなくこの国を見限るだろうね。もちろん君を救い出してからこの国を出るのは間違いないな。そんな事になれば本末転倒だよ」


 アーヴィングの言葉にシオンも頷く。


「それに君を捕らえたとして君が大人しくしているはずはない。君ほどの実力者を監禁するとして君を押さえることの出来るものは、この国に片手の指で数えるしか存在しないだろうな」


 アーヴィングの言葉にシオンは沈黙する。それを見てアーヴィングはさらに言葉を続けた。


「それならいっその事、君と友好関係を築いた方が遥かに国益に叶うというものだ」

「依頼をしてくれれば協力はしますよ」


 シオンの返答にアーヴィングはニヤリと笑う。


「そうか。君は冒険者だ。国が冒険者を雇うというのは別に珍しい事じゃ無いな」

「ええ、そういう事です」

「但し適正価格で雇うと言うことだけは頭に入れておいてくれ。アルム殿の弟と言う事で特別扱いをするつもりはないからな」

「わかりました」


 シオンはアーヴィングにそう返答するとアルムの方を見る。


(マッシャー団長は“特別扱いしない”といったな。つまりは兄さんの弱点になると判断すればそれなりの対応を取ると言う事か)


 シオンはアーヴィングの言葉をそう解釈していた。シオンにとってアーヴィングは決して気安く接する存在では無いのだが、決してアーヴィング自身を嫌悪する相手と見ているわけではなかった。

 彼なりにアルムの事を心配している故の行動であると認識しているからである。


「シオン、今日はこれで訓練は終わりだ」

「うん」

「それで今日は俺達の屋敷に泊まってくれ」

「いいの!?」

「ああ、もちろんルフィーナさんもエルリアさんもどうです?」


 アルムはそう言うとルフィーナとエルリアも即座に頷いた。アルム達の屋敷には関係者達がいるのだからわざわざ別の所に泊まる必要はない。


「助かります」

「御言葉に甘えます」


 ルフィーナとエルリアの返答にヴィアスとアルティナも嬉しそうな表情を浮かべた。


「お姉様♪」


 アルティナがルフィーナに抱きつくとルフィーナも慈愛の表情を浮かべてアルティナの頭を撫でる。その行為がどうやらアルティナにとって嬉しかったのだろう一気に表情が緩んだ。


「あ、そうだ。シオン」


 しかしすぐにルフィーナが何かを思いだしたかのようにシオンに声をかける。


「どうした?」

「これから王都の冒険者ギルドにいかない?」

「ギルドにか?」

「うん、王都の冒険者ギルドがどんな感じか見たいし、どんな依頼文書があるか興味はない?」


 ルフィーナの提案にシオンは思案顔を浮かべた。


(このタイミングでみんなと別行動をとりたい……俺に何か話があると言うことだな)


 シオンはそう判断するとニッコリと笑って頷いた。


「そうだな。確かに興味はあるな。まだまだ時間はあるしギルドに行ってみるか」


 シオンはそう言うとルフィーナも頷いた。


「兄さん、聞いての通りだ。俺とルフィーナはこれから冒険者ギルドに行くよ」

「そうか。わかった」

「アルティナも少し待っておいてね。後でたっぷりと話しましょう」

「……はい」


 シオンとルフィーナの言葉にアルムとアルティナはやや不満げな表情を浮かべるが反対の言葉を言ったりしない。そのあたりの分別はついていると言うことだろう。


「それじゃあ、いってきますから」


 シオンはそう言うと落ちた自分の剣を拾い上げると冒険者ギルドに向かって歩き出した。

 二人を見送った所でアーヴィングがアルムに声をかける。


「シオン殿の祝福(ギフト)はかなり特殊なもののようだね」

「はい。シオンの持っている剣はありふれた市場に流通している剣です。ですが炎の魔剣(イフリート)と同じ能力を持っていました」

「それどころか本当の持ち主よりも炎を上手く操っていたな」


 アーヴィングの言葉にアルムは頷く。炎の魔剣(イフリート)の真の持ち主である『オリハルコン』クラスの冒険者であるボルキュスと面識のあるアーヴィングとしてみれば驚かずにはいられない。


「シオンは何かしらのスキルを使って自分の武器に魔剣の能力を付与することが出来るのかも知れませんね」


 アルムの言葉にアーヴィングは少しばかり目を細める。アルムの言った通りならばシオンの重要性は一気に増すことになる。もし部下達の武器に魔法の力を付与させることが出来るのならばフィグム王国の軍事力は一気に跳ね上がるのは間違いない。


(シオンの祝福(ギフト)は【偽造者】……その辺の事は伏せておいた方がよさそうだ)


 アルムは偽造者というシオンの祝福(ギフト)を伏せておいたのはシオンのためになるという勘に従ってのことである。別にアーヴィングを警戒しているわけでは無いのだがあまりシオンの祝福(ギフト)の事は触れ回らない方が良いと思った結果であった。


「まぁいずれにせよ、シオン殿とは友好関係を保ちたいものだな」

「アーヴィングさんにそう言ってもらえると私としても嬉しいです」


 アルムとアーヴィングはそう言って笑った。

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