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兄との再会⑯

 ドゴォォォ!!


 シオンの右拳がイーブスの顎に直撃する。シオンはこの時「魔拳」のスキルを使用しており魔力によって強化された拳がイーブスの顎に直撃したのだ。

 この一撃でイーブスの顎、歯が砕かれイーブスの口から血と歯が撒き散らされた。


 シュン!!


 シオンは追撃の手を緩めることなく次の攻撃を放つ。左肘を振り上げ砕かれた顎に再び容赦ない追撃を行ったのだ。

 魔拳の一撃によって砕かれた顎に再び肘振り上げが直撃、そしてシオンはそのまま掌打を左肩に振り下ろすと鎖骨の砕ける感触がシオンの掌に伝わった。


 この一連の動きに淀みは一切無く非常に滑らかな連撃であった。イーブスはそのまま倒れ込む。すでに意識を失っていたのである。

 イーブスが倒れた事に部下達の動揺は明らかであった。シオンがジロリと部下に視線を向けると部下達は武器を投げ捨てて両手を上に上げる。もはや勝ち目のない状況で徹底抗戦する意思はなかったのである。


「降伏を受け入れよう。死にたければ動いて良いぞ」


 シオンの言葉に悪食(イベルジスト)の面々は凍り付いたように動かなくなった。シオンの言葉が脅しでも何でもないことを本能が察したのである。


「ルフィーナ、こいつらが妙な真似をしよう(・・・)としたらルフィーナの判断で始末してくれて構わない。 俺も判断したら容赦なくやるつもりだ」

「了解」


 シオンの恐ろしい提案にルフィーナは躊躇いなく簡潔に了承の意を示した。悪食(イベルジスト)の面々は二人の会話に震え上がった。

 シオンは妙な真似をしたら(・・・)ではなく、しよう(・・・)としたら始末すると言ったのだ。つまり実際に行わなくてもシオンとルフィーナの判断によって悪食(イベルジスト)の面々はいつでも命が失われると言う事なのだ。


「えっと……残ったのは七人か。残りの二人は結局参戦しなかったな。おい」

「は、はい」


 シオンはそう言うとルベックに声をかける。ビクリと肩をふるわせてルベックはシオンに返答する。完全にシオンに服従している者の声であった。


「残りの二人を捕まえてこい。もし失敗すればわかってるな?」


 シオンの言葉にルベックはブンブンと凄い速度で首を縦に振るとそのまま残りの二人を捕まえるために駆けだした。イーブスの風の塊の傷は決して浅いものでは無いのだがシオンの命令に背くなどルベックの頭にはない。


「エルリアさんはもう一度こいつらを治療してもらえますか?」

「うん。それは良いけど。どうして最初の人達はこっちについたの?」


 エルリアの疑問にシオンは迷わずに返答する。


「ああ、俺のスキルの「闇の傀儡(グラムドルス)」です。戦闘で勝った相手を問答無用で操る事のできる能力なんです」

「前の「魔眼」とは違うスキルなの?」

「はい。あっちは一定の実力以下なら戦闘を行ってなくてもかかります。でもこの闇の傀儡(グラムドルス)は一度戦闘を行い勝つ必要があります。そして勝利すれば相手の強さに関係なくかかります」


 シオンの言葉にエルリア自身は忌避感はそれほどないようなのは、やはりこのスキルによってこの場をくぐり抜けることが出来たのが大きいからであろう。


「でもいつ仕掛けたの?」


 エルリアは首を傾げながら言う。ルベック達が意識を取り戻してからまったく闇の傀儡(グラムドルス)を使用した形跡を見つける事が出来なかったのだ。


「こいつらが気絶してるときに俺がこいつらを集めたじゃないですか。その時に仕込みました。スキルの使用条件に敗者の頭部に触れる必要があるんですよ」

「じゃあ。あのルベックとか言う人の治癒を行ったのは……」

「はい。あいつは結構強かったですからね。念を入れて仕込んだんですよ」

「なるほど。納得したわ」


 エルリアはうんうんと頷くと両手を挙げている男達に視線を移した。


「ルフィーナ」

「ん?」

「お前が伸した二人なんだけどそいつらにはお前が闇の傀儡(グラムドルス)をかけておいてくれ」

「了解。でもその前にこの二人の治療をしておいてくれない? 死んじゃうわ」


 ルフィーナはそう言うと視線を移すとルフィーナによって斬り飛ばされた腕から血が流れ続けている。


「そうだな。エルリアさん。この二人から先に治療してください」

「わかったわ」


 エルリアは倒れ込む二人の元に駆け寄るとすぐさま治癒魔術を施した。それを見てシオンとルフィーナは視線を交わすとどちらともなく頷いた。シオンが懐から木札を取り出すとすれ違い様に木札を手渡した。


「どうですか?」


 シオンはエルリアに声をかけるとエルリアは視線を外すことなく返答する。


「そうね。ギリギリ間に合ったと言うところね」

「そうですか」


 この会話に特段の意味など無い。ただ単にルフィーナに木札を手渡すのを誤魔化すための会話である。


「それじゃあ。よろしくお願いします」

「任せてちょうだい」


 シオンはそう言うとイーブスの元へと歩く。もちろん治療と闇の傀儡(グラムドルス)を仕込むためである。

 シオンはルベック同様にイーブスの頭に手を触れると治癒魔術と闇の傀儡(グラムドルス)を施す。


 程なくしてルベックが二人の男達を連れて戻ってきた。男二人は項垂れておりその表情は青を通り越して土気色になっていた。


「ご苦労。こいつらが目が覚めるまでそのまま待て」

「はい!!」


 シオンは冷たく言うとルベックと男二人はそのまま直立不動となった。


 十分程してからエルリアは治療を終えるとイーブスの元にやって来るとシオンと一緒にイーブスの治癒を始める。代わろうという言葉がなかったのはシオンの目的が闇の傀儡(グラムドルス)を仕込むことだと言う事が分かったからである。


「エルリアさん、すみませんが治癒をやってもらって良いですか? すでに闇の傀儡(グラムドルス)は仕込んでありますから」

「まかせてちょうだい」


 シオンの言葉にエルリアはすぐに了承する。許しを得たと言う事でシオンはイーブスに仕込んだ闇の傀儡(グラムドルス)を発動させておいた。これでイーブスがエルリアに危害を加えるのは不可能である。


「ルフィーナ、終わったか?」

「うん」


 シオンの言葉にルフィーナは即座に返答すると二人を放っておいてシオンの元に歩いた。


「ねぇ……シオン」

「なんだ?」

「こいつらどうするつもり?」


 ルフィーナの言葉に悪食(イベルジスト)の面々の注意は二人の会話に集中することになった。


「そうだな。役に立たせるつもりだ。もし役に立つつもりがないのならここで始末する事にしよう」


 シオンの返答に悪食(イベルジスト)の面々は震え上がった。

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