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兄との再会⑩

 シオン達は追跡者とここで決着をつけるために周囲を確認する。自分達が迎え撃つに都合の良い場所を探すことにしたのである。

 現在、シオン達が把握している追跡者達の気配の数は七つである。七つの気配は一応秘匿しようとしているのだが、シオンとルフィーナはそれをたやすく看破していた。ちなみにシオンは「気配察知」のスキルを使用していないのだがスキルを使わなくともシオンの気配の察知は相当鍛えられているため察知する事が出来たのである。


「数は七つ……だが手練れがいるとして俺達が察知していないものがいる可能性を考えれば油断はできないな」

「そうね。それなりの実力は有していると思うけど問題無いと思うわ」


 シオンとルフィーナの会話をエルリアは黙って聞いている。戦闘が専門ではないエルリアにとって足手纏いにならないためにはどう行動すべきかを思案していた。


(とにかく私を人質に取ろうとするから……)


 エルリアは自分が戦闘において大した戦力にならない事を理解していた。もちろんまったく戦いの心得が無いわけではないのだが、誘拐されそうになった時に悪食(イベルジスト)の四人に勝つ事は出来ないと察して逃走を選んだのである。


「ルフィーナは戦闘が始まったら基本的にエルリアさんの護衛をしてくれ。討ち漏らした奴等を倒してほしい」

「了解♪」

「エルリアさんはルフィーナと一緒に行動してください。エルリアさんの仕事は戦闘終了()になります」

「あ、はい」


 シオンの言葉にエルリアは緊張の度合いを高める。戦闘終了()と言う事は激しい戦闘によってシオン、ルフィーナが手傷を負う可能性があると考えたのである。


「さて……この辺で良いかな」


 シオンは立ち止まると周囲を見渡す。そこは二十メートル四方のスペースで周囲には木々が生えている場所である。二十メートル四方のスペースは土であるが所々にゴツゴツとした石が顔を覗かせている。


(まずは……これだな)


 シオンはマントの中で木札をボキリと折る。折られた木札には「火炎魔術」のスキルが込められており、シオンの中に火炎魔術のスキルが宿る。


(次はこれっと……)


 シオンはもう一つの木札をボキリと折る。その木札には「流水魔術」のスキルが込められており、シオンの中には流水魔術のスキルが宿る。この段階でシオンは「火炎魔術」「流水魔術」のスキルを身につけているのだが、当然他の者達はその事を知らない。


(今回は何を使うのかしらね?)


 ルフィーナはシオンが何かのスキルを発動した事は気づいているがそれが何かまでは分かっていない。


「ルフィーナ、とりあえず先制攻撃は俺が行うから、二人は俺の後ろに隠れてくれ」

「わかったわ」

「わかりました」

「ちょっと熱い(・・)かも知れないけど、俺の後ろに隠れてれば大丈夫だ」


 シオンの言葉にルフィーナはシオンの発動しているスキルが何かを察した。炎を扱うタイプのスキルである。ルフィーナが知っているシオンの偽造したスキルで炎と言えば「火炎魔術」であると結論づけたのである。


(先制攻撃でいきなり火炎魔術を放つという訳ね。……お気の毒だわ)


 ルフィーナはかつてリッチであるハルドの防御陣を突き破った火炎魔術の威力を思いだし追跡者達にふりかかる不幸に同情せざるを得ない。

 まぁだからといって容赦をしようという気にならない。そのような目に遭いたくなければシオン達に襲いかからねば良いだけなのだ。


「さ、準備は整ったと言う事でアホ共を待つとしよう」


 シオンの言葉にルフィーナとエルリアは静かに頷いた。ルフィーナは緊張とは皆無であり、エルリアは若干緊張しているようであった。


 シオン達が立ち止まり追跡者達に視線を向けると追跡者達が姿を見せた。数は五人である。あとの二人は木々の影に隠れてシオン達の裏側に回り込もうとしているようであった。


「どうやら、二人は不意を衝こうという算段らしいぞ」

「え? 気配がダダ漏れなんだけど……」

「そういうな……無い頭を絞って考えた作戦なんだ。この段階で看破したら可哀想じゃないか」

「まぁ……そうなんだけど、凄いわね。まだ始まってもないのに失敗する事が出来るなんて中々出来る事じゃないわよ」


 ルフィーナの声に呆れを通り越して同情の度合いが高まっている。どんな作戦も実行前に失敗はしないものなのだが、その絶対の真理を彼らは見事に裏切っている。


(合わせるのも面倒だ……やっちまうか?)


 シオンは追跡者のあまりにも稚拙な行動にいっそ怒りにも似た感情が芽生えていた。真面目に相手するのがアホらしくなるほど雑な作戦を追跡者達がとった事に対して“舐めすぎだろう”と思うのも仕方の無い事だ。

 ある意味、追跡者達にとってこの戦いは戦いと言うよりも狩りの気分なのだろう。


「ほう、その様子だと俺達がつけている事に気づいていたらしいな」


 スキンヘッドの男がシオンに嘲りを含んだ口調で言う。


「俺は悪食(イベルジスト)のルジックというもんだ。てめぇらは悪食(イベルジスト)を舐めた」


 ルジックの言葉に追従するように後ろの四人の男達が嫌らしく嗤う。自分達が絶対の強者であり弱者であるシオン達を嬲ってやろうという実に下卑た思考が見て取れる。


「舐められるような無能者なんだから仕方ないだろ」


 シオンはルジックの挑発に毒舌の刃で応戦する。まさかダイレクトに喧嘩を売られると思っていなかったのだろう。ルジックは一瞬呆けた表情を浮かべ、次に驚きの表情を浮かべた。


 シオンの右手にいきなり拳大の火球が浮かんでいたからだ。自然とルジック以下四人の視線がシオンの右手の火球に集中する。

 しかし、シオンの狙いは右手の火球ではなく左手に隠し持っていたガラスの瓶であった。そのガラスの瓶には透明な液体が入っている。シオンはそのガラス瓶を空中に放り投げる。

 最小の動きで放たれたそれは一瞬後にはルジック達の頭上三メートルの位置に到達し、そのガラス瓶に目がけてシオンは右手の火球を放った。


「な……?」


 ルジック達は放たれた火球があらぬ方向に放たれた事に思考が止まったようである。そしてガラス瓶に火球が直撃した。


 ガシャァァァァァァン!!


 ゴォォォォォォォ!!


 ガラス瓶に直撃した火球がガラス瓶を砕き中の液体がばらまかれた。液体の正体は油であり、それが火球により引火すると炎を纏った油がルジック達の頭上から降り注いだ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぎゃあああああああああ!!」

「ぐぉぉぉぉぉ!!」


 引火した油がルジック達の服に降り注ぎそれが燃えるとルジック達が地面を転がった。


「やっぱりアホだな……」


 シオンの呆れた声が周囲に響いた。


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