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兄との再会⑤

「う……ここは?」


 女性が目を覚ますとまず周囲にあつまる人の視線に驚いた様である。


「あなたを連れ去ろうとした誘拐犯は既に捕らえてますので安心してください」


 シオンの言葉に女性は周囲を見渡し自分を連れ去ろうとしていた男達が縄で縛られているのを見てほっとした表情を浮かべた。


「ありがとうございます。おかげで助かりました」

「いえ、当然の事をしたまでのことです。罪のない(・・・・)女性を暴力で攫おうとするような卑怯者を見逃すなんてそんな恥知らずな真似は出来ません。そうですよね。皆さん!!」


 シオンは周囲の人々を見渡しながら言うと周囲から賛同の声があがった。シオンがこのように焚きつけたのには理由があった。男達が女性を攫おうとした理由は正直なところわかっていない。

 だが、男達の言動から何者かの指示で女性を攫おうとした事は分かっているので、女性を被害者として意識付けた方が街の人達の支持を得ることが出来ると考えたのである。

 

「え、……あの? ……これ何?」


 いまいち事情の飲み込めていない女性は首を傾げる。何がどうしてこうなったの?という表情だ。


「ええ、すでに男達を官憲に引き渡すために街の人達(・・・・)が協力してくれています。それよりもこいつらは何なんですか?」


 シオンは女性に状況説明と同時に情報を聞き出すことにした。


「そいつらは闇ギルド『悪食(イベルジスト)』のメンバーです」


 闇ギルドという単語が発せられた事に周囲の人達から動揺の気配が発せられた。闇ギルドとは、いわゆる犯罪組織の事だ。殺人、違法薬物、人身売買などその行動はかなり幅広い。


「その闇ギルドがどうして貴女を狙うんですか?」

「……私じゃありません」

「ん?」


 女性の言葉にシオンも周囲の人達も首を傾げる。


「私の息子であるヴィアスが狙いなんです」

「貴女の息子さん?」

「はい。私の息子のヴィアスに【大賢者】の祝福(ギフト)が発動したんです」


 女性の発言に周囲の人々から驚きの声が上がった。


(なるほど……そういう事か)


 シオンはここまでの話で大分絵が見えた。


「つまり貴女を人質にしてこの闇ギルドの連中は貴女の息子さんに何か良からぬ事をさせようと考えているわけですね」

「はい」

「確か、【大賢者】の祝福(ギフト)を持つ方が当代の【勇者】とチームを組むという話を聞いたことがあります」


 シオンの言葉にまたも周囲の人々に驚きを与えたようである。闇ギルドの手が【勇者】にまで伸びるという可能性まで周囲の人達が考えても不思議ではない。


「このまま貴女がここにいてはいずれ捕まってしまいます。それならいっその事息子さんに保護を求めた方が良いかもしれませんね」


 シオンの言葉に周囲の人達ももっともだという表情を浮かべた。ある意味、闇ギルドに狙われた女と喧嘩を売った少年少女を匿うのは一般人にとってかなりハードルの高い事であろう。


「どうでしょう。私達はこれから王都に向かうのですから貴女も一緒に行きませんか?」

「しかし……」

「どっちみち私は貴女が攫われそうになったのを邪魔しましたから狙われるでしょうから同じ事ですよ」

「……でも」

「ルフィーナはどうだ? やはり抵抗あるか?」


 そこでシオンはルフィーナに話をふる。


「私は構わないわよ。私達にも利益はあるから気にしないで良いですよ」

「利益?」

「それはおいおい伝えていきますよ。それでどうします?」


 ルフィーナは女性に尋ねる。女性は少し考え込むがシオンとルフィーナを見て口を開いた。


「はい、それでお願いします」

「はい、決まりですね。私はルフィーナって言います。こっちはシオンです」

「よろしくお願いします」


 二人が女性に挨拶をすると女性も頭を下げる。


「よろしくお願いします。私はエルリアと言います」


 エルリアの言葉に二人も顔を綻ばせて頭を下げた。


「皆さん、この女性は私達と一緒に王都に行く事になりました。みなさんのご協力本当にありがとうございました。そいつらは俺達が責任を持って官憲に引き渡します」


 シオンの言葉に全員が視線を交わしてそれぞれの表情で頷くと解散する。闇ギルドが関わっているというのだから去り際の方もかなり早い。


「さて、俺達はここで少しばかり官憲が来るまで待つとしよう。その前に……」


 シオンは伸びている男達に目を向けるとエルリアにバレないように懐で木札を割った。


「ルフィーナ、こいつらを使う事にするから起こしてくれ」

「え? うん」


 シオンの言葉にルフィーナは戸惑いつつ頷いた。そしてシオンと二人で伸びている男四人に活を入れて目を覚まさせた。


「う……」

「ぐ」

「……あれ?」

「なんだ?」


 男達は意識を取り戻したが状況がいまいち良く掴めていないようであるがそれは仕方ないというものだろう。


「さてお目覚めてばかりで悪いのだけど早速一仕事してもらおうか」


 シオンはそう言うとニヤリと嗤った。


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