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兄との再会④

「きゃああああああああ!!」


 突如響いた悲鳴にシオンとルフィーナは跳ね起きると手元にあった武器を手に取る。


「シオン!!」

「わかってる!!」


 ルフィーナの声にシオンは頷くと窓を開け放ち下を見るとそこには一人の女性が複数の男に連れ去られようとしている姿が目に入った。


「くそ!!」


 シオンは窓に足をかけると飛び降りようとしたところで、振り返るとルフィーナに言った。


「ちょっと行ってくる!! それからルフィーナも来て欲しいんだが……」

「もちろんよ!! 私も行くわ!!」

「その前にきちんと服を着て(・・)から来るようにな」

「へ?」


 シオンの言葉にルフィーナは自分の格好を見て顔を赤くした。ルフィーナは長目のシャツに下着という姿であり、その脚線美を存分に晒していたのだ。男性にとっては眼福ものであるがルフィーナにとっては痴女との評価が固まるのは避けたい所であろう。


「わ、わかったわ!!」


 ルフィーナは極めて冷静さを保とうとしたが、声が上ずっていることから成功したとは言いがたい状況であった。


「すまん、そういうわけだから先行ってるぜ!!」


 シオンはそう言うと窓から躊躇無く飛び降りた。この辺りの思い切りの良さはやはり冒険者としての活動により危険性は無いと咄嗟に判断したのだ。


 シオンはまったく体重を感じさせない身のこなしを発揮し、静かに着地するとそのまま女性を連れて行こうとしている男達に躊躇無く蹴りを放った。


 ゴガァァァア!!


 シオンの蹴りにより男は宙を飛び受け身を取ることもなく地面に頭から突っ込んだ。


「な!!」

「てめぇ!!」


 思わぬ攻撃に男達は狼狽えた声を出した。ある意味当然の行動である。当然の行動でないのはシオンの方であった。

 このような場合、まずは“女性を離せ”などというのがセオリーと言えるのかも知れない。だがシオンは無言でそのまま男達に襲いかかったのだ。

 

(まっとうな奴が女を大人数で連れ去るかよ)


 シオンは心の中でそう結論づけた結果である。


「うらぁぁぁぁ!!」


 シオンの飛び膝蹴りが男の顎にまともに入った。シオンの膝に骨の砕ける感触が感じられたところをみるとどうやら男の顎は砕けてしまったようである。しばらくの間固形物を食べるのに苦労するだろうがシオンの知ったことではない。


 もう一人の男の膝をシオンは蹴りつけると男がガクリと膝を着いた。


「ちょうど良い高さじゃないか!! 褒めてやる!!」


 シオンは膝を着いた男の顔面にこれまた躊躇無く蹴りつけた。


「ふべぇ!!」


 顔面を蹴りつけられた男は踏みつぶされたカエルのような声を上げて昏倒する。一応死なないように手加減はしたつもりであるが、飛び散る歯と血が手加減を誤った事を如実に示していた。


「さて、その人を置いて消えるか。こいつらみたいに伸されるか好きな方を選べ」


 女を肩に担いだ最後の男の殺気がシオンに放たれる。


「ほう……ひょっとして状況が分かってないのかな? 俺の腕前はこいつを伸したことでわかったろう?」

「……貴様は何をしてるかわかってるのか?」


 シオンに殺気を放ちながら男が言う。どことなく追い詰められている感じはしないのがシオンには気にくわない。


「なんだ……要するにバックに誰かいるわけか。つまらん奴だな」

「何?」


 シオンの軽蔑しきった声に男は明らかに気分を害したようであった。


「結局お前は自分の名では何も出来ない奴というわけだろ。さっさとその人を置いて消えろよ。自分の名で勝負できるようになってから出直してきなさい」


 シオンの“出直してきなさい”という言い方は出来の悪い生徒を諭す教師のような口調である。それを挑発ととらないものはいないだろう。シオンの挑発により男の不快感は嫌が応にも増したようである。


「クソガキが……思い知らせてやる。俺をそいつらと同じに考えるなよ」


 男は肩に担いでいた女性をかがんで地面に置いた。


(アホ……)


 シオンは男のこの行動を見て心の中で断じるとそのまま襲いかかった。


「へ?」


 男はシオンの行動が理解できないようで呆けた声を出した。シオンの勢いは止まらずそのまま男の顔面を蹴り砕いた。

 顔面を蹴り砕かれた男はそのまま吹っ飛ぶと地面を転がりそのまま気を失ったようである。


「こいつ……本当のアホだな。この状況で屈むか? 確かにこいつらとは違うなこいつら以上のアホだ」


 シオンは正直すぎる感想を漏らした。シオンが呆れるのも仕方ないだろう。敵の前でいきなり屈むなど自殺行為も良いところだ。実際に男はその報いを受けて地面に転がっているのだ。


「あ、もう終わっちゃったの?」


 振り返るとルフィーナが立っていた。ルフィーナの格好はローブこそ着ていなかったが、スパッツを履くという動きやすさ重視の格好である。脚線美は惜しげも無く晒されている限り世の男達にとっては眼福ものであるのは間違いない。


「ああ、アホ共だったし大した事も無かったな」

「その人が攫われそうになった人?」

「ああ」


 シオンはそう言うと地面に倒れている女性の元に駆け寄った。年齢は三十代半ばと言う所の妙齢の女性であった。ローブを身に纏い、使い込んだブーツを履いている。どうも服装から冒険者のようである。


「君達、何かあったんだね」


 そこにどんどん人が集まってくる。先程の女性の悲鳴を聞いて集まってきたのだ。


「誘拐です。この女性が攫われそうになったところを助けました!! あなたとあなたは申し訳ありませんが、衛兵を呼んできてください!!」

「わかった!! おい行くぞ!!」

「ああ」


 シオンは集まってきた人達の中でランダムに衛兵を呼んでくるように依頼する。男達の言葉から何者かがバックにいることを察したため、出来るだけたくさんの人に知ってもらう事にしたのだ。

 こうしておけばバックにいるものがたとえ官憲と手を組んでいてもそう簡単に釈放はされないと思ったのだ。


「う……ん」


 気を失っていた女性が声を漏らすと集まった人達の視線が一気に集まった。


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