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ルフィーナ⑪

「ルフィーナ……お前それは?」


 シオンの言うそれとはルフィーナの下にある美しい貌の事であるのは明らかでありルフィーナはこれ以上ないぐらいに動揺していた。


「ふぇっときょ、きょれは大丈びゅよ!!」


 見事なくらい動揺を見せるルフィーナにシオンは逆に落ち着いてくる。


(この顔がルフィーナの本当の顔というわけか? となるとルフィーナは変装していたという訳か)


 シオンは冷静にそう分析したところでハルドが再び火球を放った。シオンとルフィーナはその火球を横に跳んで躱すとハルドに視線を向けつつルフィーナに声をかける。


「とりあえずは事情は後で聞かせてくれ」

「う、うん。わかったわ」


 シオンとルフィーナは言葉を交わすとハルドへ意識を向けた。事情は現段階でよくわからないが()で確認すれば良いのだ。


「劇的な効果を狙ってたのにこの段階でバレちゃったら台無しじゃない!!」


 ルフィーナはそういうと腰に差した双剣を抜き放った。ルフィーナが抜剣したのを見てハルドの足元に魔法陣が浮かび上がった。


(あれは召喚の術式か……どうせアンデッドだろうな。ゾンビ(・・・)でありませんように)


 シオンが内心でため息をついたところ魔法陣から次々とゴブリン達が現れた。


「ゴブリン? にしては様子がおかしいわね」


 ルフィーナの言葉通り現れたゴブリン達は動きが妙に鈍い。


「ああ、ゴブリンをゾンビにしたんだな」


 シオンは心の中でため息をついた。ゾンビが出ませんようにと思っていた所にゾンビが現れればぼやきたくもなるというものだ。シオンがゾンビを避けたかったのは別に戦闘力が及ばないというような事ではなく、ゾンビの放つ腐敗臭が嫌だからである。


「ルフィーナ、下がってろ」


 シオンはそう言うと左掌に火球を発生させた。これはスキルによるものではなくシオンの魔術によるものだ。スキル『火炎魔術』により展開した魔術ではないために威力、精度は格段に落ちるのだがないよりはマシである。


 シオンは発生させた火球をハルドに向け放った。拳大の火球が真っ直ぐにハルドへ向けて飛ぶ。

 ハルドはまったく動じることもなくその火球に対処しようともしない。それはシオンにとって想定内の事である。ハルドは魔術に関しては一流と読んでも差し支えに実力を有しているのは間違いない。それ故にシオンの放った火球が自分にとって脅威でないことを即座に見抜いたのだ。

 そして自尊心の高いハルドならばそのような取るに足りないシオンの魔術に対してどのような態度をとるかシオンとすれば想像するのは容易である。

 シオンの放った火球はハルドの防御陣に直撃し爆発を起こした。爆風が起き、砂塵が巻き起こった。


(よし!!)


 シオンはハルドの視界(・・)が塞がれた事を察知すると懐から木札を取りだしボキリと折る。ルフィーナの方もシオンの放った火球の方に目を奪われていたためにシオンが木札を折った事には気づいてないはずである。


 砂塵が収まった向こうから無傷のハルドが姿を見せる。それを見てシオンはちっと舌打ちを行う。それを見てハルドから嘲るような雰囲気が発せられた。


「何を驚いている? 一度防御陣を破ったから再び展開しないとでも思ったか?」


 ハルドの嘲りの言葉にシオンは悔しそうな表情を浮かべた。そのシオンの表情にハルドは嘲りの度合いを高めていく。


「さぁやれ!!」


 ハルドはゴブリンゾンビ達に命令を下すとゴブリンゾンビ達はそれぞれ武器を構えてシオン達に襲いかかった。


「ルフィーナ、油断するなよ。あいつはおそらくゴブリンゾンビごと俺達を魔術で吹き飛ばそうとするからな」

「わかったわ!!」


 シオンの言葉にルフィーナは武器を構えてゴブリンゾンビ達に向かって進み出ようとするのをシオンが肩に手を置き制止する。


「ちょっとどうしたの?」

「まぁ慌てんなって」


 シオンはそう言うと火球を両掌に浮かべた。


火球(ファイヤーボール)? でもそれって通じなかった……」

「さっきのは様子見、今度は本気だ!!」


 シオンは両掌の火球を放った。最初は左手、次いで右手。二つの火球が僅かな時間差を生みハルドへ向かう。

 

 ドゴォォォォォォォ!!


 先程同様にハルドの防御陣に直撃した火球は()爆発を起こした。その爆風にこちらに襲いかかろうとしていたゴブリンゾンビ達は炎に包まれてほぼ一瞬で燃え尽きてしまう。


 ドゴォォォォォォォォォォォォォォ!!


 そして再び大爆発が巻き起こった。遅れて放ったもう一つの火球が直撃したのだ。


「何これ……?」


 ルフィーナのやや呆然とした声がシオンの耳に届く。


「言ったろ? 今度は本気って」


 シオンはルフィーナに笑いかける。ルフィーナはシオンの笑顔に納得の表情を浮かべた。しかし、すぐに表情を引き締めるとルフィーナの気配が突然朧気になった。


気殺(・・)か……なるほど)


 シオンはルフィーナが気殺のスキルを使用したことに対して即座に納得の表情を浮かべた。

 シオンがルフィーナの行動の意図を察した瞬間に爆発の向こうからハルドが姿を現した。先程のように無傷とはいかなかったようでハルドの左半身が大きく焼け焦げてしまっている。


「今度は効いたようだな」


 シオンの言葉にハルドは顔を歪めた。骨だけの顔のはずなのに悔しそうな表情を浮かべているのがシオンには理解できた。


「貴様は一体……あの威力……の魔術を放てるのだ?」


 ハルドは動揺しているのだろう文法が少々おかしい事に気づいていないようであった。


(いない……この俺が見失った?)


 シオンの背に冷たいものが走った。先程まで自分の隣にいたルフィーナがいつの間にか消えていたのだ。一瞬、ハルドに意識を向けた事でルフィーナから意識を外しただけでシオンはルフィーナを見失ってしまったのだ。


「だが今の一撃で私を斃せなかったのは失敗だったな。もう私に油断はない!!」


 ハルドがそう言った瞬間にハルドの後ろに立つ影が見えた。もちろんその影はルフィーナである。

 ルフィーナはハルドの背後に回り込んでおりそのまま双剣を振るった。


(速い……)


 ルフィーナの連続斬りにシオンは心の中で称賛した。ルフィーナの双剣はハルドを斬り裂くとハルドの体がバラバラに崩れ落ちた。


「な……」


 ハルドは呆然とした声を上げるがもはや反撃する力も残ってないようである。


「とどめっと!!」


 ルフィーナはハルドの胸にある瘴気の塊を右剣で貫くと瘴気の塊は形を保つ事は出来なくなり塵となって消滅した。

 後には物言わぬ人骨の破片が散らばっているだけであった。


 アンデッドを斃す方法は核と呼ばれる瘴気の塊を破壊する事なのだ。


 ルフィーナはにっこりと笑うとシオンに駆け寄ってくるのが見えた。



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