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やり直せるなら何をする?  作者: TOMORROW!!
7/7

決意

家を出ると、目の前に速井サクラがいた。

当然、幼稚園からずっと一緒だったのだから、速井サクラとはご近所さんなわけだが、前回の人生でも、登校時間に速井サクラと出会うことはほぼなかった。

いつも朝練していた速井サクラと、遅刻ギリギリの自分とでは時間が被るはずがないのだから。

「おはよ。朝練は?」

当然の疑問を口にしたのだが、何故かそれに驚いた顔を見せた。

「あ、朝練? 今日はね、始業式の準備で朝練禁止なの。だからこの時間」

「そうなんだ。俺が言うのもなんだけど、遅刻ギリギリの時間だけど、大丈夫?」

学校まではそれほど遠くなく、自転車で20分ほどの距離だが、速井サクラはこれも練習だと言って、いつも徒歩で登校しているというのは、クラスメイトには有名な話だ。

今から自転車で向かえば、全く問題ないが、歩いていくとなると、いくらトップアスリートでも間に合わないだろう。

「え? そうなの!? いつも朝練してて普通の登校時間がわかんなかったんだけど……」

「なら途中まで後ろ乗ってく? 俺、自転車だし」

自転車を玄関先から引っ張りだしながらそう聞くと、速井サクラは綻んだ。

「ありがと! お言葉に甘えるね!」


「「……………」」

後ろに乗せたはいいが、かなり気まずい。

おそらく、中年男子のセクハラのような、かる弾みから出た提案だったが、異性の――それも後ろめたさを感じている相手を背にして、軽やかな気持ちにはなれなかった。

そんな空気を打破してくれたのは速井サクラからだった。

「……珍しいね」

「ん?」

「カガリから話しかけてくれるのも、こうやって優しくしてくれるのも」

「そうだっけ?」

「そうだよ。中学くらいから、あんまり話しかけてくれないようになったよ? わたしから話しかけてもテキトーな返事ばっかだったし」

――ちょっと寂しかったんだよ

僕に聞かせるつもりはなかったのだろう。背後で小さく呟かれた声は、僕の耳をくすぐったく撫でた。何だかそれがとても照れくさかった。

「ああ、確かに」

自分の心情を気付かれないように、わざと戯けた感じで応える。

「中学くらいの時に、速井と仲良くしてたら、付き合ってるの? ってからかわれたことがあって、それから何か距離開けちゃってたな……」

「……ふぅん」

ほんの少し黙り込んだ後、速井サクラが発したのはたったのそれだけだった。

それに対して僕は本心を見透かされた気になってしまう。

――本当は、アスリートとして結果を残していく速井に、何だか置いてかれたような気分になって拗ねてただけだけど

そんなかっこ悪い自分は、絶対にバレたくなかった。


結局それから暫くまた無言の時間が続いた。

「……ここでおろしてもらって大丈夫だよ。もうだいぶ学校近いし。流石に校門まで二人乗りで行ったら怒られちゃうだろうし」

自転車はまだ止まっていないのに、速井サクラはぴょいっと飛び降りた。

「おんなじクラスになれるといいね!」

振り返ると、少し後方で速井サクラが手を降ってるのが見える。

「なるよ! 同じクラスに!」

ぼくも手を振りかえす。

少し不思議そうな速井サクラの顔がおかしくて、少し笑ってしまう。


一度目の人生ではなかった、小さな幸せ。

「――大丈夫」

その小さなつぶやきは風に流されて宙を舞う。

――確実に過去は変わってる

――絶対に救えるはずだ

そう確信して、もう一度、振り返る。

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