2度目の今日
一年というのは早いですね
前の話から一年立ってました笑
扉をくぐり、光を集めたような、白な空間を数歩歩くと、目の前にまた扉が現れた。
どこでも見かける、木製の普通の扉だ。
だか、なんとなく見覚えがある気がした。
「……!」
小さく深呼吸をし、決意を固めたあと、扉に手をかけ、ゆっくりと扉を開いた。
扉に見覚えがあって当然だった。
それは実家の自室の扉だったのだから。
扉の先には15年前に自分が使っていた部屋が、当時のままの状態であった。
――こっちは一度死んでるんだから、何があっても驚かないつもりだったけど、やっぱり不思議に感じちゃうよな
少しだけ躊躇してしまったが、扉を閉めて部屋の中に進んだ。
「さて、天使は自分もお手伝いするって言ってたけど、どうやって手伝ってくれるんだろうな…ろ」
自室の椅子に腰掛けながら誰となく呟いた。
――流石に自分一人ではどう行動を起こせばいいか考えがつかないぞ……
「カガリー! もう起きてる? 今日から学校だよ!」
今後についてなんとなく考えていた頃、下の階から大声で呼ばれた。
「起きてるよー! 今降りる!」
ほぼ条件反射でそう答えた。
それは15年前、学生の間毎朝母親としていたやりとりだった。
自室を出て、一階のリビングに着くと母親がすでに朝食を食べていた。
「学校の準備はもう出来てるの?」
「うん。出来てるよ」
そんな何気ないやり取りをしながら朝食を食べた。
自分でも不思議なほどに会話に15年の隔たりは感じられなかった。
朝食のあと自室に戻ると、さっきまで確かに何もいなかったはずのベッドの上に、白毛の子猫が寝転がっていた。
――どうせなら母親に合う前に登場してほしかったな
「天使さんですよね」
正体なんてバレてるのに決まっているのに、猫らしく丸まって寝転んでいる姿に、半ば呆れながらそう呼びかけると、猫は姿勢は変えず、目線だけこちらに向けた。
「こちらでは必要最低限以上には会話しないようにしてるんですよ。どこで誰が見たり聞いたりしてるかわかんないんで」
やっぱり天使だったか。
「とりあえずカガリさんは今から学校に向かってください。準備は特別に揃えてありますよ」
そう言いながら天使は目線を机の上にうつした。
僕もそれに習ってみると、確かにカバンや制服が並べてあった。
「色々相談したいとは思いますが、もう投稿の時間です。帰ってから話しましょう」
そう言われて時計を見てみると、もう家を出なくては行けない時間だった。
「やっば! なんでもっと早い時間に生き返らせてくれなかったんですか!」
急いで制服に着替えながら、天使に悪態をついた。
「しょうがないんですよ。生き返らせる条件で、その時覚醒――目が冷めてる状態じゃないとだめなんで。カガリさん、最初の人生の今日もこの時間、お母様に起こされてやっと起きたんですよ?」
猫の姿で表情はあまりわからないはずなのに、明らかに呆れていた。
確かに思い返すとそうだった気がする……。
「じゃあ学校から帰ったら今後のことめっちゃ聞きますからね! 猫だからって勝手にいなくなったりしないでくださいね!」
着替え終わって自室を飛び出しながらそう言うと、背後から「ニャーォ」とだけ返事があった。
家から出ると、目の前に速井サクラがいた。




