快里の脳波
「またか?」
克之はネイに呼ばれると、すぐにリビングまで来た。腕を持ち、少し強く快里を揺らしながら問いかける。
「おい、快里!快里!」
ぐったりとした感じで返事はない。克之は頬を軽く叩きながらもう一度呼んだ。
「快里!」
少し眉が動くが、返事はない。
「いつもより激しく落ちてるな……」
克之はそう言うと、その辺に落ちているノートにボールペンで殴り書きをする。『JCSIII-200。呼びかけには応答しないが、刺激に関して若干の応答有り』
「昏睡に近いな。ネイちゃん、快里は別に倒れたりして頭を強く打ったわけじゃないんだろ?」
ネイが首を縦に振った。
「だとすると、やっぱり脳損傷じゃないな。ごめんネイちゃん、快里を快里の部屋に連れて行きたいんだが、手伝ってくれるか?」
克之は快里の腕をひき、自分の肩にかけた。
「ネイちゃん、その辺のものを快里の部屋に持ってきて貰える?」
「あ、はい」
「ごめんネイちゃん、扉、開けて」
ネイが快里の部屋で待っていると、克之は慌ただしくなんかの機械をもって来た。ネイが扉を開けると手際よく機械に電源を入れ、快里の頭に色んなものを貼り付けていった。
ディスプレイに浮かぶグラフを見ながら克之は思案する。
「あの……お兄さん、私、帰りますね」
ネイは小さな声で、克之の邪魔をしないように話した。克之はそれに気がつかず、グラフをじっと眺めてながら、つまみを触っている。ネイはそれを見ながら快里の部屋の扉を閉め、帰って行った。
「動いてるな……やっぱり、大脳の大半を使ってるように見えるな。うちのじゃダメだな。脳外科の脳波計を借りないと、これ以上はわかんないなぁ」
克之は、グラフを見ながら思案した。
「部分的にはシゾの脳の使い方に似てるが……シゾの人間でもこんなには使わないんだがな……。さて……時間をおけば、いつも通り戻ってくるとは思うが、人為的に戻す方法はないかな」
克之は饒舌に独り言を言いながら考えていた。
「睡眠薬の類いを投与してみるか……。これで脳の動きが弱くなるかどうか……」
そう言いながら快里の部屋から出て何かを持ちにいった。周りにネイがいないことも気がつかない。暫くして点滴の用具を持ってきた。
「ロヒプノール(睡眠薬)かな……」
点滴の針を左腕に刺す。快里の眉間に少しだけしわが寄った。克之は少しづつ点滴をしながら、じっとグラフを見ていた。
「効かない?効いてないことは無いか?どうだ?」
じっと測定機のグラフをみながら睨んでいる。
「よし、脳が休んできた。多少は効くんだな。このままだと普通の睡眠になるだろう」
克之は点滴をとめ、針を抜いた。
「あれ、ネイちゃん。あーしまった。送っていくの忘れてたな」
頭をかきながら独り言を言う克之。時計をみると4時をすぎていた。克之は慌てて片付けをして、自分の部屋へと休みに行った。




