前章
「まさかここまで力をつけていたとは......」
そう苦しげに呟くのは、見ているだけで闇に飲み込まれてしまいそうな漆黒のマントに身を包んだ男。
俺の家族を、村のみんなを、最愛の人を殺した男ーー。
その男の権威と、悪行によって築き上げた栄光を象ったかのような城のその最上階。
赤絨毯を蹴り、俺はその男に向かって疾走する。
「マユリ!サポートは任せた!」
「わかった......気をつけて......」
後方からついてくる灰色のローブに頭まですっぽりと身を包んだ少女に声をかけ、長かった戦いに終止符を打つべく、腰につけた鞘から剣を抜き思い切り振りかぶる。
「これで終わりだクロウ!」
「ここまで私を苦しめたのは素直に褒めるべきだろう......だがなぁ!」
悪の根源である男ーークロウに剣を振り下ろす直前、男は邪悪に口の端をにやりと歪ませ、その両手から黒色の炎を放った。
「っ......マユリ!」
「任せて」
至近距離から放たれた黒の炎を俺はマユリの「能力」によってかわし、再びクロウに向かって剣を振りかぶった。
マユリの「能力」を目の当たりにしたクロウは、一瞬驚いたように目を見開き、そしてどこか納得したように微笑みを浮かべた。
「そうか......マユリとやら......そういうことか......。セツナ......サクラ......ハク......すまないなぁ、どうやら私はここまでのようだ」
「これで終わりだあああああああああああ!!!!」
俺は、全ての元凶クロウの首に向かって、刃を振り抜いた。