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純白な黒  作者: 折空 想乃香
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はじまり

高校一年生の春、入学式。

みんなが新生活に期待で胸を弾ませ、思い思いに歩を進めるなかわたしはそこに居た。


あるひとりの少女のうしろを数メートル離れて歩く。

美恋ちゃん。少女の名だ。わたしの親友。

保育園のころからずっと一緒。ずっと仲良し、なはずだった。あの言葉を聞くまでは。


みんなが期待で胸を弾ませるなら


わたしは憎しみで胸を弾ませよう。


どう美恋ちゃんを傷つけようか。


どう美恋ちゃんに苦痛を与えようか。


どう美恋ちゃんに復讐してやろうか。



学校の玄関入り口にクラス分けの紙が張り出されている。

わたしの名を確認する...よりもまえにわたしは美恋ちゃんの名を探して確認した。


「...みつけた。」


1-B 29番 山岸 美恋


そのあとにわたしの名を探す。


あぁ。神さまはわたしの復讐を応援してくださる。


1-Bにわたしの名前も書かれていた。

晴れて復讐劇の最高の開演です。脳内でぱちぱちと拍手をする観客とそれに対してお辞儀をするわたし。

甘美な現実。そう思えた。


そのまま美恋ちゃんを見失うことはなく教室に少し遅れて入る。


あの子は人受けがいいからきっとすぐにお友達ができる。

いっそのこと彼氏なども出来てしまうかもしれない。


わたしは人受けが悪いからお友達なんてものはできない。

でもわたしには美恋ちゃんがいる。

彼氏なんて途方も無い彼方先の話だ。

でもわたしには美恋ちゃんがいればいい。


ほら、さっそく仲良く前の席の子と話をしてる。

いいね、その笑顔。はやく引攣らないかな。

もっと可愛い顔をわたしが作ってあげるからね、待ってて美恋ちゃん。


時間になり入学式の説明などを担任の先生が始めるがわたしにはそんなものはどうでもいい。

そんなことを入れるスペースが頭にあるならその場所に美恋ちゃんへの復讐シナリオを考えなきゃいけない。


こういうのはどうだろうか。

美恋ちゃんに近づく人を殺していくだとか。

殺人犯。わたしは犯罪を犯すのか。

楽しい。どうせみんなわたしを『いないひと』と罵って馬鹿にするのだから。

わたしの存在をみんなにアピールして尚且つ美恋ちゃんへの復讐も遂げれる。


あぁ、最高にいいシナリオになりそう。


となれば最初の犠牲者は、さっき美恋ちゃんと仲良く

お話していたあの子。


わたしの美恋ちゃんに近づくから......。

馬鹿な子。かわいそうな子。消してあげるね。


名前は『三科 由紀』


さっき美恋ちゃんに自己紹介していたのを聞いていた。

どんな子だろう。どうせならそれなりに幸せな子がいい。その方が劇が盛り上がりそうだから。


美恋ちゃんは多少放っておいても問題ないだろうから、まずは三科 由紀。

身辺調査しなくちゃね......。


気づけばみんなが席を立ち入学式の会場である体育館へと向かっていた。

つい妄想の復讐劇にうっとりして遅れてしまった。

いけない、はやく追いかけなくては...。


「ねぇきみ。」


「 ? 」


わたしに話しかけるなんて人がいるのかと疑問に思いながら振り返った。

少しくせ毛な髪。丸い綺麗な瞳。きゅっとした可愛らしい口。ちょこんと小さな鼻。

美少女、というものか?


「きみ.....イイカンジに腐ってるね。」


理解が出来ない。悪口?褒め言葉?

訳のわからない言葉を発した少女はそのままわたしの横を通り過ぎ教室を出て行ってしまった。


...いけない、入学式に遅刻してしまう。

わたしは急いで体育館へと走った。



まだ廊下でダラダラと生徒達が体育館に向かっていた。

それもそうだ。今日初めて集まった15歳の若者達が統率感のない担任先生に連れられこのような狭い通路を歩くのだから時間がかかって当然だ。


無事に列に入り込み出席番号順に並ぶためわたしの前にいた子を探す。

一応覚えておいていた。さすがにこういう時に困るから。

あぁいた。今どき三つ編みおさげなんてやってるものだから簡単に覚えれた。


さて体育館入り口へと辿り着き今か今かと入場をまつ生徒達。中にはお友達と写真を撮ったりなんかしてる子までいる。


美恋ちゃんはと言うと先ほど見つけた新たなお友達の三科 由紀と楽しくお話しているようだ。

三科 由紀。あぁ暇だからTwitterで探してみよう。

彼女のことが多少わかるはずだ。我ながら名案だと思いながらケータイを出し早速調べ上げる。


いた。『 ゆ き 』

名前がそのままで助かる。探しやすい。


ツイートを見れば何をしてて何が好きでくらいはわかるだろう。


.....なるほど。どうやらアルバイトを3月から始めていたらしい。たぶん合法的にはアウトだと思うが。

コンビニ店員か。さぞ楽しいだろう。

さらに大好きなアイドルグループがいるらしく夏に開かれるライブに行けるらしい。


......あぁ、そそる。甘美な現実。

このこれから未来へと期待を膨らませ楽しい楽しい高校生活が続くと信じて止まない生命を止める。

それがわたし。


わたしもだよ。わたしもこれからの高校生活がとても楽しみ。

美恋ちゃん、これから起こる悲劇はすべて貴方のせいよ?

楽しみにしててね美恋ちゃん....。


甘美な現実を噛み締めながら担任の先生の合図のもと体育館へと歩を進める。


さぁ楽しい楽しい復讐劇のはじまりはじまり〜.....。


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