第七話
今回は短めです。これから終わりに向けて短くなっていくかもです。
あるひの日曜日、天気は晴れ。
カズの葬式は、速やかに行われた。カズの家族、私の家族、学校の人たち、みんな来てた。そして、みんな泣いていた。隅のほうで見ながら、その様子をただ見ていた。
「真子……大丈夫?」
詩織が、私の横に立って心配そうにしている。
「……大丈夫だよ」
詩織に心配をかけちゃいけないと思ったものの、自分の意志とは関係なく声が震えた。それから私たちは、黙ったままだった。
カズの体は、灰になって空へと帰っていった。カズがこの世から消え去るのなんて、とてもあっけないものだった。今までの私たちの出来事が、ウソみたいに思える。
私と詩織は、誰もいない、静寂に包まれた公園でベンチに座っていた。葬式の時から、ずっと黙ったままだ。この沈黙を破ったのは、私だった。
「私……」
「え?」
「私さ、カズに告白したんだよね」
それを聞いた詩織は、またうつむいてしまった。
「私たちね、両思いになったよ。カズ、私の子と好きだって言ってくれた……」
静かな公園に、私の声だけが響く。
「でね、ずっと考えてた。何でこんな事になったのかって・・・・・・私のせいだよ……」
「真子……」
「私が、大人しく家でカズの帰りを待っとけば良かったんだ。私がカズの事追っかけて行ったりしなかったら良かったんだ。私のせい……」
「真子のせいじゃない!」
いきなり詩織が勢いよく立ち上がった。詩織もまた、めったに怒鳴らない方なのに。
「真子の……せいなんかじゃない……!」
詩織の声と肩が震えていて、顔はうつむいていて分からなかったけど、とても寂しそうな、そんな叫びだった。
「……でもね、結局、私のとった行動は、たくさんの人を悲しませることになったよ」
カズの家族も、私の家族も、詩織も愛里も、学校の人たちも志帆先輩も……私も……。
「みんな泣いてた。みんな、カズの事大好きだった。カズはみんなから愛されていた……」
そのカズを奪ったのは誰? 私だ。私が殺した。
カズに対しての気持ちに気付いた時の心の痛みとは、またちがった痛み。もっとどす黒くて、もっと深くて、とても悲しい痛み。
私は歯を食いしばった。
「……真子、確かに椎名はみんなから愛されていた存在だと思う。でもね、椎名が一番愛していたのはアンタだよ、真子」
「私……」
「そう、だから、自分のせいなんて思わないでよ。自分が死んだせいで、真子が責任感じてるなんて知ったら椎名悲しむよ?」
「カズが……」
「うん、それに真子は何も悪くないの。すぐに追っかけていくほど、早く気持ちを伝えたかったんでしょう? 椎名は、その真子の気持ちが何より嬉しいよ」
ねっ、と言って詩織がにっこり笑う。詩織だって辛いに決まってるのに、そう思うと散々泣いたはずなのに、涙が出てきそうになる。私はさらに歯を食いしばった。
「ねぇ、真子?」
詩織の声が、震えているようにきこえた。詩織が声を押し殺して泣いているのが、空を見上げてでも分かる。
「何で、泣かないのよ……」
「……」
「私たちが泣いてんのに、何で一番悲しいはずのアンタが泣かないのよ……! なんでっ、椎名のこと一番愛してたアンタが泣かないのよ!」
詩織の悲痛な叫びは、私の中でも響き渡った。何かがぷつんと切れたように、涙は静かに音も立てず、私のほほをつたっていった。
その間、また、カズとの思い出が走馬灯のように蘇っていった。