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迷子のキモチ  作者:
7/8

第七話

今回は短めです。これから終わりに向けて短くなっていくかもです。

 あるひの日曜日、天気は晴れ。

 カズの葬式は、速やかに行われた。カズの家族、私の家族、学校の人たち、みんな来てた。そして、みんな泣いていた。隅のほうで見ながら、その様子をただ見ていた。


「真子……大丈夫?」


 詩織が、私の横に立って心配そうにしている。


「……大丈夫だよ」


詩織に心配をかけちゃいけないと思ったものの、自分の意志とは関係なく声が震えた。それから私たちは、黙ったままだった。

 カズの体は、灰になって空へと帰っていった。カズがこの世から消え去るのなんて、とてもあっけないものだった。今までの私たちの出来事が、ウソみたいに思える。




私と詩織は、誰もいない、静寂に包まれた公園でベンチに座っていた。葬式の時から、ずっと黙ったままだ。この沈黙を破ったのは、私だった。


「私……」

「え?」

「私さ、カズに告白したんだよね」


それを聞いた詩織は、またうつむいてしまった。


「私たちね、両思いになったよ。カズ、私の子と好きだって言ってくれた……」


 静かな公園に、私の声だけが響く。


「でね、ずっと考えてた。何でこんな事になったのかって・・・・・・私のせいだよ……」

「真子……」

「私が、大人しく家でカズの帰りを待っとけば良かったんだ。私がカズの事追っかけて行ったりしなかったら良かったんだ。私のせい……」

「真子のせいじゃない!」


 いきなり詩織が勢いよく立ち上がった。詩織もまた、めったに怒鳴らない方なのに。


「真子の……せいなんかじゃない……!」


詩織の声と肩が震えていて、顔はうつむいていて分からなかったけど、とても寂しそうな、そんな叫びだった。


「……でもね、結局、私のとった行動は、たくさんの人を悲しませることになったよ」


 カズの家族も、私の家族も、詩織も愛里も、学校の人たちも志帆先輩も……私も……。


「みんな泣いてた。みんな、カズの事大好きだった。カズはみんなから愛されていた……」


そのカズを奪ったのは誰? 私だ。私が殺した。

 カズに対しての気持ちに気付いた時の心の痛みとは、またちがった痛み。もっとどす黒くて、もっと深くて、とても悲しい痛み。

 私は歯を食いしばった。


「……真子、確かに椎名はみんなから愛されていた存在だと思う。でもね、椎名が一番愛していたのはアンタだよ、真子」

「私……」

「そう、だから、自分のせいなんて思わないでよ。自分が死んだせいで、真子が責任感じてるなんて知ったら椎名悲しむよ?」

「カズが……」

「うん、それに真子は何も悪くないの。すぐに追っかけていくほど、早く気持ちを伝えたかったんでしょう? 椎名は、その真子の気持ちが何より嬉しいよ」


ねっ、と言って詩織がにっこり笑う。詩織だって辛いに決まってるのに、そう思うと散々泣いたはずなのに、涙が出てきそうになる。私はさらに歯を食いしばった。


「ねぇ、真子?」


 詩織の声が、震えているようにきこえた。詩織が声を押し殺して泣いているのが、空を見上げてでも分かる。


「何で、泣かないのよ……」

「……」

「私たちが泣いてんのに、何で一番悲しいはずのアンタが泣かないのよ……! なんでっ、椎名のこと一番愛してたアンタが泣かないのよ!」


 詩織の悲痛な叫びは、私の中でも響き渡った。何かがぷつんと切れたように、涙は静かに音も立てず、私のほほをつたっていった。

 その間、また、カズとの思い出が走馬灯のように蘇っていった。

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