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迷子のキモチ  作者:
2/8

第二話

「カズ〜!」


 かわいらしい女の人、たぶん先輩であろう人がカズの元へ駆け寄る。


「どうしたんですか、先輩」


 私はまた驚いてしまった。カズが嬉しそうに笑っていたのだ。私はなぜだか、何ともいえない気持ちに襲われた。その感じは、まるで愛里ののろけを聞いている時のようだった。

 その後、カズと女の先輩は楽しそうにしゃべっていた。嬉しそうなカズの顔、それがずっと私の頭をかけめぐり、今日授業はまったく身が入らなかった。そのまま部活も終ってしまい、俗に言う"最低な一日"となってしまった。




「ただいま……」


 暗い気分で暗い声でのただいま。それとは逆に、家の中からは明るい声でお帰りと返ってきた。

 リビングから良い匂いがする。鉄板でお肉を焼いているような音もしてきた。今日のご飯焼肉かな、と急に妙なウキウキ感を感じながr、食べている最中であろう家族の元へ足を運ぶ。リビングの扉を開けると、机を囲んでいる家族と、その真ん中にある焼肉が見えた。予想通の夕飯に、私のお腹が起動し始めた。


「おかえり真子。今日のご飯は焼肉よ」


 にっこり笑ってそう言ってきた母。いつもなら、やったー☆とか、おいしそ〜などという言葉を返していただろう。でも、私が口にした言葉は、まったく違う言葉だった。


「何でカズがいんの」


険しい表情でそういった私に、みんな仰天していた。いつもの私だったらきっと笑顔でもっと柔らないことを言うだろうから。しかし、今私の口からとび出した言葉はとげとげしい言葉。もちろんカズまでも驚いていた。

 妹の璃子が言った。


「どうしたのお姉ちゃん、らしくないよ」

「別にいつもどおりだけど」

「ホントに?」

「ウソついてどうすんのさ」


 本当はウソだ。朝からのもやもやの原因と家に帰ってまで顔を合わすなんて、私でなくとも不機嫌になる。でも少し冷たすぎたかなと思ってカズをちらりと見ると、何でそんな態度なんだとでも言いたげな目をしている。それでも不機嫌なので、また冷たく言い放ってしまった。


「で、なんでいんの?」

「……親が今晩出かけてるから、夕飯だけお邪魔しにきたんだよ」

「ふぅん……いただきます」

「この肉焼けてるぜ。ところで何で今日はそんなに冷たいんだよ」

「あ、どうも。別にいつも通りだってば」

「この野菜焦げそうだからとっとと食べろ。いつもだったらもっと嬉しそうな顔してんだろうが」

「もうこげてるし。ってか何それ、何でカズに会っただけで嬉しそうな顔しなきゃいけないわけ?」

「焦げてても食えんだろ。とにかく今日のお前冷たすぎ。もうちょっと優しくしないと俺寂しいから」

「そりゃ食べれるけど……。何それ、何だかんだ言ってカズって私に甘えてるよね」


 皆があんぐりと口をあけてみていた会話はここで終了した。

 おかしい、いつもならもっと言ってくるのに、そう思ってカズを見ると、カズはむすっとした顔で頬杖をしていた。また私の胸がちくりと痛んだ。すると、カズはごちそう様でしたと笑って我が家をあとにした。




「何なんだアイツ……」


 夕飯も食べ終わり、自分の部屋にもどった。

 確かに私も冷たすぎたかもしれない、でも元の原因はカズの方でしょ。そう思ってたらまたイライラしてきた。その上、あの女の先輩のことを思い出した。あのカズの嬉しそうな顔……。


「付き合ってるの……?」


 また心の中がもやもやしてきた。


「愛里だってカズの事好きなのに?」


 泣きたいような衝動に襲われそうになった。その時、窓が揺れた音がした。いや、何かが当たった音と言う方が正しいかもしれない。

 カーテンを開けて窓を開くと、真正面の窓にカズが座っていた。


「カズ……」

「お前さ、謝れよ」

「……はい?」

「さっきの態度に対してだよ!」

「な、なんで私が謝らなきゃいけないのさ」


 あぁ、素直じゃない私。

カズは少しむっとしたようだ。私は複雑な思いになった。あの女の先輩と、愛里とのことで。私は思った。何でこんなにもやもやした気持ちなんだろう。この気持ちから、すぐにでも開放されたかった。


「ねぇ、カズ……」

「ん?」

「あの人はカズの何?」

「あの人?あ、もしかして志帆先輩のことか?」

「……今日教室に来てたよね。」

「そうだけど、何で?」

「え、いや、その、美人だったなぁって思ってさ」


 ショックだった。あの人って言っただけで志帆先輩って分かったことに。それにしても、よくとっさにあんなことが言えたなぁと思った。でもそのせいで、カズは志帆先輩について話し始めた。

 部活のマネージャーの先輩、結構仲良い、志帆先輩の性格、カズは色んなことについて喋った。まるで彼氏が彼女のことを自慢するみたいに、口元が緩んで、ほほを染めて……。

 聞きたくなかった。耳を閉じていたかった。


「あれ……?」


 何で聞きたくないんだ?


「どうした?」


 カズが話を中断して、不思議そうに私を見た。話が終ったことに、少しホッとしている自分が憎たらしい。


「ねぇカズ」

「ん?」

「付き合ってるの?」

「え……?」


 カズの表情が一瞬暗くなった。あ、もしかして、と妙に納得した。


「片想いなんだ?」

「か、関係ないだろ」

「関係ないとは何さ、私とカズは家族みたいなもんでしょ?可愛い弟の恋を実らせてあげたいのは姉として当然でしょ」

「誰が弟で、誰が姉だって?」

「冗談に決まってんじゃん。本気にしないでよっ。でも、そっかぁ、片想いかぁ」

「な、何だよ……」

「男なら、とっとと告れ」


 それだけ言い残して私は窓とカーテンを閉めた。カズがまだ外で叫んでるような気がしたけど、気にしない。

 可愛い弟とは言ったものだな。本当は、あの重い空気が耐えられなかっただけだけど。


「片想い……かぁ」


 ため息をしながらつぶやく。


「しかも私、何であんなにもやもやしてたんだろ」


 二回目のため息。


「ため息つくと幸せ逃げるよ」

「そういえば何かの番組で言ってたよね、って、え?」


 後ろを振り向くと、そこには璃子が立っていた。


「なっ、えっ!?いつからそこに!?」

「片想いかぁ、ってトコから」

「気配なかったよ!?ってか勝手に入らないでよ!」

「ま、いいじゃん。で?片想いが何?」


ニッコリ笑う妹を前に、私は三回目のため息をついた。




「なるほど。お姉ちゃんがカズ君に冷たかったわけがわかったよ」

「……」

「お姉ちゃんは、その志帆先輩にヤキモチやいてるんだよ」

「……はい?」

「つまり、お姉ちゃんはカズ君のことが好きなんだよ」


 璃子のその言葉に、頭の中が真っ白になった。

読んでくださった方々、ありがとうございます。

何が書きたいやら……。話の内容が急かもしれませんが、次回作も読んでくださると嬉しいです。

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