サバンナにて
こんな夢
見た事有りますか
或る日曜の午後だった。
金色の麦畑の中に小さな農夫の小屋があった。
その小屋の前の
僅かばかりの花畑には老婆が一人
花の手入れをして居た。
小屋のデッキには老爺が
ロッキングチェアにもたれて
淡い夢路に入って居た。
「お〜い。」
「お〜い。」
誰かが呼んで居る。
大地は静寂につつまれていた。
太陽は照り、
乾いた風が草原を震わす。
遠く鳥達の声が聞こえる他は
自分の呼吸の音のみが
聞こえた。
無性に空腹を感じて
思わず唸り声を上げると、
それは重々しく大地に
響き渡った。
「!」
我が耳を疑うとは
此の事。
思わずジッと
両手を見つめて驚いた。
どうやら此の身は
人間では無いらしい。
この草原の光景は
アフリカのサバンナでは
無いだろうか。
そして此の両腕は
百獣の王のものであった。
ひもじい。
目の前にそれは旨そうな野豚が見える。
緊張が走る
腹は空いて居たが、
野豚を襲い
生肉を喰らう感性は
残念ながら無かった。
勿論狩りの仕方も知らない。
ひもじいままに歩き続けると、
野生の果実が実って居た。
えも言えぬ芳香に
思わずむしゃぶり付いた。
どこかで
たまたまアフリカ取材に来て居たクルーが驚いた。
「驚いた。」
「…。」
「あのライオンは草食系だ。」
或る日曜の午後だった。
金色の麦畑の中に小さな農夫の小屋があった。
その小屋の前の
僅かばかりの花畑には老婆が一人
花の手入れをして居た。
小屋のデッキには老爺が
ロッキングチェアにもたれて
淡い夢路に入って居た。
おやおや
老婆が感心した。
またどんな夢を見て居るのかしら。