23.結局筋トレ
その後俺達は色々な部活を回った。
テットボール部、剣術部、水筒研究会。
しかし、そのすべてから出禁を食らった。
「まさか、水筒研究会にまで出禁を食らうとは思わなかった。」
「ねー。なんか、クラスのせいでどこからも受け入れてもらえないのって、きついね。」
「結構精神的にも応えるよな。」
ナルキはかなりやつれていた。
出禁をもれなく食らった原因はFクラスであることにある。
どんな先輩も、俺達がFクラスであることを伝えると、嫌な顔をして口を聞かなくなった。
結局、どこに行っても話を聞いてもらえなさそうなので、寮に帰ることにした。
なんでたかが部活勧誘会でもやっとした気持ちにならればならないのか?
納得いかない……
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寮への帰り道、部活動勧誘会を抜けた頃。
「Fクラスってさ、なんていうか……」
ナルキが何かを喋りだすが、言葉を詰まらせていた。
俺が代わりに続ける。
「多分、差別されてるよな。学園の中で。」
「だよね〜。」
テットボール部を訪問した時、俺たちと同じタイミングで、Eクラスが来ていた。
驚いたのは、俺たちとの扱いの差が天と地のように違ったことだ。
俺達は行っただけで強い嫌悪感を抱かれ、冷たい視線にさらされた。しかし一方で、Eクラスは嬉しそうに歓迎される。
ナルキが不満そうに、口を尖らせる。
「そりゃあさ、上のクラスの生徒が来た方が嬉しいって言うのはわかるよ。でもさ、あの先輩達の対応はいくらなんでも酷いよ。」
「まるで、Fクラスだけを除外するような動きだったからな。」
ナルキが納得いかないのもわかる。
今日の先輩達の動きで、なんとなく自分達の置かれた状況というものが見えてきた。
おそらくFクラスだけが特別なのだろう。
Fクラスだけは、この学園で生徒という扱いをされていない。
オルエイ高等学園という学校の中でFクラスと言うのは迫害される対象となっているのではないか。
たった一日でそれを感じてしまう程には、周囲の圧を感じてしまった。
弱い奴が悪い、強い奴が偉い。
弱肉強食の魔界らしい。
「さて、どうするべきか……」
俺がそう呟くと、シアが飄々とした表情で言った。
「クラス順位を上げればいいだけじゃないの?」
その言葉を聞いて、確かに、と納得する。
だが……
「クラス順位を上げるのって、そんなに簡単な事なのか?」
「う〜ん。でも1-Fって、学年順位は低いけど実は凄い人もいるから。」
「まあ、そう言われたらそうかもとは思うが。」
主に俺とグレルの事を言っているんだと思う。
俺達二人は、間違いなくもっと上のクラスへ行けるポテンシャルはあるはずだ。
戦闘訓練で他の生徒達の実力を見ているが、グレルは頭一つ抜けている。
ちなみにシアも、Fクラスで留まっていていい人材ではないと思う。
シアの言う、学年順位は低いけど実は凄い人の中に彼女本人も入っていると思う。
「だが凄い奴がいてもな。先生曰く、クラス順位の変更は、定期テスト時に行われるんだろ? 条件によっては他の人がそいつの足を引っ張ることになるぞ?」
「う〜ん。別にそんなに深く考えなくても大丈夫だと思うけどな〜」
「すげえ楽観的だな……」
「それだけが取り柄ですから。」
シアはピースを浮かべてはにかむ。
まあ、グレルの時もそんなに深く考えている節も無かったし、まあ、そう言う事だろう。
シアに言われて、別にそこまで深く考える必要もない気がしてきた。
クラスで差別されているのは、むかつくし不快だけどある意味仕方ない事だから、クラス替えができる定期テストまではあんまり考えないようにしよう。
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寮に着くと、想定外の人物が出迎えに待っていた。
「……パンツ先輩。」
「誰がパンツ先輩だこら。」
なんと、ルーカス先輩が寮の玄関にいたのだ。
「まさか、俺達をずっと待っていたんですか?」
「ある意味あってはいるが、間違ってもいる。一年生全員を慰めるためにここにいるんだ。」
それを聞いて察した。
「なるほど。」
俺が納得したように返すと、彼は質問を投げかけた。
「部活勧誘会はどうだった? どこかいい部活には入れたか?」
俺達三人は首を横に振る。
「わかってるくせに。」
「ああ、俺も2年前に全く同じような経験をしたからな。オルエイは81%の生徒が部活動に参加している。逆に言えば、19%の人は参加していない。なぜ、この人たちは部活に入らなかったのか。」
ここまで言われたら嫌でも彼の言わんとしていることがわかる。
「入れないのだ。勿論自主的に入らない魔族もいるが、少なくともこの19%のうちの半分は、入れなかった各学年のFクラス生徒たちなんだ。」
「……嫌な学校ですね。」
「ああ。だからこれは毎年最下位であるFクラスの三年生から一年生へ送るアドバイスだ。周りの目は気にするな。どうせ何をやっても笑われるし馬鹿にされる。だから周りに抑圧されても、自分のやりたいようにやれ。以上! 筋トレ部も、俺がやりたいようにやった結果だしな。」
「それはやりたいようにやりすぎな気もするけど……」
「要は周りに流されず、空気に抗えって事だ。お前は心配ないと思うが。色々と噂を聞くしな。」
「そうで……噂?」
「ああ。」
「ちょっと待ってください。噂ってなんですか? 何を聞きました?」
「ああ、色々聞いたぞ。1-Fのエスタっていう生徒が、同じクラスの女子達のパンツを力ずくで奪い取り、部屋にコレクションとして飾っているとか。あとは生徒会に喧嘩を売ったとか。ああ、あれも聞いたな。男の先生をくどいてやらしい関係を持ったとか。」
シアが横から俺に聞いてくる。
「そんなことしてるの? エスタ。」
「事実無根だ! 俺の噂盛られすぎだろ!」
「私のパンツくらいならいくらでもあげるよ?」
「いらんわ、お前はもう少し抵抗を持て。」
次はナルキが横槍を入れる。
「エスタ、パンツをコレクションしてるのはちょっと引くかも。今すぐやめよう!」
「してねえよ。てかお前住んでるの同じ部屋だろ。」
最後に先輩が揶揄ってくる。
「まあ、そのなんだ。周りの目を気にしないのはいいが、節度を持つのは大事だと思うぞ? 後輩。」
「あんたらわかって言ってるだろッ!」
俺がそう言うと、皆くすくすと笑った。
酷い先輩と仲間達だ。
先輩は揶揄って満足したのか、俺の胸に拳をあて、はげます。
「まあ、そのなんだ。頑張れ。」
「……はい!」
先輩とやりとりを終えた俺達は彼を背に自分の部屋へと戻りだす。
きっとこれからも、Fクラスである限り、あーいったことはあるだろう。
世の中は無常で、理不尽なことも多い。
だが、屈しないで、もっと頑張ろうと思う。
きっとその先に、希望があるから。
「あー、そうそう。」
ルーカス先輩は、去っていく俺を引き止める。
そして一言。
「エスタ、お前今日から筋トレぶな。」
「は?」
「勝手に入部届提出したから。」
「は?」
「じゃあ、そう言うわけで、部屋に戻っていいぞ。ゆっくりくつろげ。」
「はああああああああああっ!?」
実は優しいと思った先輩は実際そんなことなかった。
この野郎、勝手なことしやがって……!
俺は抗議するが、その努力は虚しく筋トレ部にはいることになってしまった。
部屋にて。
「なあ、ナルキ。」
「何? エスタ。」
「お前も筋トレ部に入れ。」
「え〜。なんかやだ。」
「入れ。」
「え〜。」
「頼む。」
「……」
「俺をあのむさ苦しい先輩と二人きりにするって言うのか?」
「……仕方ないな。今度夜ご飯おごってね。」
「……ああ。」
ナルキもついでに筋トレ部に入ることになった。




