22.あつまれ部活動
1週間経って、学校生活にも慣れてきた。
俺は普段、ナルキ、シア、ローズマリーの3人と共によく行動している。
この1週間にあった出来事と言えば、食料や生活必需品が有料になった事だ。
入学してから最初の1週間は、そういったものは無料で配られた。だがすでに過ぎたので、狩りでお金を稼がなければならない。
Fクラスの多くの生徒が、苦戦していて貧困生活を送っている。
ただ、食料などの死活問題に関わるものは最低限の物は無料でもらえるのでなんとかなっている状態だ。
しかし、最低限とは言ってもパン一枚だけとか、そんな感じなので、みんな肉を食べたいと言って、放課後、必死に狩りに行っている。
逆に、大きな出来事といえばそれくらいだ。
それ以外は平穏な生活を送っている。
今日もいつもとやる事は変わらない。
朝から授業を受け、昼休みにご飯を食べ、放課後は戦闘訓練。
そして終わったら少し休憩して寮へ戻る。
「ふう、今日の訓練はきつかったね〜。」
訓練所に併設されている休憩所にて、ナルキが汗を流しながらそう言った。
横で、ローズマリーも大きく息をつきながら、文句をこぼす。
「先生ももう少し優しく教えて欲しいですわ。これでは拷問じゃないですか。」
「だよね〜。それにしても、」
ナルキはこっちをじっと見る。
「君たち二人は、なんでいつもそんなに余裕そうなのさ。」
二人というのは俺とシアのことを言っているのだろう。
確かに言われてみれば、俺もシアも息を切らすどころか汗一つ掻いていない。
「なんで、て言われても……」
「なんでかな……?」
そう平然とボケる俺たちを見て、ナルキはため息をついた。
「君達のその体力が羨ましいよ。」
彼はそういうと、水筒をごくごくと飲んで立ち上がる。
「さ、帰ろっか。」
俺たちは頷いて、手持ちの剣や水筒を持って、休憩所を後にする。
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寮へ戻る際、面白いものに遭遇した。
寮へつながる道路上に多くの人が集まっていて、混雑していたのだ。
「祭りか?」
俺がつぶやくと、ナルキがツッコミを入れてきた。
「そんなわけないでしょ。学園祭じゃないんだから。」
まあ、そりゃそうだな。
でもなんだってこんなに人が集まるんだ?
あちらこちらに屋台のようなものが置いてあり、人々が屋台の人と話したり、ならんだりしている。
中心では、5、6人の集団が、奇妙な服を着て、大道芸を披露していた。
一体何事だ? どう見ても祭りにしか見えん。
そんなことを考えていると、不意にシアが俺の服の袖を引っ張る。
「これ、部活勧誘会じゃない?」
「あ、確かに。」
そう言われて見ると、屋台には色々な部活の名前が書かれていた。
中心で大道芸を踊っている人たちの前にも大道芸部とある。
新入生歓迎会というやつだ。
「部活か、なんにも考えていなかったな。」
学校へ行く生徒の大半は部活動へ所属している。
それはここオルエイでも変わらず、部活動所属率はなんと、81パーセントらしい。
忙しいことで有名なオルエイ高等学園。皆、息抜きの場を求めて部活を楽しむようだ。
「みんなは何入るかとか決めているのか?」
俺がそう聞くと、ナルキ、シアは首を横に振った。ローズマリーだけはどうやら決めているようだった。
彼女は口をひらく。
「貴族生まれの子女は、茶会部に入部しなければならないという暗黙のルールがありますの。」
「茶会部? なんだそりゃ。」
「部活とはなばかりで、情報交換の場といったところですわ。週に一度、上流階級の貴族達が集まってお茶を供にしなければなりませんの。」
「貴族様って大変だね〜。」
シアがそう言うと、ローズマリーは苦笑いをする。
「本当は行きたくはありませんのですわ。これまでのFクラスの生徒が、あの場でどういう扱いを受けているか知っていますもの。」
「じゃあ行かなければ良いんじゃ無いの?」
ナルキの質問に彼女は首を振る。
「そういう訳には行きませんの。これも付き合いですから。」
「貴族の世界ってよくわかんないや……」
「知らない方が幸せな事もありますわ。では、茶会部の先輩方に挨拶してきますので、他を回っておいてください。」
そう言うと、ローズマリーは茶会部の方へと向かってしまった。
残された俺達はこれからどうするかを決める。
「部活歓迎会、見て回るか?」
俺がそう質問すると、ナルキが頷いた。
「うん、良いと思う。」
「何かよさげな部活があると良いんだけどな。」
俺がそうつぶやくと、突如背後から図太い声が聞こえてくる。
「お困りのお三方、うちの部活に来るのはどうだ?」
そう言われて振り向くとそこには知っている顔が立っていた。
「あなたは、パンツ先輩!」
「おい、誰がパンツ先輩だ。」
入学初日にパンツ一丁で話しかけにきた、確か名前はルーカスだったと思う。
ナルキが背後から小声で話しかけてくる。
「エスタ、知り合い?」
「ああ、前話したろ。入学初日に剣の素振りをした時、パンツ一丁でうろつく先輩がいたって。その人だよ。」
「あ、この人がそうなんだ。」
会話が聞こえていたのか、ルーカス先輩は不機嫌そうな顔で言う。
「おい後輩、そのまるで俺がヤバい人であるかのような紹介の仕方はやめろ。」
「実際ヤバい人じゃないですか。」
「……やめろ、それを言われたら何も言い返せなくなるじゃないか。」
先輩は口をつぐんでしまった。
案外ノリのいい先輩なのかも?
「ところで、うちの部活って言ってましたけど、ルーカス先輩何部に入ってるんですか?」
「筋トレ部だッ!」
「聞いた俺がバカだったかもしれん。」
そうつぶやくと、ルーカス先輩が急に服をちぎり破って、筋肉を見せてくる。
「エスタ、君も、筋トレ部に入らないか?」
「ええ……」
「朝6時から腕立て100回、腹筋100回、スクワット100回! 夜寝る前はその三倍ッ! みんなで鍛え上げて行こうじゃないか!」
「やかましいわ。……てか部員の人、よく入部しましたね。」
「いや、部員は俺一人だ。」
「舐めてんのかッ!」
俺達は数分間話した後、ルーカス先輩を後にした。
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とりあえず、いろんな部活を見て回ることにする。
多くの部活が並んでいる様を見て、ナルキが大はしゃぎだった。
「凄い、いろんな部活があるね。魔界歴史研究部、テットボール部、水筒研究会。」
「水筒研究会?」
「看板に『あなたも水筒を研究しませんか』って書いてあるよ?」
「誰得なんだ? その部活。」
一体誰が入るんだそんな部活。
そう思っていると、シアが看板の下に書いてある小さな文字を見て言う。
「部員21人だって。」
21人もの人が水筒を研究することに興味があるのか。
狂った学校だな。
「ねえあれなんか面白そうじゃない? 」
ナルキが身を乗り出して指をさす。
その先には『お遊戯同好会』と書かれた看板があった。
同好会って、もはや部活じゃないじゃんと一瞬感じたが、あまり考えないようにする。
ナルキがとても行きたそうにしているので、
「行くか?」
と提案すると、
「うん、行こ!」
と大きく頷いた。
俺達はお遊戯同好会に向かって足を進める。
屋台に向かって話しかけると、中にいた先輩が優しく接してくれた。
「お遊戯同好会へようこそ! 新入生の子達だよね?」
屋台で出迎えてくれたのは長身紫髪の先輩だった。
「あたしはルナ。2-Bクラスよ。よろしくね。君達は何クラス?」
親切そうな先輩だった。
俺達は自身のクラスを言う。
「Fクラスです。」
その時だった、急に空気が冷たくなるのを肌で感じる。
彼女の視線だ。
俺たちのクラスを知ると、ルナ先輩は露骨に態度を変え始めたのだ。
「チッ、Fクラスかよ。最悪、話さなきゃよかった。」
そう言うと、先輩は目を合わさず、屋台の奥へと戻ってしまう。
「あの……」
「悪いけどFクラスは入部できないから、帰って。」
ナルキが何かを言おうとするが、彼女は聞く耳持たず。
俺達はつき返されてしまった。




