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俺は、魔力0の最弱魔族!〜学園ランキング最下位の俺だが、理不尽跳ね除けトップへと成り上がる!〜  作者: ダンディー


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20/23

20.決着

 今日、突如として始まったエスタとグレルの決闘。


 2人の戦いを見に多くのFクラス生徒達がこの第12訓練所へと足を運んでいる。


 観戦の動機は様々で、クラス内順位1位であるグレルの戦闘を見に来たり、友人を応援しに来たり。


 ローズマリーとナルキ、そしてシアも、エスタを応援しにこの訓練所へとやってきていた。


「まずいですわね……」


 ローズマリーは深刻な表情を浮かべていた。


 2人の戦闘を見て、唇を噛み締めている。


「何が?」


 一方のナルキは非常に楽観的だった。


 どっちが有利でどっちが不利だとかあまり理解しておらず、状況が掴めていなかった。


 ナルキの問いにローズマリーは答える。


「グレルさんは入試順位こそ低いですが、魔法の技術は本物です。彼よりも炎の扱いに秀でた魔族はこの学園にはいないでしょう。Fクラスとはいえど実力は確実にBクラス以上、場合によってはAクラスの生徒にも劣りません。」


「でもエスタも魔力無しで入学してるし、実力は高いんじゃない?」


 ナルキの言葉に、ローズマリーは苦虫を噛み潰したようなような顔をする。


「相性の問題ですわ。エスタさんは魔力がない以上、遠距離からの攻撃ができない。一方のグレルさんは自身の周りを炎の壁で囲い、相手が近づけないようにしています。このままではエスタさんの体力が徐々に削がれ、最終的にグレルさんが勝つでしょう。」


 彼女の説明に、ナルキは感心したように息を吐く。


「なるほど。……でも、エスタ凄い余裕そうだけど。」


「彼の自意識過剰も困ったものですわ。」


 

 ☆★☆★☆★☆★☆★


 

 グレルが手に炎を集中させ、獄炎鳥を作り出す。


 火は、会場の端から端まで伸び、俺には避ける場所がない。


 その灼熱の炎は皮膚が溶けそうなほどの熱を発していた。


 流石にくらったらただじゃ済まないな。


 グレルは獄炎鳥を射出する。


 炎によって形どられた鳥が物凄い勢いでこちらへと突進してくる。


「勘違いしてるな、グレル。」


「……んだと。」


「俺には魔力が無い。だから遠距離で魔法ぶっ放せば防御する方法がない。そう考えてんな。」


「だからなんだ。」


「俺を舐めんなよ。魔力が無くても、魔法は使える!」


 グレルは、何をいってるんだと言わんばかりに馬鹿にしたような目線を俺に向ける。


 見とけよ、と内心思いながら、俺は咄嗟に服を脱いだ。


 瞬間、観客の主に女の子達からきゃーっと悲鳴が聞こえてきた。


 俺の裸を見ての悲鳴だろうが、この見事な筋肉を見てその反応はないだろう……


 ちょっと凹む。


 しかし、そんなこと今はどうでもいい。


「行くぞ! 風と火の混合魔法! ファイアートルネード!」


 俺は、全力で服を円周状にぶん回す。


 グレルの目は、より俺を軽蔑し始めた。


 一体俺が何をしようとしているのか理解していないのだろう。


 しかし、その軽蔑の目は、次第に驚愕へと変わっていくことになる。


 俺が回している服。それが段々と風を作っていく。


 周囲の砂埃を巻き上げ、ぐるぐると俺の周囲を回りだす。


 そう竜巻だ。


 最初は微弱だが、回す速度を上げれば上げるほど、どんどん強力なものに変化していく。


 グレルの放つ獄炎鳥の炎が、俺の作った竜巻に吸い込まれた。


 砂埃と炎が交わり、1本の火柱が会場の中央に立つ。


 つまり、ファイアートルネードだ!


 視界の端でナルキとローズマリーが小声で話しているのが聞こえた。


「ねえ、ローズマリー。あんな魔法あったっけ?」


「あるにはあるけどありませんわよ!?」


「どっち!?」


「竜巻を出すのは風魔法の分野ですわ。まさかそれを、身体能力だけで再現するなんて……めちゃくちゃですわ!!!」


 ローズマリーは、落ち着きがない。


 それもそうだろ。


 こんな凄い魔法を見せつけられて冷静でいられるわけがない。


 対するグレルもまた、驚きと焦りが顔に出ていた。


「喰らえ! グレル!」


 俺は回転する服をグレルの方へと投げる。


 すると、ファイアートルネードがヤツの方へ向かって動き出した。


「なッ! クソッ!」


 グレルは咄嗟に再び炎を形成する。


 そして。


「『獄炎鳥!』」


 炎の竜巻に向かって打ち出した。


 元々やつの炎を巻き込んだ竜巻と、獄炎鳥は同等の火力。


 2つがぶつかりあった時、爆発が起こる。


 衝撃で竜巻は消し飛び、物凄い風圧が周囲を覆う。


 周りには倒れ込む生徒がちらほら出てくるほどだ。


「んだこれは! 何しやがった!」


「だから魔法だって。」


「こんな魔法があってたまるか! ……ックソが。」


 グレルは再び手のひらから炎を作り出し、周囲へとばら撒く。


 炎の結界が再びグレルの周りを囲った。


「はん! だが、俺様に近づけない事実は変わんねえ!」


「……まだわかってねえのか、グレル。」


「ああ?」


 俺は足を前に出す。


「クソッ! 近づいてくんじゃねえ!」


 グレルは、俺に対して炎を噴射した。


 しかし、顔を横へずらす事で避ける。


「お前の炎如きじゃあ、俺は止められねぇ!」


 俺の足が、グレルを囲う炎の壁へと踏み込む。


 非常に熱い。


 熱気で体が溶けてしまいそうだ。


 しかし関係ない。


 俺は手をグーにして、宙に向かって思いっきり拳を叩き込んだ。


 瞬間、空気が揺れ動く程の風圧が、炎をかき分けた。


「……なんだと!? 俺様の炎がッ……!」


「炎なんて、殴れば消えるんだよ!」


 そのままグレル間合いへと踏み込む。


 奴は咄嗟に後ろへと避けようとするも、間に合わない事を察し、すぐに攻撃へと転じる。


 戦闘センスの高さを見せつけられた。


 しかし。


「……俺にはまだ魔装がッ。」


「そんなもん聞かねえ!」


 やつが拳を振りかざすよりも先に、俺の右拳が奴の顎を砕く。


 グキッという音共に、拳はグレルの体を宙に打ち上げた。


「グフッ……」


「……今のは、強制的に金を巻き上げられたクラスメイトの分だ。そして、」


 俺は左拳を握りしめる。


 大きく振りかぶって、グレルが落ちてくるタイミングに合わせてパンチが炸裂する。


 次は、腹だった。奇跡的にタイミングが重なり、溝の中央を突き抜ける。


「ガハッ。」


 グレルの口から白色の液体が溢れでる。


「こいつは、お前に殴られてぼこぼこにされた、生徒の分だ!」


 続けて、俺の右拳がグレルの頬を抉る。


 魔装を込めた訳じゃない。


 しかし、右手は確かに衝撃の感触があり、頬にめり込まれた拳はそのまま奥へと突き抜けた。


 グレルは顔から思いっきり後ろへと吹き飛ばされる。


「……っクソが。」


 悪態をつくグレル。


 そんな彼に対し、俺は近づいていく。


「さあ、これまで好き勝手やってくれた分、ぼこぼこにしてやるぜ!」


 しかし、グレルは不敵の笑みを浮かべる。


「テメェ如きにこいつを使わされるとはな……」


「……何?」


 瞬間、背筋に悪寒が走る。


 目の前のグレルの雰囲気がガラッと変わり、俺は警戒のため、咄嗟にやつと距離をとった。


 そんな俺を見て、奴は呟く。


「属性魔装、『燃炎』。」


 直後、奴の魔装が、真っ赤な炎に包まれた。


 ただやつの体を覆っていた魔力のオーラが、強く吹き出しながら火を立てる。


 まさかこれは、魔装の属性付与!?


 オルエイの学生ですら、卒業時に半数しか習得できないとされる超高難易度技だ。


 グレルがそれを使えるなんて……!


 やつから放たれる熱気が頬を撫でた。


 獄炎鳥よりも激しい灼熱の炎。その中心にやつがいる。


 弱いと言われていた身体は魔装により、一回り大きく感じられ、一目見ると筋骨隆々な男がこちらを睨んでいる。


「褒めてやるぜ! こいつを使ったのはテメエが初めてだ!」


 やつが手をグーに握ると、全身の魔装が右手一点に集中する。


 強力な光がやつの右手から発せられる。


 ナルキは呟いた。


「なにあれ?」


 そんな彼にローズマリーが解説する。


「魔装の属性付与ですわ。身体能力や体力といった力を増大させる魔装に属性を付与させることで、追加の能力を開花させる技術ですわ。」


「凄いの?」


「凄いどころじゃありませんわよ。使いこなせる魔族はごく一握りの天才のみ。オルエイに通う生徒でもそうそういませんわ。」


「へえ。エスタ、大丈夫かなあ?」


「属性魔装は、同じ属性を付与しても得られる効果は人によっては異なります。ものによっては……」


 ローズマリーは深刻そうな表情を浮かべる。


 グレルがうきうきとした表情で俺に語りかける。


「俺様の『炎燃』は、体に熱を閉じ込め、身体能力を爆発的に増加させる。短時間だが効果は絶大だ。テメエのアドバンテージはなくなっちまったなあ、エスタァ!」


 笑いながらこっちを煽る。


 自分の切り札を見せたことで興奮しているのだろう。


 まあ、属性付与なんてできるやつは俺も2人しか知らないし。ちなみにそのうちの片方はエイリア先生なので、凄いのは事実だ。


 だが俺は内心がっかりしていた。


 思うのは一言だけ。


(なぜ言う?)


 属性付与は使ってくる相手の能力がわからないのが1番の脅威だ。


 戦うこっちも警戒しながら戦わなくちゃいけなくなり、普段より断然厄介になるのに、それを全て喋るとは。


 恐らくこいつは生粋の馬鹿だ。


「いいぜ、なら力比べといこうか。」


 馬鹿相手にはこれくらいがちょうどいい。


 1番やりやすい勝ち方は持久戦だろう。やつは体に熱を閉じ込めると言っているので、おそらくタイムリミットがある。いくら魔装を使っていて体がタフになっていようが、限界はある。


 今、グレルの魔装は、多少離れている俺でも感じるほどの高い熱を発しているため、すぐに体が持たなくなるだろう。


 それまで逃げ続けるなりしてやつの限界を引き出すのが最善の策だ。


 だが、そいつは面白くない。


 体が弱いことを自負するグレルが力勝負をしようとしているのだ。こんな面白いことがあるか?


 俺は正面から叩き潰す。


「クク、後悔するぜえ?」


 やつは地面を蹴った。


 更に体の熱を強め、こちらに向かって飛ぶ。


 蹴り上げた土が舞い上がり、まるで爆発でも起こったかのような風圧が周囲に撒き散らされる。


 強力な炎。


 魔装によってドーピングされた強靭な肉体。


 ――一瞬。


 その脅威が、俺に襲いかかる。


 速い。


 しかし、俺ほどではない。


 単純に一直線に向かってくるやつに対して、俺は横に避けた。


 瞬間、やつは体制を崩しザザザーと転げながら滑っていく。


 体に纏っている炎の熱と土がこすれ合い、激しい煙がやつの軌道の後に立つ。


「……は?」


 グレルはほうけた声を出した。


 しかし、俺は倒れた奴に追い打ちをかける。


「いただき!」


 俺は転けたやつの腹を蹴り上げた。


「グフッ!」


 グレルはそんな情けない声を出しながら宙に浮く。


 そして、その間抜けな顔面に思いっきり拳を叩き込んだ。


「ガハアッ!」


 そのまま更に奥へと吹き飛び、勢いよく壁と衝突した。


 炎でまとった魔装が切れ、頭から血が流れ落ちている。


「馬鹿な。属性魔装だぞッ! テメェよりも速かったはずだ! なんで効かねえ!」


「……急ピッチで身体強化しても、制御しきれなかったら意味がないだろ。そんなだから足引っ掛けただけで派手に転ぶんだよ。」


「クソがあッ。クソガアアア!」


「さっきの続きといこうぜ、グレル。」


 俺はやつの元へと歩き出す。


 グレルは諦める事はない。


 即座に属性魔装を発動し直し、俺に襲いかかる。


「エスタアアア!」


 このしつこさは目を見張るものがある。


 伊達にオルエイに入学しているだけはある。


 だが、無駄だ。


 次は避けるでもなく、真正面からやつの顔を殴った。


「グフッ。」


 急拵えで魔装が弱い。


 力を込めていない攻撃でも、グレルの猛攻は最も簡単に崩れ去り、鼻血を出しながら身体はのけぞった。


「こっからは俺の分だ。よくもパンツ恐喝の冤罪をかけてくれたな。」


 そのまま俺はやつの腰へと蹴りを入れた。


 ゴンッという鈍い音と共に、グレルは横へと吹き飛ばされた。


「……このッ。」


 ボコボコになり足がおぼつかない中、やつは必死に立ち上がる。


 しかし、反撃の隙は与えない。


 俺はすぐに近づき、グレルの顎を砕くように下から殴った。


「生徒会に勝手に喧嘩売ったことにしやがって。先生に変ないたずらしやがって……」


 続けて、左頬に一撃を入れる。


「めちゃくちゃ怒られたじゃねえか!」


 思いっきり下から蹴り上げる。


 瞬間、足の調整をミスった。


 本当なら腹を殴りたかった所、失敗して俺の蹴りは、やつの股間へと直撃した。


「ヒュッ……」


 グレルは声にならない雄叫びを上げた。


 すぐに股間を押さえて地面へと倒れ込む。


 周囲の男子生徒たちも真っ青の顔色を浮かべ、自身の股間を押さえ込み始める。


 そんな彼らを見て女子生徒達は冷めた目線を向けた。


「あ、ごめん。間違えた。」


 俺が素直に謝ると、グレルは今にも消えてしまいそうな声で言う。


「テメエ……やりあがったな……。」


「いや、ごめんって。まじでわざとじゃない。」


「殺す!」


 やつは俺に手をかざし、特大の炎を放った。


 この近距離だ。


 変に操作することもなく、ただただ莫大な量の炎を放出するのみ。


 しかし、その動きももう予測済みだ。


 俺はグレルの手首を掴み、横へずらすことで攻撃を回避した。


 この距離でも当てられなかった事に驚いたのか、グレルは大きく目を見開いた。


 呆気に取られている中、既に俺は動き出していた。


「これは、俺の分だ、グレル。」


「あ?」


「俺を差し置いて最強名乗りやがって! 正々堂々来ず、ガキみてえな嫌がらせしやがって!」


 拳をぎゅっと握り振り上げる。


「個人的にムカつく俺の怒りを受け取れ!」


 俺が拳を振り下ろした時、やつの顔面へとめり込んだ。


 ゴキゴキ、という音が鳴りながら、強い衝撃が左腕全体に響き渡る。


 それはこの戦いの中で1番、綺麗に入った事を物語っていた。


 グレルは、顔面を地面に叩きつけられる。


 鼻血は更に強く吹き出し、地面との摩擦で土煙が周囲に立つ。


「……ッガ!」


 力の入っていない頭の揺れ方。


 殴った時の衝撃で気を失ったようだ。


 グレルは地面へと倒れ込む。


 そしてピクリとも動かなくなった。


「……俺の勝ちだ。」


 俺がそう言いながら右手を上げると、周囲から歓声が上がった。


 まさか俺が勝つとは思わなかったのだろう。


 それにグレルには良くない印象を持っている人は多いはずだ。


 俺の勝利は、すんなりと皆から歓迎された。



 ☆★☆★☆★☆★☆★



 なお、グレルは目が覚めると、俺に対して行った嫌がらせの数々を白状した。


 流石に貴族のプライドがあるのか、決闘で決めた事柄はしっかり守るようだ。


 俺の冤罪は見事に晴れることとなった。


 ちなみに燃えた服の分は自分で買い直しだ。


 オルエイの通貨ではなく、国の通貨を使う羽目になったので俺の貯蓄が泣く泣く減る羽目になってしまった。


 グレル……許さん。


 

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